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「沿志奏逢 3」Release Special 櫻井和寿Interview(後編)

data : 2010.07.01category : 「沿志奏逢 3」リリース記念 Special FEATURE
「沿志奏逢 3」には既にこれまでのap bank fesで演奏していた楽曲も収録されています。RCサクセションや小田和正など、櫻井和寿本人が、ずっとファンとして聴いてきた楽曲を歌うことについて、レコーディング中の創意工夫なども含めて、ここでしか聴けない貴重なエピソードを語ります。



自分の中でコンバーター(変換器)を働かせてみる
―― 
既につま恋で演奏された作品についてもお訊ねします。「緑の街」「慕情」「明日のために靴を磨こう」「ステップ!」は、ステ-ジで演奏されてますね。このあたりはライヴの手応えのままレコーディングに入った感じですか?
櫻井 
そうですね。ただ、いつもBank Bandでやる時って、ブラスの人達もストリングスの人たちも"いっせーのせ"で音を出すから、厚い、カラフルな音しか聴いてないんだけど、レコーディングでスタジオに入ると、まずリズム・セクションから録るので、そこは寂しい気がしましたけど。
―― 
「ステップ!」はRCサクセションの曲で、忌野清志郎さんの歌声を思い浮かべる人もいると思うけど、櫻井さんはまたオリジナルとも別の人格で歌い切ってる感じですね。
櫻井 
「ステップ!」は大好きな曲で、言葉を幾つもメタファーとして使っているところがあって、でもそのメタファーが情熱や衝動を失わないから冷静にならず聴けるところとかは、リスナーとして聴いてた時から「凄いなぁ」って思ってました。でもいざそれを歌うとなると違って、凄く好きな曲は、自分の中に"刷り込まれた"歌い方があるわけですよ。別に真似てるわけでもなく、自然とそう表現されちゃう部分があって、不本意といえば不本意......、いや、不本意っていう言い方もヘンだけど(笑)。
―― 
それ、"自分はこう創意工夫を凝らしましたという自覚を持てない不本意さ"ですかね......。
櫻井 
さっき"刷り込まれた"と言いましたけど、オリジナルを何回か聴いて、自分の中でそれを"再生"しているうちコンバーターが働くとでも言えばいいんでしょうかね......。
―― 
コンバ-ター。つまり変換器。
櫻井 
ちょっとづつ、なんかメロディとかも変えてるんだけど、それが自分ではオリジナルだと思い込んでいるところもあるんです。今回取り上げた他の曲だと、Syrup16gの「Reborn」なんて、普段、歌詞をまったく違えて覚えて歌っていて、今回レコーディングするにあたってスタッフの人が歌詞カードをプリントアウトして渡してくれたんだけど、「これ、本当は間違ってるでしょ?」って食ってかかったくらい(笑)。自分で間違って覚えてただけなのに。
―― 
この「Reborn」は「奏逢~Bank Bandのテーマ~」の前の10曲目という重要な位置に置かれていますが、この歌の世界観のどのあたりに共感したんですか。
櫻井 
なんだろう......。「諦めることで希望が差してくる」みたいなことでしょうかね。
―― 
カバーの場合、オリジナルとこう違う、みたいなとこに着目する聴き方も出来るけど、そこばっかりに耳が行くと作品本来の良さを見失いもするので、そこが難しいんですが......。演奏する側もオリジナルとの距離感とか気を配るものですか?
櫻井 
「あまりにもオリジナルに似過ぎちゃってるなぁ」と思うことはあります。そんな自分を客観的に見てみると、ちょっとおかしな自分に映ることは......。でも、真似した方がオリジナルの良さが出るならそうするし、ただ真似しただけだなって時はもうひとヒネリしようかなって思うのかもしれない。
―― 
なるほど。
櫻井 
そもそも歌には、歌っている人の容姿とか生き方とかが見えた方が説得力持つものと、それを度外視して歌だけが一人歩きして、リスナーと共に育っていくものがあるんだと思うんです。で、僕はこのBank Bandでは、あと最近ではMr.Childrenでもそうだけど、後者の方になりたいと思ってて。なのでHEAT WAVEの 「明日のために靴を磨こう」なんかは、実はオリジナルを真似た歌い方も得意なんだけど(笑)、さっき言ったポップ・ソングとして一人歩きして欲しいという想いもあって、そんな歌い方になってるんですけどね。
―― 
これ、Bank Bandならではの多彩なアレンジですよね。
櫻井 
最後にパ-カッション・ダビングをしたんですけど、ただ歌の内容とかだけ取ったら、あんな軽快な、ちょっと可愛らしいカウベルの合いの手とかは入らないと思うんです。もしMr.Childrenでこういう曲出来上がったとしても、絶対に入れなかった。でもあそこで藤井珠緒さんの女性らしい感性が加わることで、凄くBank Bandっぽくなったなぁと思います。
―― 
小田和正さんの「緑の街」は一昨年のフェスで披露してくださったわけですが、小田さんこんなに跳ねて歌ってましたっけ?
櫻井 
いや、バンドが跳ねるんですよ。バンドが跳ねるからつられて跳ねる(笑)。いや、跳ねないと歌えないのかも?小田さんのように平坦でありながら抑揚をつけることは自分に出来ないから、跳ねることで何とかしようとしてるのかもしれない。
―― 
サザンオールスターズの「慕情」はどうでしょうか?
櫻井 
これはどうやったって桑田佳祐さんになるんです。カラオケだったら、もっと桑田さんに似せて歌えるとも思うんですけど。歌い出しの"夢の中で交わした"の後の"♪キィ~ッスわぁ~"のヴィブラ-トのところなんて、ホントに焼きついてるんだけど、それを個人的にカラオケで楽しむならともかく、Bank Bandでやったとしたら、ただの"似てないモノマネ"になっちゃうじゃないですか?
―― 
それを避けるためにどうしたんですか?
櫻井 
物語の主人公の佇まいをちょっと頭の中で変えて歌っているのかもしれない。ああしたヴィブラートを掛けて歌うほどの重み、人生経験のない主人公というか......。なのでともかくこの出だしだけは"♪キィ~ッスわぁ~"をス-ッと歌おうと決めてたんです。そのあとは流れのままにというか。
―― 
まさに月の光に包まれてるような妖気漂う雰囲気の仲井戸麗市さんの「月夜のハイウェイドライブ」は、アルバムを通して聞く際のいいアクセントになってますね。
櫻井 
ドラムの河村"カ-スケ"智康さんもチャボさん(仲井戸麗市)が大好きで、二人でスタジオでサウンドチェック的にやってたら、小林さんが「それ誰の曲?」って言って、それが発端でもあるんです。で、小林さんも話してたと思うんですが、完成までには紆余曲折あったんです。でも小林さんがテンション効かせたピアノを弾きだし、そのフレ-ズが跳ねたりする様子をフォ-・ビ-トに感じたりもして......。1枚目の『沿志奏逢』に入ってる「突然の贈りもの」っぽくもやれるかもというのもあったので、他のメンバ-のみなさんにもそんな感じでお願いしました。
―― 
さて、『沿志奏逢3』も残すところあと1曲。「奏逢~Bank Bandのテーマ~」というBank Bandのオリジナル曲が最後に収録されています。これは昨年のフェスで既に披露された曲ですが......。
櫻井 
最初はもっと違う歌詞が乗っかったモチ-フにあたるものがあって、でもサウンドと言葉のバランスがあまり良くないように自分は感じてたんですよ。で、もしこの曲をap bank fesでやる可能性があるとするなら、僕のなかではサザンオ-ルスタ-ズの「みんなのうた」とか、そんなイメ-ジがあって...。リスナ-と会場にいる人、そしてBank Bandが想いを共有できるものにしたいなぁと思って作った歌ですね。
―― 
この「奏逢~Bank Bandのテーマ~」が最後に収録されているのもいい余韻残しますね。
櫻井 
そうですね。そう思いました。これが最後で良かったなって。
―― 
最後に今年のap bank fes'10について抱負を。
櫻井 
色々と考えてはいるんですけどね。今年はバンドのゲストも多くて、例年よりBank Bandの一員として演奏する曲数は少なくなりそうで、そこは寂しくもありますけど。さらにMr.Childrenのフェスへの関わり方も含め、これまでとは違うap bank fesになると思うので、楽しみにしていてください。

(取材 小貫信昭)

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