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「沿志奏逢 3」Release Special 櫻井和寿Interview(前編)

data : 2010.06.30category : 「沿志奏逢 3」リリース記念 Special FEATURE
「沿志奏逢 3」を創り上げるにあたって、過去の2作とは異なり、より若い世代のアーティストの曲を多く選曲した櫻井和寿。新しい方向性にチャレンジするまでの気持ちの変化や、レコーディングを通してそれぞれの曲に対して抱いた想いを語ります!



「沿志奏逢 3」の選曲について
―― 
取り上げているア-ティストの顔ぶれ的には若返りましたね。
櫻井 
そうですね。平均年齢とかだと、どうなんでしょうね......。
―― 
ざっと計算しましたところ、最初の『沿志奏逢』と比べて約5歳ほど下がってました(笑)。でも、櫻井さんとしても『3』に至るまでには気持ちの変化もあったでしょうね。
櫻井 
9・11があったこともあり、アメリカ的なグロ-バリズムではなく、もっと自分たちの足元、つまり生活に近いところをみつめようという想いになったことは以前もお話ししたと思うんです。で、そのためには何か新しいことに目を向けるより、自分達がどんなものに支えられ、どんな流れのなかに在るのかを見つめ直すことが必要で、それを精神的に探そうとしたし、音楽的にもそういう方向になり、それが最初の『沿志奏逢』です。だからこそ、自分が影響受けてきた邦楽のア-ティストを取り上げたし、さらにそれが二作目にも繋がっていったという......。
―― 
一作目と二作目の間にはap bank fesの定着もありましたし。
櫻井 
はい。でも、ふとここ最近のこととして、今の音楽事情に目を向けてみるとですね、大御所と言われる人達が信頼を得て安定した活躍をされてる一方で、「若い人たちがバ-ンと世の中に出ていき辛い状態にもなってるんだなぁ」って思ったわけなんですよ。そして、「そんな今ならそういうものに目を向けても、キチンとした意味があるなぁ」と思って、だから三枚目はこれまでより若めの選曲なんですよね。でも僕自身、今まで好きになった歌のなかには沢山自分より若い世代の音楽もあったわけですから。
―― 
櫻井さんの曲との出会い方って、一般リスナ-と変わらないところが凄く親近感湧くんです。例えばフジファブリックの「若者のすべて」は、ラジオで聴いて好きになったそうですね。
櫻井 
そうですね。あとSyrup 16gの「Reborn」もそうなんです。 ラジオで掛かってたのを聞いて好きになるということは、僕のなかで重要なことでもあるんですけど。
―― 
今回は男性ア-ティストの作品が揃っているということもあってお訊きするんですが、「ひょっとして 、僕もこういう曲を書いてたかも......」みたいな親近感て、湧きました?
櫻井 
あります。特に1曲目のGOING UNDER GROUNDの「ハ-トビ-ト」は、かつて自分も作ったかもしれないというか。今でもこういう曲をやりたくなりますし、「またこういう曲が書けたらなぁ」とも思うし。そのくらい初々しい。細かく言えば、「なんでここでこう展開するんだろう?」、みたいなのもありますし。
―― 
それは当然,他の人が作った曲ですものね。
櫻井 
はい、「その"突き詰めない感じ"もまたいいんだな」ということを発見出来る。今の自分ならもう少し練り込むことも出来るんだけど、そこで理屈っぽく、「ナルホド、こことここが繋がって......」みたいな上手い歌詞が出来ても、自分で腑に落ちるだろうけど「この蒼さには勝てないなぁ」というのはありますから(笑)。
―― 
「若者のすべて」も初々しさがありますね。あと、花火が出てくる夏の情景が描かれ、フェスにもピッタリというか......。
櫻井 
そうでしょうし、あとこの曲はですね、最初聴いた時に「アレンジが小林さんぽいな」って思ったんです。サビ前のとことか、3番のサビに出てくる仕掛けとか......。これ、Mr.Childrenとして最近は歌わなくなった音の飛び出し方をするアレンジでもあるわけですよ。「それを今の時代にまた鳴らすというのもいいなぁ」という想いもあったんですけどね。あと同時に、「この曲の持つ切なさとは何だ?」というのをずっと考えながらレコ-ディングしてました。
―― 
RADWIMPSの「有心論」を取り上げたのも話題になってますね。
櫻井 
RADWIMPSとBUMP OF CHICKENというのは、僕からしたら言葉に対する感性が似てる気がするんですけどね。テクニック的なこととか歌っている内容は全然違うけど......。そしてこのふたつのア-ティストからはビックリさせられる。自分とは違う感覚だから。
―― 
違う感覚となると、それでもどこかに共通項探して、みたいなことなんですかね、カバーするにあたっては......。
櫻井 
いや......、ただのファンなんだと思いますよ。好きなアーティストをカラオケで歌うように。あははは。
―― 
櫻井さんには「光の射す方へ」のように、迸る言葉に身を任せるが如く歌を作ってた時期もあったじゃないですか、その感覚とどこかで...。
櫻井 
あ、共通する感じもしますね。でも、するけど違うんですよ。あ、でもどうなんでしょうねぇ。本人達はもっと言葉を大事にしてたりするのかな......。
―― 
「どうやって作ったんだろう?」みたいなことを想像しながらカバーするのも興味深いことじゃないですかね。
櫻井 
「光の射す方へ」を作った時を思い出すと、ああいう風に言葉で遊んでいけるのは、サウンドがカッチリ見えてる時なんです。言葉が大層な意味を持ったり歌い手がより主張してしまうと、バンド全体の音を壊すな、という時は、そういう風に開き直ったように出来るんですけど。でも「有心論」は言葉の遊びだけの気はぜんぜんしないし、かといってスガシカオさん的というか、あとKANさんもそういうとこあるけど、冒頭で言ったこととまったく同じ言葉を歌詞の最後で発しているにも関わらず、真逆のさらに深い意味を持たせるといったテクニックとも違うと思うし......。ラッドのこの曲の場合は、まず何より彼らの発想が凄いなってことでしょうかね。
―― 
Bank Bandで取り上げていそうで今まで取り上げてこなかったアーティストもいますよね。いま名前がでたBUMP OF CHICKENとかって、櫻井さんがインタビューなどでも称賛してたりするじゃないですか? 「だったらカバーしても......」って意見も......。
櫻井 
BUMP OF CHICKENに関しては、彼ら自身が演奏しないと意味を持たないし、説得力がないと思ってるからなんですよ。それを僕がBank Bandの演奏で歌っても「違うだろうな」ってことですよ。そういうアーティストは他にもいるような気がするけど......。
―― 
年下、年上のアーティストの作品がある中,キリンジのお二人は、特にお兄さんの堀込高樹さんは櫻井さんと同学年ですね。
櫻井 
へぇー、そうなんですか。僕より若いと思ってた。でもキリンジの歌の主人公はどこかで一歩引いてるというか、客観的でクールだし、モノゴトを俯瞰で見てて、だからこそ紡ぎだされるのが、あの歌詞なんでしょうね。それを彼らが朴訥と歌うからこそ、さらに深みが伝わるところがある。そしてそんな言葉と歌い方、サウンドが絶妙なバランスになってる。だから僕が歌うにしても、「熱を持ってしまっては、ああは響かないんだろうな」っていうのはあったんです。ただ、「Drifter」だけは熱を持って歌っても成立する主観を持った歌だと思ったし、だから取り上げてみたんですけどね。

(取材 小貫信昭)

後編に続く

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