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自然派ワインを追って〜フランス・ドメーヌ巡りの旅 Ⅰ〜

data : 2010.10.12category : 自然派ワイン
地球にも体にも優しい自然派ワイン

手間がかかるだけに、造り手の想い入れも強い自然派ワイン。
でも、その根底にあるのは、「目に見えない、その先の未来へ」。
本当に体にいいもの、おいしいものを造ること。地球に負荷をかけないこと。
「余計なことはしない」、「自然に逆らわない」、そんなシンプルなことなんだけど
自分以外の人やものの気持ちになって考えてみたり、チャレンジしたり、試してみたり、うまくいかなくて悩んだり。 都度状況や環境によって方法を変えていかなければならない。それが自然派ワイン造りなのです。

naturalwine_2_sommelier.jpg 「人を相手にしてもそう。恋愛なんかは特にね......。」

と、遠くを見つめるkurkku kitchenのソムリエ・木村未穂さん。

「素材となる葡萄そのものが持つ魅力を最大限引き出すための努力を惜しまない、それが、いい自然派ワインを造り出すのに大切なことなのです。そして、造り手の愛で育てられたワインは、おいしいだけでなく、体に優しく染み渡るのです!」

その深い世界を知るべく、フランスに旅立った木村さんによる自然派ワインの造り手を訪れるドメーヌ(*1)巡りリポートです!



無添加シャンパーニュ「Reserve Grand Cru(レゼルヴ グラン クリュ)」の造り手
稀少価値のあるワインを生み出すドメーヌ「
Andre Beaufort(アンドレ ボフォール)」


naturalwine_long1.jpg 8/17(火)AM6:00、パリのCharles de Gaulle(シャルル・ドゴール)空港に到着。そこからChampagne(シャンパーニュ)地方に向けてレンタカー(BMW)でいざ出発! いや、遠いというかフランス広い! もちろん高速に乗って行ったのですが、その長い道のり、風景のキレイな事......。 そこはやはり農業大国。どこもキレイに整備され、ほったらかされている土地がほとんどないのです。それはこのプロヴァンスまでの縦断の旅が終わるまでずっと。見習いたいですね。

麦や向日葵の畑、牛や馬のいる牧草地を繰り返し巡りやっとでてきたぶどう畑。かの有名なMoet et Chandon(モエ・エ・シャンドン)やなどReims(ランス)の有名所を抜けPolisy(ポリジー)にあるドメーヌ(※)「Andre Beaufort(アンドレボフォール)」に到着。 二代目オーナーのJacques Beaufort(ジャック ボフォール)さんがとっても暖かく迎えてくれました。手土産に、kurkku kitchenがはたまたとてもお世話になっている杉本園さんの無農薬の玄米緑茶をプレゼント。ワイン愛好家の方々はお茶にも興味がある方が多いです。嗅 覚や味覚が優れているので楽しめるということでしょうか。こういったフランスでは入手しにくいお茶などをプレゼントすると、とても喜ばれます。

ドメーヌの庭では放し飼いにされた鶏やあひるが行進をしていました。鶏は畑の害虫を食べてくれたりするので自然派の生産者さんは飼っている方が多いのです。

まずは試飲からということで出していただいたお水は自家製のミネラルウォーター。なんと、炭で濾過するだけでなく、音楽を聞かせて作るんだとか! さすがです。
そしてお目当てのChampagne(シャンパーニュ)。 このドメーヌではノンミレジメ(*2)をあまり造りません。ヴィンテージ(*3)ごとの違いは顕著でした。ボフォールさんはその違いによって合わせる料理を変える事ができるので選ぶ事から楽しくなるとのお考えだそうです。そう、シャンパーニュは食前から食後まで楽しめる実に懐の深いワインなのです。軽やかな果実味とさわやかな酸を持つシャンパンは食前に。おやつの時間 には外にテーブルを出してレモン風味のクッキーとほろ酔いに......。ブラン・ド・ブランという白葡萄のみから作られるシャンパーニュはサーモンやアンチョビを使ったちょっと塩気のあるお料理と。黒葡萄を多く使うものやロゼは仔牛などのお肉料理、熟成した、香ばしく力のあるものはローストした仔羊なんかもいけちゃう。チーズも白カビやフレッシュなフロマージュブランと幅広く合わせられます。そうそう、程よく黒葡萄を多めに使ったシャンパーニュのスタンダードのものをビールのかわりに夏のビーチで飲むのがサイコー! 熱い太陽ともよく合うんです。

こちらのドメーヌのワインで、kurkku kitchenのメニューにもあるのは「2000 Grand Cru(グラン クリュ)」。少しの香ばしさとギュッと凝縮した果実味とミネラルがそれぞれ主張しているのにどれをも邪魔しない、本当によけいなものが入っていないクリアで目の覚めるような1本です。このワインがおいしいのは、もちろん言うまでもありませんが、「1985 Ambonnay(アンボネイ)」の味わいは衝撃的! 夕日を浴びた収穫期の黄金に輝いた麦畑を思わせる色と香り、この上なく香ばしく程よい酸とミネラルを感じながら飲み込んだ瞬間にボワッと戻ってくる果実香のボリュームのすごさ! 人生でなかなかこんな経験をできるものではありません。もちろん生産量も少なく、現地でなければ味わえないので(読者の方々、ごめんなさい!)、すでに来た甲斐あった感満載です。こんな素晴らしいChampagneばかり、80年代〜00年代前半までのものを、延べ30種類ほど、さらっと試飲させて頂きました。味わっただけでも、そこに注いだ時間と手間と情熱が熱く伝わってきます。

自然派のワイン生産者さんというのは余計なものを添加しません。ワインにはいろんな成分が入っているので時々思わぬ成分の結合で発酵が始まってしまい、ワインが濁るというリスクと常に背中合わせです。普通の生産者さん達はそれを酸化防止剤を入れる事で人工的におさえ、思うようにワインをコントロールしますが、自然派はリスクを覚悟でそれをしないのです。

そして普通の生産者さんと決定的に違うところがもうひとつ。 ワインというのは、果汁の中の糖分と酵母が結びついて炭酸ガスとアルコールに変わることによってできるもの。シャンパーニュは瓶詰めしてから糖分と酵母を加えてもう一度発酵をさせ、その炭酸ガスを瓶内にとじこめてできるものなのですが、このドメーヌでは最初の一次発酵はもちろん、瓶内での二次発酵も葡萄に付い た天然の酵母で行っています。糖分は一次発酵で残った量をはかり、どうしても必要な最小限の糖分を、加えているそうです。 添加物を否めないシャンパーニュなので、「それは自然派ではない!」と言ってしまう人もいます。でもここまでやったら十分ですよね、と私は思います。みなさんはどう思います......?

とても手がかかる手法を実行しているため、畑は非常に小規模で9人いる子供たちと共にやっているそうです。見渡すと、色付きはじめたピノ・ノワール(※葡萄の品種)の畑。枝を高く伸ばしているのは光合成させるため&土が乾きすぎないようにするためだとか。この日は前日に雨が降ったためすぐに切らなければ、という状況でした。すでに水を含みすぎて割れてしまった実もあり、それに伴い病気も発生してしまったそう......。2010年の葡萄の出来はまだまだどうなるか分かりません!

しかし寒かったー。シャンパーニュ地方はフランスでもかなり北の方なのでこの日の気温はおそらく15度くらい。そんな中、私達のBMWを見えなくなるまで 見送ってくれたジャックさん。深くあたたかい人柄はワインに反映されています。これからもおいしいものを造り続けて下さい!


kurkku kitchenで味わえるこのドメーヌのワイン
Reserve Grand Cru(レゼルヴ グラン クリュ)

naturalwine_01.jpg ■造り手
 Andre Beaufort(アンドレボフォール)
■産地
 シャンパーニュ地方 モンターニュ・ド・ランス地区
■ヴィンテージ
 2000
■品種
 ピノ・ノワール80%、シャルドネ20%
■kurkku価格
 20000円(ボトルでの注文のみ)

naturalwine_garan.jpg このワインに合う料理
「チキンのガランティーヌ」
詳しい説明はこちらを!



疲れを癒してくれるようなワイン「Patience(パションス)」の造り手
自然派のなかでも"こだわり派"のドメーヌ、Christian Ducroux(クリスチャン デュクリュー)

naturalwine_long2.jpg シャンパーニュ地方からFuisse(フュイッセ)を経由して、Beaujolais(ボージョレー)地方へ到着!
次に訪れたドメーヌはChristian Ducroux(クリスチャン・デュクリュー)。到着したその時、オーナーのデュクリューさんはちょうど馬と一緒に畑から戻ったところでした。

畑はやはり耕すことが大事。土の中に空気を入れて微生物の活動を助けるのだそうです。ここでは写真のように工具をつけた馬に畑を歩かせ、畑を耕しています。トラクターを使うとそのトラクターの重みで土が固くなってしまうので、いい葡萄ができるいい土の状態を保つために馬を使う自然派の生産者さんが多いのです。
そしてそんな畑にはたいてい葡萄の木が並ぶ畝のいちばん端にバラが植えられています。これには2つの理由があります。まず1つ目。バラにはトゲがあるため馬がちゃんと避けるので、耕しながら折り返すときに端にあるぶどうの木を傷付けてしまう事がないのです。2つ目として、バラには人を寄せつけない高貴で強いキレイさがありますが、実は病気にはとても弱く、畑に病気が発生したときに葡萄の木より先に症状が出るのです。そうすると被害の拡大を防ぐことができるというわけです。こうして機械や薬に頼りすぎず、馬やバラなど、自然の力を借りて畑を守る工夫をしているんですね!

こちらのワイン造りの特徴としては、他の自然派生産者さんと同じようにセミマセラシオンという炭酸ガスと葡萄を密閉して発酵させる方法で行うのですが、こちらは炭酸ガスを加えません。まず小さいプレス機で少量の葡萄をプレス。天然酵母で自然発酵が始まるので、その時に発生する炭酸ガスを使って他のワインを発酵させるというのです。これは大変手のかかることなのでここまでやっている人はまずいないと思います。そのあとに、大きいプレス機を使いますが、こちらは150年ものだそう。エコですね〜。

葡萄を尊重する為、炭酸ガスを加えませんが、温度コントロールもしません。本当に葡萄だけでワインを造っているのです。セミマセラシオンで浮いた実をプレスしますが、そのプレスした液体と最初に出た液体をブレンドし、プレス液の最後がkurkku kitchenで使っている「Patience(パションス)」というワインになります。この「Patience」にガスが残る事があり、その場合はチッ 素を加え、結合させると上に上がるのでそうしてガスを抜きます。ココが一番科学的だと言っていました。

'07、'08、'09、'10と雨が多く難しい年が続いているそうです。それでも今kurkku kitchenで使っている'「2007 Patience(パションス)」は私のお気に入り。とても疲れたとき、ため息まじりに「はー、ワイン飲みたい」という時のために、個人買いしています。その話をきいたデュクリューは、「色や味だけではないワインの裏にあるものが大事なのだ」と静かに語ってくれました。フランス人はよく喋るなーという印象 の中、デュクリューは本当に寡黙で聞いた事に対して答えるだけという雰囲気の人だったので、その言葉がやけに印象的でした。

カーヴを出たところで奥様が何やら忙しそうに働いていますが、ここでは小麦も栽培していて、自前の酵母でパンを製造、Marche(マルシェ)で販売をしているそうです。パンを焼くでっかいオーブンはカーヴの中に。将来的には鶏を200羽くらい飼って卵を売り、その鶏に畑の虫を食べさせ耕しふんを肥料にし、と循環型の家畜&農業をやりたいそう。

外にはクラシック音楽が流れています。Beafort(ボフォール)のドメーヌでもそうでしたが、やはりいい音楽を聞かせるのは人間や植物などの有機物にはいい働きがあるのでしょうか?

自然派の生産者さん達はみな、本当に必要なものがちゃんとあるという豊かな暮らしをしています。多すぎるともぜいたくとも違う豊か。そこにさらに精神的なあるいは神がかり的な何かを感じるドメーヌのクリスチャン デュクリュー。帰るときに、お化け屋敷から出たような感覚を少し覚えたのは私だけでしょうか? でも、振り返ったときに見た、デュクリューがまた馬と犬と一緒に畑に向かって行く姿はとっても楽しそうに見えました。

kurkku kitchenで味わえるこのドメーヌのワイン
Patience(パションス)

naturalwine_03.jpg ■造り手
 Christian Ducroux(クリスチャン デュクリュー)
■産地
 南ブルゴーニュ地方 ボージョレ地区
■ヴィンテージ
 2007
■品種
 ガメイ100%
■kurkku価格
 5500円(ボトルでの注文のみ)

naturalwine_marine.jpg このワインに合う料理
「炭火焼野菜のマリネ」
詳しい説明はこちらを!


(*1)ドメーヌ
ブルゴーニュ地方に於けるブドウを栽培してワインを造る、ワインの醸造所のこと。ボルドー地方ではシャトーと言われる。地方ごとの文化の違いで、シャトーは比較的大人数で組織されていることが多く、ドメーヌは個人や少人数で運営されていることが多い。

(*2)ノンミレジメ
ノンミレジメとは、様々な年のワインをブレンドして作ってあり、ラベルに葡萄の収穫年(ヴィンテージ)の記載がないワインのこと

(*3)ヴィンテージ
ヴィンテージとは、ワインにおいては、使っている葡萄の収穫年をあらわす。


<文・写真/木村未穂(kurkku kitchen)、構成/編集部>
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