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ap bank fes '09 特集

  • 【eco-reso talk 7】その4 食べ物は、私たちの体を作るものeco-reso talk
2009/8/ 7
【eco-reso talk 1】その2 安いものは本当に環境に悪い?



昨日に引き続き、環境に関するeco-reso talk。ファストファッションは、使い捨てで悪い? 色々な洋服にトライできるからいい? 正解が決められないことについて、熱いトークが続きます。


司会:ケン・マスイ 
ゲスト:テリー伊藤(演出家)、枝廣淳子(環境ジャーナリスト)、森 摂(雑誌『オルタナ』編集長)、小林武史


◆目の前のご飯に必死で、環境なんか考えていられない


テリー 毎日、原宿を通るんですけれど、明治通りにある、H&Mやフォーエヴァー21にもの凄い人数が並んでいるんですよ。特に、フォーエバー21は安いですよ。昨日もちらっと見たんだけれども、今、バーゲンだからめちゃくちゃ安くて、上から下まで、7,000円くらいで結構しゃれた服が手に入るのね。


3、4回着て、もう捨てちゃうかも分からないけれどお客さんがガンガン買って行くわけよ。昔は洋服って大切にしなくちゃいけないものだったじゃない。でも今は使い捨てみたいにしているでしょう。あれはよくねえなと思う反面、いろんな洋服を着て挑戦できるのはいいなあとも思うのね。高いものだと、来年も着なくちゃいけないから、保守的な洋服を選んでいく。でも、安いとチャレンジできるからいいよね。


だから、「この子たちは将来センスよくなるのかな」というのと、「モノを大切にしない人間が出来ちゃうんじゃないかな」というのと、両方の可能性が出てくる。となると、「あなたそれはダメだよ」と、言う勇気は僕にはないんですよ。たとえば、オーガニックのTシャツを着たら、たぶん生成りみたいな色ですよね。それもいいんだけど「お前はショッキングピンクを、そういうふうに着こなすのか、大したものだ」と言いたい気持ちもある。そこのせめぎ合いがあって、どうしたらいいんだろうって。


ケン 洋服のファストフード化ってことですね。


テリー うん、「それがそんなに悪いことなのかな」という気持ちもあるわけね。たとえば学校に行って、クラスの7割くらいが「昨日H&Mでこんなのが入ってた」って話してるときに、「いや私はオーガニックを着てます」と答えるのは「お前、変わってねえか?」と言われちゃうんじゃないかって。


ケン なるほどね。


テリー 親ならば、子どもに「あんたムダ遣いしちゃダメ」と言えるんですよ。「そんなことやってて将来どうするんだよ、稼ぎないし、これから就職もなかなか出来ないし、正社員なんかなれないよ、ムダ遣いしちゃダメだ」って言えるけど、社会はTV見ればジャンジャンジャンジャン、やれ買え、何買えってすごいじゃないですか。


大人というか社会は「買え買え買え買え」と言っているのに、自分の心の中では「じっとしていなくちゃいけない、シンプルに生きなくちゃいけない」となると若い子たちの狭間ってものすごく葛藤だと思うんですよ。片方でセクシーなグラビア見ていて、一方では修行僧みたいに生きろと言うんだから。こうした問題、どうしたらいいんですか、小林さん?


小林 食べ物でも激安ってありますが、激安のことを責められないとは思うんです。自分の旦那さんがリストラされそうだとか、リストラされたとかいう時に、奥さんが激安ショップで、本当に一円でも安く食材が揃うのはありがたいことだと思うし、そのことを否定は出来ないと思うのね。


だからその時に、「いや、僕ら有機の農業を応援しているんで」とか、「ちょっと値段高いんですけれど」みたいなことは、本当に価値がない言葉に聞こえると思うし。今、いろんな意見がせめぎあっているんだよね。テリーさんも言っていた、フォーエヴァー21がすごいですけれども。


テリー 社会現象になってますよね。


小林 そうそう。フォーエヴァー21について言うと、一つの段階なんだなって感じがするんですよ。昔は安いと、オシャレ度はそこそこだったんだけど、値段を下げてもそこそこ格好いいものは出来るんだという流れは、日本の中でも出て来てましたから。


テリー ブランドを否定してる部分もあるから、悪くはないところもありますよね。


小林 ブランドにはかなわないというんじゃなくて、競争原理としてああいうものが生まれてくるのは当然だと思います。音楽でも映画でも何でもそうだと思うけど、「今までなかったような魅力を作るんだ、俺が、私が」みたいな気持ちって、人間のいい部分だと思うし、競争があることのいい部分じゃないかな。


ただそれが加速度的になりすぎちゃってて、今は弊害が起きてるとも言えるし、もっと質が悪いのは男の巨大化する欲望ね。一回、巨大化するレールに乗ったらもうどんどん膨らませてやれみたいな、踏みつけてでも行っちゃうようなことを、本当に長いあいだ世界が検証し切れなかったんじゃないか。ちょっと硬い言い方をするとそういうふうに思っているんです。


枝廣 今は、一方に安いもの、でも環境によくない可能性が高いものがある。で、環境にいいものを選ぶと今は高くなってしまう。でも、環境にいい、地球にいい、社会にいいものが高くて、環境に悪い、地球に悪い、社会に悪いものが安いというのが、そもそもおかしいと思いませんか?


小林 そうですね。


枝廣 そういうチョイスになっているから、高いけど環境にいいからってガマンして買うか、もしくは安いのしか買えないと環境を破壊する側に回っちゃう。今、そうなっているんだけど、それ自体おかしくないですか?


ケン そうです。でも今、これほどまでに経済が弱って来ると、目の前のご飯に必死で、環境のことまでは考えられないんじゃないですか。


 そうなんですよ、本当に難しい問題です。さっきテリーさんがおっしゃった、フォーエヴァー21や、H&Mとか、日本で言うとユニクロといった企業に対して"ファストファッション"という言葉が出ています。ファストファッションというのは、ファストフードから連想される言葉なんですが、これはまたマクドナルドやいろんなハンバーガーショップが今のままでいいのかという話がありますよね。


ここで皆さんに知って頂きたいのは、僕の知る限りですがH&Mはスウェーデンの企業で、社会貢献とか環境への配慮をきちんとやっているんですね。それから、ユニクロは、リサイクルということで買ってもらった人から不要になった古着を集めて、それをアフリカとかアジアの難民キャンプに送っているわけですよ。これは担当者が自分で行くわけです。こういった努力をみなさんに知って欲しい。ファストファッションだから良くないではなくて、その中でも頑張っている企業とそうでない企業があるということをみなさんにも知ってもらいたいし、それを基準に製品を選んでもらいたい気もするんです。


小林 本当にそう思います。今は激安でもいいものが作れるんだということになりました。この次はね、ここからまたブランドに逆戻りさせようと、ブランドの人たちは虎視眈々としているかもしれないけれど、そうじゃなくて、安くなったもののなかに、付加価値としての魅力がうまく出てくるとそういうものを選ぶようになっていくんじゃないか、という気はするんですね。



◆中国は思ったより環境先進国だ



 もう一つ大事なのは、H&M、昔のGAPや、ナイキもそうなんだけど、環境に配慮したきっかけは、NGOとかNPOに怒られたからなんですね。特にヨーロッパの企業はよく怒られるわけです。ついでアメリカの企業も、たとえばスターバックスが熱帯雨林の対策をはじめたのも、NGOが文句を言ったからです。つまりね、市民やNGOがもっと文句を言うようになると、企業も変わっていくんですよ。


ケン H&Mのお話ですけど、本部がスウェーデンですよね。スウェーデンも国として企業に対して、具体的な指導はあるんですか?


 もちろん、あると思いますよ。たとえばスウェーデンは、CO2の削減も含めて、環境と経済が連動していくことを宣言しています。『オルタナ』でもスウェーデンの環境大臣にインタビューしたことがあるんですけど、「環境と経済は両立する」とはっきり言い切ってました。これはなかなか日本の政治家には言えないですね。


ケン 僕たちの世代がテリーさん世代を見て「さんざんアメ車乗ったじゃないですか」と思うのと同じで、中国やインドは、日本やアメリカに対して「今になってエコ、エコって言ってるけど、君たちさんざん車やコンピュータを作って売って、俺たちの番になったら"ストップ温暖化"みたいな話を急にされても」と思いますよね。経済を彼らは伸ばしたい、でも、地球にどんどん負担をかける。そのバランスは難しいですね。


テリー 中国も変わって来ていると思います。やっぱり今の世界はG8じゃなくてG2ですよ。アメリカと中国。そうなると、世界でちゃんと発言力を持たないといけない。やはりちゃんとしたテーブルマナーを知らないと他の国から相手にされないということを、ほとんどの人たちは思って来てるんですよ。


 結構レベルが高い。


テリー たとえば車でもそうですよね。色んな国の商品をパクってモーターショーをやっている。でも「いつまでもこのやり方ではやってられないな」ということを中国自身も感じて来てるから、世界の国がちゃんと見ていれば、中国や、将来的にはインドも、大国は直ってくると思いますけどね。


枝廣 「中国は悪い」とみんな言うんですけど、でもね、今、中国がやろうとしてること、もしくはやっていることって、日本よりも進んでいることがたくさんあるんですよ。日本でなかなか進んでいない自然エネルギーも、中国はもうがんがんやっていますし、それからこないだの中国の大きな会議で、GDPを伸ばす、それだけではないあり方をこれから中国は考えて行くということをしっかり言っているし。


ですから、もともとヨーロッパは進んでいて、アメリカはオバマさんで進みはじめて、中国もきちんと進んでいて、日本だけが置いてきぼりというのが、今の現状じゃないでしょうか。


テリー 実際問題として、日本で環境の技術は進んでいます。車でいうと、ハイブリッド技術も中国に売っているんですよね。それはトヨタも、どんどん制度として中国に売ることによって、トヨタの利益はもしかしたら少なくなるかも分からないけれども、世界の環境としてはいいわけじゃないですか。トヨタは優秀な企業ですから、そういうことも考えているんです。


枝廣 そうですね、技術的に日本が提供できることはたくさんあると思います。でも、もう中国での技術開発も結構進んでいて、中国は自分たちでエコカーを作ると言って開発を進めていますし、日本でなかなか進んでいない太陽熱の利用、太陽熱温水器ですとか、あるいはそれで冷暖房が出来る技術ですが、中国には二千社か三千社、メーカーがあってすごい勢いで広がっているんです。研究も進んでいるし、日本で遅れている普及も中国では進んでいる。


あと、もう一つだけさっきの話でぜひ追加しておきたいのは、「スウェーデンがなぜ進んでいるか」という話がありましたよね。スウェーデンは実際に、1990年から2005年の間にGDPは44%増やし、温室効果ガスは8.7%減らしているんです。だから経済を大きくしながら温暖化を止めるということはスウェーデンは出来ている。日本は出来ていないことがなぜ出来たかというと、スウェーデンの人の意識が高いとか、技術があるからではなくて、人々がそういう行動をするようにきちんと政策をしたんですね。一番大きいのが税金です。エネルギーに税金をかけて二酸化炭素をたくさん出すものは高くした。なので、石炭とか石油って元々はそんなに高くないけれども、エネルギー税とCO2税で下駄を履かせて、そうすると自然エネルギーの方が見たところ安くなるんですね。


ケン でも、ヨーロッパは繋がってるじゃないですか。たとえばチェコにでっかい工場を作っておいて、自分たちの国の中だけのCO2を下げる、そういうことはあるんですか。


枝廣 ヨーロッパは今、拡大EU全体でどれくらい下げるということを約束しているので、自国だけ下げて、あっちがたくさんというのは全体のプラスにならないですね。ですから、今日本が中国にやらないといけないように、進んでいるスウェーデンとかドイツが遅れている国に技術を出して、みんなで減らして行くという方向には行っています。


 さっき、テリーさんが「中国は凄い」とおっしゃったのが僕はびっくりしたというか、うれしかった。なぜかというと、僕らも含めて自戒的に言うと、「中国なんかダメだ」っていう声が圧倒的に多いじゃないですか。でも、実際はそうではないと。さっきの話に付け加えると、オーガニックの農産物が全体に占める割合は日本ではなんと0.16%なんですね。中国は0.4%、まあちょっとだけ高いだけなんだけど、あの国の規模を考えたら凄いことなんですね。日本は環境先進国だとみなさんは思ってるかもしれないし、まあ僕もそう思いたいんだけど、実際は結構ヤバい状況にあるんじゃないかな。

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