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伊勢谷友介×谷崎テトラ×小林武史 「止められない進化の形」

data : 2012.06.28category : ぼくらをとりまく 2012

社会学者の宮台真司さんは日本人を指してこう言います。「お任せしといて文句をいう!」。つまり、なにも行動にうつさないくせに都合が悪くなると不平不満だけは漏らす、と。そんなわたしたちの悪いクセは、気付いたならば治したい。3.11以降はそう考える人が急激に増えてきていると実感します。さて、実際にはどうすればいいのか!? そのことをひそかに画策しているおふたりをお招きしました。"愛と幻想のアナキズム"、ご覧ください。

ジャスミン革命が示した未来

小林 今日お二人をお呼びしたのは、たまたまラジオで伊勢谷くんとテトラさんが興味深いことを語っているのを耳にしたんです。それで、どこかで詳しく話を聞けたらなずっと思っていて。

伊勢谷 ありがとうございます。小林さんがそんなこと言うからテトラさんがもうワナワナしてますけど(笑)。

谷崎 ええ、はい、そうですね(笑)。あの、小林さんは環境や平和、格差のことなど、多岐に渡って考えてこられたじゃないですか。これって全部、コミュニケーション、あるいは合意形成の問題だと思うんです。

小林 うん、そうだね。

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谷崎 それが、このあいだのエジプトの例にもあるように、Facebook革命も含めた直接民主制のような形になっていくのではないかという兆しがありますよね。それを『ガバメント2.0』の時代と呼んでいるんです。

小林 その『2.0』っていうのは?

谷崎 Web2.0を提唱していたティム・オライリーが、「ITによって政治も変わっていく」という意味でガバメント2.0というコンセプトを提唱したんです。

小林 それって単なる直接民主制というのではなくて?

伊勢谷 そこはインターネットの存在が大きいですね。個人同士が繋がって、問題に関わっている人たちが議論を重ねて、その答えが投票に反映され社会で実行されていく社会。『アラブの春』が画期的だったのは、有史以来はじめて明確な指導者のいない革命ということでしたよね。

突出したリーダーが先導するのではなく、FacebookやTwitteが個々人のシナプスをつないでいった。そこに人類の進化を感じ、これはひとつの答えなんじゃないかと思ったんですよ。

谷崎 これが日本だとまだ「経産省のサイトでTwitter導入してみました」程度なんです。でもアメリカではすでに、国の予算がどこに使われているかをネット上で可視化するところまできています。それに対して市民側からブレストした答えをTwitterで返していくという形もできている。これが日本でできていたのは、図らずも東日本大震災の被災地だったんですよね。行政がダメなときでも、市民が自律的に始めることもできるんですよ。こういったことがもっと広がっていくといいよねって311直後に話していたんです。

伊勢谷 これは絶対に止められない進化の形だと思います。ただ、これがうまく成就されていくためには、人々が自由と責任を持つ必要がある。自分の命に対する自由と責任です。




小林 なるほどね。個人的にもジャスミン革命はこれからの世界で唯一といっていいほどの希望だなと思っていました。政治や経済のいろんな力学が働くなかで、人々の営みのなかから出てきた声が実際に反映されたというのは感動的でもあった。他にもイスラエルとイランで、Twitterでお互いの国民が「私はあなたの国に攻め入る気持ちはない」ということを伝えあっていたという報道もありましたよね。一方で、日本では「中国が攻めてくるかも。抑止力が必要かも。」といった煽りばかりが目立っていて。ある種の「悪意」はネットが特異とする分野であることは確かなんだろうけど......。

伊勢谷 その良いところを自分たちの成長の形にしようよ、ということだと思うんです。その具体性として、ひとつ「ガバメント2.0」という考え方があるということを提示できれば、と。そういうモチベーションがある人たちが、一緒にどういうふうにやっていくかということじゃないでしょうか。

小林 そうだね。例えばいまの再稼働の問題にしても、本来ならば僕らの自由と責任のもとに何らかの行動と表現で伝えていくことをやるべきなんですよね。でも、どうしてもこの国ではいつのまにかヌルッて感じで押し出されてきてしまう。 

谷崎 例えばデンマークでは原発の予定地だったところに風車が立ったりするんです。それを、政治家の意向ではなく住民投票によって成し得てるんです。つまり、自分たちの未来を自分たちが選択していく意識がある。でも日本ではその真逆をやっている。

伊勢谷 だから、僕らがやらなきゃいけないのは結論を出すことではなくて、みんなが結論づけるためのプロセスを援助していくことなんじゃないかと思っているんです。裁判員制度などはその好例だと思います。

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書き換えられる日本国憲法

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谷崎 もうひとつ同時に提唱していかないといけないのが「ダイアログ(対話)の文化」です。ディベートのように勝敗のある議論ではなくて、ステークホルダー(利害関係者)がお互いの合意を形成する手法が必要だと思います。お金を持っている人が勝つとか、声が大きい人が勝つとかではない、弱者の意見も擦り合わせた答えを出すコミュニケーションの確立ですよね。

小林 二人が言ってることには僕は多いに賛成ですよ。勝ち馬に乗ることに重きを置きすぎたいまの政党政治は、そういった意味ではまるで機能してないからね。

伊勢谷 そうなんですよね。

小林 圧倒的に御上にお任せ。いわゆる「依存の歴史」なんだよね。頼みの綱だった「経済発展」という潮流からまだ僕らは抜け出せないでいる。だけど気付きだしてはいるんだよね、「これでいいのだろうか」って。

伊勢谷 だから僕らが提供したいと思ってるのは、モチベーションと目的と責任感がある人がすぐにでも行動できる「状況」なんです。みんなが動ける形を作っていきたい。やってみようかなと思うところまでは行ったとしても、一歩目を踏み出すのはすごく難しいですから。

小林 伊勢谷くんはやっぱり多分にアートの人でもあるんだよね。既成概念をいろんな角度でズラしてみるっていうのがアートの役割でもあるからね。ただ、アートが持っている根源的な心の振るわせ方というのも一方にはあるけどね。

伊勢谷 だから両方があるとすごくいいと思うんです。

小林 そうだね。そう考えると、僕が聴いたラジオで話していた「憲法」の話というのも、そういうアートの側面が強いものなのかな?

伊勢谷 そうですね。




谷崎 そもそもは伊勢谷くんが、現代美術の作品として「憲法をウィキペディアのように書き換えられるアート作品」というのを言い出したんですよ。いままで繰り広げられて来たような論戦ではなくて、双方から書き換えられるようにするという発想です。

伊勢谷 みんなが自分たちのモノとして憲法を自分たちで律していくことが大事なんじゃないかなと。ある意味でのアナキズムですよね。

谷崎 アナキズムというとカオティック(混沌)なものを想像する人が多いんですけど、本来の無政府主義というのは、市民の合意による役割分担が共産主義ではなく市場原理に則ってできている社会のことなんです。

小林 なるほど、しきりと憲法を書き換えるという言い方をしていたから改憲論者なのかと思っていたけど、そうじゃなくて伊勢谷くんはアーティスト兼アナーキストだったんだ(笑)。

伊勢谷 (笑)。個々の条文がどうあるべきかということではなくて、憲法が自分たちの根本にあるものならば、そこに関して神経が届いている必要性があるはずだっていうことなんです。

谷崎 僕たちは憲法を作る際に参加してないじゃないですか? だから一回くらいみんなで憲法作ってみたらいいんじゃない、っていう。でも、じゃあ俺も書き換えてみようと思っても、「第1条 天皇」となると「天皇かぁ〜、書き換えにくいなぁ~」みたいな(笑)。

そういうのも面白いんですよね。全部に向き合ってみるっていう体験が。

小林 その着想はアートの流れなんだ。

伊勢谷 そう、現代美術作品。

小林 向き合わずに「ノーコメント」になっちゃうのがいまの日本人だからね。沖縄だけが犠牲になっている構図にしてもそうだけど。そういったところを感じるきっかけになるような機会を僕らもいろいろと作っていこうと思っています。 では今日はどうもありがとう。ap bank fesでもこの続きを話せたらいいね。

伊勢谷 そうですね、ぜひ。




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伊勢谷友介

俳優/映画監督/リバースプロジェクト代表

1976年5月29日生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。98年に是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』で俳優デビュー。03年には『カクト』で監督デビュー。近年の主な出演作品は、「ブラインドネス」(フェルナンド・メイレレス監督)、「あしたのジョー」(曽利文彦監督)、NHK「白州次郎」、大河ドラマ「龍馬伝」など。今年公開になって話題になった監督作品「セイジ−陸の魚−」のBru-ray&DVDが8月15日発売。



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谷崎テトラ

構成作家/コンテンツ作家/音楽プロデューサー

1964年静岡生まれ。海外での取材をもとにしたTV・ラジオ番組や出版の企画編集 など様々なメディアを通じて活動している。1997年、温暖化防止京都会議(COP3)をきっかけに環境保護活動に参加。地球温暖化防止レインボーパレードやアースデイなどの環境保護アクション、虹の祭り、BeGood Cafeなどの社会起業活動を積極的に行う。環境をテーマにしたラジオ番組の構成も数多く担当する。また、ポエトリーリーディングと音楽によるユニットVOID OV VOIDをはじめ、STK、Mu-tanzなどでサウンドデザイン&Liveも行っている。



(撮影・取材・構成/編集部)


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