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2009/7/ 2
ap bank fes'09のオフィシャルパンフレットを作った人(1)

寄藤さんのオフィス「文平銀座」。寄藤さん(右)は今日も打ち合わせ中。寄藤さんのオフィス「文平銀座」。寄藤さん(右)は今日も打ち合わせ中。

ap bank fes'09のオフィシャルパンフレットを作った人
第1回「アートディレクター・寄藤文平さん」


毎年、楽しみにしてくださっている方が多い、ap bank fesのオフィシャルパンフレット。今年は、fesのキーワードでもある「原点回帰」を考えつつ、fesの会場に来てくれる人にも、来られない人にも、楽しめる内容になるように作ってみました。小林武史、櫻井和寿のfesに対するインタビューはもちろん、出演アーティストたちからのメッセージも掲載。fesの環境に配慮した取り組みやap bankの活動なども、わかりやすくまとめました。


そこで、ap bank fes'09 オフィシャルパンフレットをもっと楽しめるように、アートディレクターの寄藤文平さんとカメラマンの浅田政志さんにインタビュー。今日は、東京メトロの宮崎あおいさん主演「TOKYO HEART」のポスターや、フリーペーパー「R25」の表紙のイラストなどを担当した、寄藤さんが登場です。


◆文平銀座が第2編集部に!?


編集部 ズバリ、パンフレットのデザインコンセプト
を教えてください。


寄藤 いきなりきましたね(笑)
デザイナーは、陰の存在だと思っているので、
あんまりコンセプトとは、と語るのは......。


編集部 寄藤さんのオフィスの「文平銀座」が
第2の編集部なのではと思うくらい、各担当が
それぞれ企画をどのようなデザインにしたらいいのかを相談しました。


寄藤 編集者やアーティストの、表現したいことがあって、
初めてデザインの方法が決まると思います。
僕は、みんなで話し合って、最も伝わるデザインは
どの方法なのだろうと、考えるときが一番楽しいんです。


編集部 私は、融資先のページを担当したのですが、
私のデザインのプランが「つまらない」と言われ、
ひそかに傷ついたりしました(笑)。
でも、おかげで、つい勉強っぽくなりがち読み物のページが、
どうしたら、読者の方々が興味を持って読んでもらえるか、
真剣に考えました。


寄藤 前半は、小林武史さんや櫻井和寿さんのインタビューや
アーティストのメッセージなど、見るだけで
楽しいページでまとめました。これは、それぞれの方々の魅力を、
今年、木村伊兵衛写真賞を受賞した若手のカメラマンの浅田政志くんの、
みずみずしい写真で表現したいと思いました。
後半のap bankの活動や融資先取材、今年のフェスでの取り組みなど、
読み物になるページは、どうしてもお勉強っぽくなりがちなので、
どう見せるかは悩みました。


編集部 融資先の取材のページは、
「融資先の活動を広告してあげましょう」と言われ、
初めは「ええ?」って思いました。
でも、「すごく興味深い活動をされているのだから、
やっていることをきちんと伝えましょう」と言われて、
納得しました。


寄藤 取材予定の人たちの活動内容を読んでいたら、
本当におもしろかったんです。これは見せ方次第で、
読者が興味を持って読めるページになるなと思いました。
僕は、環境の本を作ったり、社会起業家の本を作ったり
していますが、つい、やっている人の思いや考え方が
クローズアップされがちです。
でも、読者は、まずはその人の活動がすごかったり、
おもしろかったりすることに興味を持って、
その次に思いや考え方に共感すると思います。
この順番を間違えると、読者が興味を持ちにくい
ページになると思います。


編集部 詳しくはぜひ、パンフレットを見てもらいたいです! 



◆デザイナーの仕事は翻訳すること


編集部 お仕事は、いつもこのようなやり方なのですか?

資料がいっぱいつまった本棚。本棚の向こう側で、デザイナーさんが作業中。資料がいっぱいつまった本棚。本棚の向こう側で、デザイナーさんが作業中。寄藤 そうですね。デザイナーの仕事は、表現する人と それを見る人の間を翻訳することだと思います。 まずは、表現者のやりたいことを聞きます。 そして、見る側の人たちの心に響くような表現方法を考えますね。

編集部 なるほど。寄藤さんの他の作品を拝見しても、 押しつけがましくないのに、印象に残るなと思っていました。 例えば、東京メトロのポスター、「家でやろう」シリーズも 忘れられません。電車の中で化粧をしている 女性のイラストがあって、「家でやろう」の文字が......。

寄藤 もし、あれが「電車の中ではだめです」と言われたら、 当たり前すぎてバカにされているような気がすると思うんです。 マナーに関しては、もうさんざん言われすぎていて、 みんな、とやかく言われたくないはず。 こんな思いから、このシリーズは生まれました。

編集部 「家でやろう」と言われると、なるほどと思うけれど、 「電車ではだめ!」と言われると、わかっているのに、 うるさいなという気分になりますね。

寄藤 同じ意味のことを言っていても、 人の心に届かないこともあるんです。 地下鉄の駅でポスターを見る人はどんな気持ちなんだろうって、 考えましたね。もちろん、地下鉄の駅で人に 聞いたわけではなく、僕が想像した僕自身の気持ちでもあります。

編集部 なるほど。デザイナーの方って、 「俺の表現はこうだー! みんな俺についてこい!」 という感じかと思っていたので、意外でした。

寄藤 僕の作品ではないので、デザイナーの主張が 強く出すぎてしまうのは、あまりよくないと思うんです。

今回のパンフレットの主役はあくまでも、 出演するアーティストやap bank。 そして、読者。ap bank fesやap bankのことを、 あまりよく知らない読者に、伝えることだと思います。

◆エコロジーは何のため? 誰のため?

編集部 このパンフレットの一番の特徴である、 糸かがりとじについて、教えてください。

寄藤 編集部から、ap bankの環境を配慮した取り組みのことなど を聞いて、パンフレットでなにが表現できるんだろうと 思いました。環境を考えた究極の取り組みは、 パンフレットを作らないことだけど、そういうことではないし。 どのような本の造りにするかは、いろいろ試行錯誤しましたよね。

編集部 フェス会場で売るから、雨風に耐えられる ビニールカバーをつけようとか、 記念に残るように堅い表紙にしようかとか、 結構、話し合いました。でも、今考えると、 どれも肩に力が入り過ぎでした。

文平銀座でパンフレット発見。本当にお世話になりました!文平銀座でパンフレット発見。本当にお世話になりました!寄藤 結局は、本の原点の形、糸かがりとじをメインに考えました。 背表紙はつけずに、いつもは見えない、とじている糸の形が見えるので、本はこんな風にできているんだと再発見できます。 未完成に見えるけれど、本当はこれで十分に本の機能を果たしています。 ものの原点を見ることは、本当に必要な機能とは何だろう? など、 もの根本を考えるきっかけになると思います。 糸のほつれや糊の多少のはがれなどがあるかもしれませんが、 自然のことなので、それもぜひ楽しんでもらいたい。

編集部 最後に、寄藤さんにとってのエコとは?

寄藤 エコという言葉が氾濫してきているからこそ、 誰のためのエコなんだろう? と、考えますね。 例えば、うちの子供のためのエコは、僕が父親であること。 ストレスを抱えて働くよりは、好きなことを好きなように している父親の方が、子供とってはエコなんじゃないかとかね。 そして、建物も人も含めて、家ってなんだろう? と考えることが エコロジーではないかと、最近は思っています。

編集部 今日はどうもありがとうございました。 ぜひ、みなさん、ap bank fes '09オフィシャルパンフレットを見てください。

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