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ap bank fes '09 特集

  • 【eco-reso talk 7】その4 食べ物は、私たちの体を作るものeco-reso talk
2009/8/ 8
【eco-reso talk 1】その3 「お金=幸せ」ではなくなってきた!



お金があることだけが幸せでない! 会場も納得の様子です。では、大きな価値観が崩れたとき、私たちはどうしたらいいのでしょう?


司会:ケン・マスイ 
ゲスト:テリー伊藤(演出家)、枝廣淳子(環境ジャーナリスト)、
森 摂(雑誌『オルタナ』編集長)、小林武史



◆なぜマイ箸を使わなければいけないかを考えたい


 これから総選挙がはじまるわけですけれども、自民党と民主党、政権交代と言われていますけれど、なかなか今まで日本の選挙で環境をテーマに論争を繰り広げられたことはないわけです。


テリー まだないですよね。


 ここがちょっと寂しい。民主党が結構しかけてますけれども、それに自民党も応えて欲しい。それから、環境問題って実はエネルギー問題と裏表なんですね。だから原発の問題、原発はCO2が出ないからいいじゃないかという意見ももちろんあるわけです。確かに原発をいきなりなくすと、みなが困ることも多い。ではどうすればいいのか。自然エネルギーをどうやって上げて行けばいいのか。こうした問題はやはり選挙でみんなが取り上げていかないと。選挙というと大体消費税や社会保障といった問題がメインになりますけれど、環境をメインに論争をしてほしいなと思いますね。


ケン 素人の意見なんですが、アメリカのネバダ州など土地があるところには、ものすごい風力発電がありますよね。中国も土地はたくさんある。じゃあ日本はどうするんだいって。あんな山のところに建てられないし、という勝手な僕の思い込みがあるんですけど、実際はどうなんですか?


枝廣 今、すでに86の自治体市町村が、自分たちの家庭用の電力は全部その地域の自然エネルギーでまかなえるようになっているんですよ。風が吹くところは風力、温泉が湧いているところは地熱、山が豊かなところはバイオマス、それぞれ地域にある自然エネルギーを使って、自分たちの家庭用の電力は全て地域の自然エネルギーでまかなっている。そういう自治体が86も日本にあるって、すごいと思うんですね。


ネバダ州とかモンゴルの砂漠とか、大きくやると目立つけれど、自然エネルギーのいいところって小さな資源をそれぞれ小さくても使って行けるところですよね。日本もそういった可能性は十分にあると思うし、日本にはそちらの方が合っていると思うんですね。


 さっき政治の話をしたんですけれど、枝廣さんもよくご存知のマエキタミヤコさんが、次の選挙に出る議員のエコ通信簿をつけようとしています。これから立候補する人に25くらいの質問をして、その人の環境に対する意識を探るらしいです。今まで選挙って何を基準に入れていいかよく分からなかったと思うんですけれど、エコ通信簿をね、参考にして頂くといいかと。


ケン 25の質問の内容はどんなものなんですか。


 僕も、まだよく知らないんですけれど、さっき言ったようなエネルギー問題も含めて、各議員が、環境やエネルギー問題にどう取り組んでいるか、どういう意識なのかを調べるみたいです。


テリー 森さんは普段、どういうことをやっているんですか?


 いきなり突っ込まれてしまいました。実はそんなに大したことはやっていないです。たとえば僕はマイ箸を使っていますが、「なぜマイ箸を使わなければいけないか」ということを考えたいんですね。なぜかというと、マイ箸は割り箸をまず否定しています。割り箸は中国から安い製品が大量に入って来ている。


これは確かに森林資源をかなり消費しているんですけど、一方で日本国産の割り箸をちゃんと使ってあげれば日本の森にお金が行く。そうすると、マイ箸だけ使っているわけにはいかなくなる。環境問題って実は答えが一つじゃないことが多い。○か×かでなかなか決められない。だから自分でもなぜなのかって考えるようにしてますし、読者のみなさんにも考えましょうということを言うようにしています。


小林 そうだと思いますね。さっきからずっと続いていた話は僕には腑に落ちないところだらけで、中国の問題だったら中国がエコのことに対して日本よりも先進的なところがあることは何となく分かるんです。後から入って来て、スケール感があればいろんな技術も取り入れやすいし。


でも、それよりも、ここにいる人たちが日本のこれからを考えなきゃならない。だってもうアメリカの優等生として、ずっとアメリカの話を聞いて来たことのアドバンテージはなくなっちゃってるし、右肩上がりがずっと続くわけではないのがみんなすごく分かってる。経済自体がすごく行き詰まっているのが、明らかに露呈しているわけです。だから、僕は少なくとも中から変えて行くというか、僕らの気持ちを変えていきたい。


たとえばap bankで農業を後押しさせてもらいたいと僕が思っているのは、もちろん食糧問題や自給率といったこともありますけれども、今、格差社会、競争社会の中で、ちょっと誇張して言うと左脳的なものをみんなものすごく使っていますよね。ところが、そういうシステム的なところで落ちて行っちゃった人が次に這い上がるのがすごく難しくて、この先の視野がどんどん狭くなっちゃう。


たとえば農業が右脳かどうかは分からないです。でも「毎日労働をやっていけば、きちんと収穫があるんだ」みたいなサイクルのところがあるべきだと思うのね。こう、次元が少なくとも二つくらいあるような形がいいと思う。さっき枝廣さんが言ったようなスピードと合理性の中だけのルールじゃなくて、僕らがこうやって命を授かったこと自体が本当に奇跡的なことの合わせ技で、積み重ねで、すごいことだし、それをもうちょっとみんなが楽しめるというか、そういう社会が出来ればいい。本当の正しい答えを僕が知っているわけじゃないけれども、もう少しコンパクトになっていって、僕らの中での循環みたいなことを捉えて行けるんじゃないかと思っているんですね。


◆お金が介さない幸せを増やしていきたい


テリー 実は日本はね、50代以上の人たちが住みにくいですよね。


ケン どういうところですか?


テリー 日本って若者主義でしょ。若いことが正義みたいなところがありますよね。45歳を過ぎるとみんなリストラの対象になったり仕事がなくなっちゃう。それを実際に見ているのは若い人。そうすると「ここまでうちの親父が働いてたのにあんな結末かよ、」「人生って何だよ」って思っちゃうよね。


50代の人たちが知恵を使った仕事ができることを考えて行くのもすごく大切で、たとえば農業も実はそうです。そういう人たちが農業を出来るような環境にしていけば、そうか、あの年になってそんなにお金がなくても食って行けるんだって思える。年収150万円で食って行けるんだというような環境づくりをすることが大切だと思います。


今は、いい中学に入る、いい高校に入る、いい大学に入る、いい会社に入るってやってきて、その先には何があるかというと、いい給料をもらうってことですよ。そこにずっと追い込まれて行ってるわけでしょ。次の一手はないんですよ。そしたらその時に、あ、そうか、あそこに行けば別にいいんだというふうに、そんなに金がなくても、あそこの場所は結構幸せだなとうことって、最終的には僕、農業にしか見いだせないと思う。逆に企業が技術力で何とかするっていうのは難しいですよ。


 まさに今テリーさんがおっしゃったようなことをストーリーにした、ぜひ皆さんに見て頂きたい映画があるんです。『降りてゆく生き方』というタイトルで、大きな映画会社が作った映画じゃないんですよ。森田さんという一人の弁護士が作った自主制作に近い映画で、それでも主演は武田鉄矢さんなんですね。武田鉄矢さんがバリバリの商社マンで、農地の買収かなんかに行くわけです。ところがそこで会社に切られそうになって、結局俺の今までの人生なんだったんだと思い直して、農業にのめり込んで行くという筋書きなんです。


テリー その先にあるものが楽しくないとダメだよね。ハングリー精神とかなにくそって言うんじゃなくて、サーフィンやるみたいなノリでその先に農業みたいなものがないと、カッコよくないじゃないですか。


ケン その映画では、田植えガールズってのが出て来るんです。何かね、キャバクラって言葉を使っていいのかよくわからないですが、そこの田舎にあるキャバクラのお姉ちゃんたちが、思い思いの格好で田植えをやるんですね。これがね、結構かわいくてカッコいいわけです。


枝廣 私は小さいとき田舎で過ごしていて、うちで畑をやっていましたし、いつも田んぼのなかを三十分くらい歩いて学校に行っていました。農業ってすごくいいなと思うのが、絶対に自然のペースでしか進まないということです。速く大きくなれとか、効率よく実をつけろとか、それはまあいろんな技術はあるにしても、基本的に地球のペースに合わせて生きるという生き方ですよね。それはすごくたくさんの人にとってホッとするものだと思うし、テリーさんがおっしゃったようなことは、まさに今若い人の中で少しずつ増えはじめてますね。


ご存知か分かりませんが、「半農半X」という言葉があって、半分の時間は農業をやって自分が食べるものを作り、残りの半分の時間でNGOをやったり、本を書いたり、自分がやりたい大事だと思うことをやる。食べ物を確保できていればそんなにたくさんお金を儲けなくても、生きていけますから。これまではいい学校に行って、いい会社に入って、いいお給料をもらって、お金をたくさんもらってそのお金で幸せを買うんだと思っていた。そうじゃなくてもいい、お金を介して幸せじゃなくて、お金を介さなくて直接幸せに行く道があるって多くの人が気がつきはじめていると思うんですね。


ちょっと難しい言葉ですが、私がよく最近言うのが「幸せの脱貨幣化」ということ。大体みなさんの幸せのうち、何%くらいがお金を使っての幸せなのか。たとえばものを買うとか、どこかへ行くとか、いいものを食べるとか、お金を介した幸せのパーセントっていうのが、今は結構高い人が多いですね。でも、そこまで高くなくてもいいかもしれない。ゼロにする必要はないけど、たとえば自然の中で、きれいなお花を見て美しいと思ったり、隣の人とちょっと挨拶をして気持ちよくなったり、そういうことでも十分幸せって作られて行きますよね。だって幸せはお金で買うものではなくて、お金も必要だけど、お金を介さない幸せの割合を増やして行くというのが大事だし、今、それをいろんな形でやりはじめている人が多いような気がしますね。
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