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ap bank fes '09 特集

  • 【eco-reso talk 7】その4 食べ物は、私たちの体を作るものeco-reso talk
2009/8/22
【eco-reso talk 5】その2 日本人の「食の好み」の変化と自給率

ap bankが今年お米作りを体験した石垣島の田んぼで。ap bankが今年お米作りを体験した石垣島の田んぼで。


米は日本人の主食ではあるけれど、食べる量が減っているのも事実です。そんな変化を見据えての自給率をあげるのはどうしたらいいか、そんな話題になりました。


司会:GAKU-MC
ゲスト:末松広行(農林水産省)
枝廣淳子(環境ジャーナリスト)
小林武史



◆もっとお米を食べれば、問題が解決するのか?


枝廣 農業国は、これまで輸出していたところも、自分の国民を守るために輸出をしない流れになってきているということですよね。そうすると、外国からの輸入に頼ってきた日本は、どうなっていくんですか?


末松 私たちもすぐに極端な話をしがちなんですが、日本で食べるものを全部日本の国内で作ろうと思うと、非常に難しいです。まあできないことはないんですが、食生活を変えてですね、昭和40年の頃みたいに......。


小林 和食にすればまだいけるってことですかね。


末松 そうそう。昭和37年の頃は、私たちはお米を1年間に120キロ、2俵食べてたんですね。今は60キロぐらいで、ちょうど半分なんです。日本はお米を作るのが得意なんですけど、お米を食べなくなって、その分ほかのものを食べるようになった。現状はほかのものはあまり生産できなくて、多くのものは輸入しているんです。今の食生活を前提に考えると、輸入がなくなっても大丈夫な体制を作るのはなかなかできないと思います。


ap bankの石垣島の田んぼで稲刈り。ap bankの石垣島の田んぼで稲刈り。小林 質問です! もっとお米を食べればという話は、ずっと言われてるんですよね。でも、米を食べると太るとか、それは嘘だとか、何度も本にも出ているけれど、実際僕の周りでも昔よりもお米を食べない。野菜を多くとるようになったとか、食の傾向が変わってきています。


だから、日本はお米さえ食べればという話ばかり出て来るのは不思議なんですよね。日本の文化や歴史の話で、水田を守るということが出てくるのは分かりますが、実際に水田をやめて、もっと売れる野菜を作るように転身している農家さんもたくさんいるわけじゃないですか。それでは、ダメなんでしょうか?


全体の市場を見て、日本の中でもっと市場を増やしていくのも大事だと思う。ご飯が一番好きな人も多いからお米の需要もなくならないとは思うけれど、米を食べればよしという話で終わるのは、納得がいかないんですよ。


末松 そうですよね。要するにお米の話というのは、作る能力に比べて食べるのがすごく少ないので、もっとみんなが食べるものを作る努力をしてかなくちゃいけないということです。実際、需要に合うというか、野菜などみなさんが食べたいものを作ってがんばってる農家さんが伸びてるのは間違いないと思います。ただ、お米の捨てがたい点というのは、日本を含むアジアの環境にすごく合っていて、水田は2000年間同じものを作っても作り続けられる生産装置なんです。


小林 そうらしいですね。普通の野菜を育てるよりもずいぶん、まあこういう言い方していいのわかりませんが、手間ひまの部分で楽なんだそうです。


GAKU 小林さんが、今年、自分で米作りをして気づいた点ですか?


石垣島の田んぼからとれたお米。石垣島の田んぼからとれたお米。小林 いやいや、田植えをして稲刈りをしただけで、何日も管理していたわけじゃないですから。石垣島でやってきたんですけど、大変だけど楽しかったですよ。収穫のときにはコンバインにも乗せてもらって、田植えのときには田植え機にも乗せてもらいました。
脈々と受け継がれてきた水田に対しての知恵というのも、ほんとにすばらしいものなんだと分かってはいるんです。だけど、ニーズが変わってきているのも間違いない。



◆自給率をあげるためにできる、あれこれ


枝廣 今お話にあったように、お米はほかの主食に比べてすばらしい特徴がたくさんあるんですよ。ほかの作物は順番にやっていかないと育たないのですが、お米は連作と言って、毎年毎年同じ水田で作れる。
手間ひまのお話もありましたけど、小麦だったら1回粉に挽いて、焼いてパンにしないと食べられない。でも、お米は炊いたらすぐに食べられる。だからすごく使いやすいし、いい特徴がたくさんあるんですね。


でも、私たちは今どういうものが食べたいかという好みの話があるんです。私たちがとっている栄養って、炭水化物と、タンパク質と、それから野菜などのビタミンとかミネラルってありますよね。野菜を日本で作るのは大事だけど、炭水化物も一定量はとらないといけなくて、それをどうするんですか? ということです。タンパク質は、動物性だったらお肉などだし、植物性ならお豆腐などですけれど、使われていない水田で大豆を作って、日本のお豆腐を増やして、タンパク質の自給率を高めましょうという動きがある。また、日本は動物のエサをほとんど輸入していますが、お米をエサにして食べさせることでエサの部分の自給率を上げて、タンパク質の自給率を上げようという動きもあります。


また、今、お米よりもパンを食べる人のほうが多い世代もありますが、敗戦後に、アメリカの政策でそうなってきたところがあるんですね。アメリカでは、第二次世界大戦が終わったときに、小麦がたくさん余っていたんですよ。その小麦を日本に売ることにした。だからあのときに学校給食がみんなパンに替わったんですよね。学校給食でパンを食べていると、大きくなってもパンを食べるじゃないですか。なので、私たちが選んで変えてきた食べ物の嗜好なのか、それともそういう歴史の背景があって......。


小林 変えさせられたのか。


枝廣 もちろんパンを好きな人はパンを食べたらいいし、今、米粉のパンといって、お米を原料にしたパンも出てきています。好みは自分が選んでいると思うかもしれないけど、いろいろな要因で無理にパンにいったのであれば、また米に戻ることも可能なのかなとも思います。


GAKU 今日来ているみなさんも含め、われわれは消費者ですよね。消費者はどうしていくべきなのかについて僕は一番聞きたいんですけれども、その点はどうお考えですか?


末松 自給率を考えるとき、役所は国民に安定的に食料を供給するといった堅苦しい方から考えるんですが、自給率を上げようといろいろな運動をしてくださる方々は、それを環境や健康に結びつけたりしてくれていると思います。農業の話を一生懸命していると、結局、環境を大切にしなくてはいけないというところに突き当たると思います。そうすると、いろんな角度からできることがあるわけです。


食べ残しを減らしていけば自給率は上がってきます。また、地産地消ということで、地のもの、周辺の農家が作ってくれたものが消費されれば、農家の人たちは一生懸命に作っていける。それから、旬のものを食べるのが、私はすごく大切だと思っています。そもそも旬のものは健康にいいんですけど、それ以外にもすごく助かることがあるんです。


たとえば、白菜は、鍋の時期に一生懸命作りますが、その時期にみなさんが週一回鍋を食べてくれれば全部消費されます。ただ、実際はそうはいかないので、畑で収穫されないままだったり、出荷できないという話があります。今、これがおいしいというものをみんなが食べるようになると、だいぶムダなく自給率が上がっていくんじゃないかなと思います。日本では、いろいろな作物ができるので、そういう可能性がすごくあるんですけれども、まだうまく情報が行き来してないことがあるんじゃないかなと思いますね。



◆地産地消はエコにもいい


枝廣 食べ物と環境問題が結びついている話は、本当にそうなんですよ。私たちが食べている食べ物の1キロカロリーを作るのに、今、石油をどのぐらい使ってると思います? 1キロカロリーの食べ物を作るのに、石油を10キロカロリー使っているんです。食べ物を作れば作るほど、石油をたくさん使います。
たとえば、トラクターなんかの農機具もだいたい重油で動いているし、大きいのは温室ですよね。温室は重油で暖めているし、できたものを運ぶトラックもみんなガソリンを使う。私たちが食べ物からとっているカロリーよりも、食べ物を作るために使っている石油のほうが多いんですよね。
今、世界の環境問題をやっている人たちの間で、食べ物から温暖化を解決しようという動きが出てきているんです。食べ物は石油、石油は温暖化ってつながっている。なので、できるだけ石油をたくさん使ったものを食べないようにしていこうと......。


小林 どうすると1キロに対して10キロの石油を減らすことができるんですか?


枝廣 ひとつは今、末松さんがおっしゃったように、旬のものを食べる。つまり温室ではないものですよね。露地で作ったものは、温室よりもずっと使用する石油が少ない。もうひとつは、運んでくる距離ですね。フードマイレージって言葉がありますけど、みなさんの食卓のご飯はどんな遠いとこから来たのか、採れた場所から食卓までの距離です。遠くで作ったものであればあるほど、それだけ運んで来るときに......。


GAKU 移動コストがかかるってことですよね。


枝廣 そこでエネルギーを使いますから、旬のもので地産地消、できるだけ近いものがいいんです。遠くで温室とかで作って飛行機とかトラックで運んで来るよりも、ずっと少なくてすみますからね。


ap bank fes'09で国産小麦にこだわったパンを発見!ap bank fes'09で国産小麦にこだわったパンを発見!末松 今の話で、試算があって、たとえば国内の小麦からパンを作って、それを1斤食べるとします。1斤は6枚切りだったら6枚分ですけど、それを外国産の小麦と比べると、CO2の排出量が110グラムぐらい違います。110グラムってイメージが湧かないと思うんですけど、例えば6畳とか8畳の部屋の冷房を4時間我慢するぐらいの効果があるんです。


小林 なるほど。


末松 だから食べ物を変えて、国内のもの、地のものを食べることは、CO2の削減効果にもつながっていくと思うんです。


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