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自然派ワインを追って〜フランス・ドメーヌ巡りの旅 Ⅱ〜

data : 2010.10.12category : 自然派ワイン
愛に溢れたワイン、それが自然派ワイン
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自然に逆らわない、余計な手は加えない。
そんな、簡単なようで実はとても手がかかり大変な手法で造られているのが自然派ワイン。その味わいは美味しく、優しく身体に染み込みます。

「私を癒してくれるワインはどこかしら?」

そんなつぶやきとともに、フランスへと旅立ったソムリエ、木村さんによる、自然派ワイン・ドメーヌ巡りレポートの後編です!





ベレー帽をかぶったカエルがユーモラスな「Beret Frog(ベレ・フロッグ)」の造り手
映画の舞台にもなったドメーヌ、「Ch La Canorgue(シャトー ラ カノルグ)」


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三日目の朝は晴天でまさにプロヴァンス日和!
更に南下してPACA(Provence-Alpes-Côte d'Azur/プロヴァンス アルプ コートダジュール)を、目指します! 今まで見てきた風景とちょっと違い、この辺りは屋根がごつごつしていて南仏感たっぷりです。

ローヌ地方に位置するCh La Canorgue(シャトー・ラ・カノルグ)は映画「プロヴァンスからの贈り物」の舞台となったシャトーでもあり、ワイン好きの間では有名どころ。テンションがあがります! 
場所はプロヴァンス地方とローヌ地方の間、そしてこちらは300年以上もの長い間、一族が守っている由緒あるシャトーなのです。
まずは当主であるジャンピエールと、その娘さんナタリーとご挨拶。あいさつもそこそこにジャンピエールは忙しいようでそこでお別れ。なんだか撮影部隊がやってきて写真をたくさん撮られていらっしゃいました。さすが有名どころは忙しい!

シャトーはナタリーが案内してくれました。
まずは有名な水路から。ローマとモンペリエの間に独自に作った水路です。こちらはローマ時代に造られてから、今に至って健在です。4年前に水量が少ない年があり、水道を引くべきか迷ったそうですが思いとどまり、少ない時はあまり使わないよう水質を常にチェックしながら今もこの水路だけで水をまかなっていま す。

45haもの広大な範囲の畑を1974年からBioにしたそうです。これはフランスでもかなり早い方です。映画の撮影場所としても使われたこの畑にはシラー(※葡萄の品種)が植えられています。

敷地内にある建物は17世紀に建てられたもの。昔はここでシルクの織物を作り、パリで売っていたそう。現在はこの中でワインの醸造、熟成を行っています。建物の横の坂 を上ると建物の屋根の上にあがれるようになっていて、摘んだ葡萄をトラックから屋根にある穴に落とすと、建物内のタンクに落ちる仕組みになっていました。 これは考え方としては自然派ならでは。「重力に逆らう事なく」です!
自然に逆らわない手法がもうひとつ。白葡萄を収穫すると、冷やすという作業が必要になるのですが、早朝に収穫する事で、冷えた状態のまま作業ができるように工夫しています。朝4時〜6時くらいまでの作業です。
とてもシンプルですが、手間をかけないとできないことです。
ここでは樽についてもこだわりがあります。ワインに樽が持つ独特の木のような香りをつけるという事にはあまり興味はなく、ワインの味を丸くするために使っ ています。そのため、樽の素材、焼き方、作り方、作る人を厳選しているそう。同じワインでも樽が違うと全く別のワインになるのです。

こちらは人気のシャトーということもあり、自然派の生産者さんとしては景気がいいです。(自然派は、手間がかかるのであまり効率的でなく、小規模に経営しているところが多いのです......。)先ほどのカーヴも小さくてやりづらいということで今年の12月に改装をするそうですが、建築家と機能面+外観を 相談ている最中なのだそう。

そのカーヴの中で、怖いお話を聞きました。
葡萄が発酵すると糖分と酵母が結びついてアルコールと炭酸ガスが発生します。収穫後のカーヴは炭酸ガスが充満するのでその炭酸ガスでの事故が実は多く、死亡事故もあるそうなのです。
ジャンピエールも病気で炭酸ガスを吸えないらしく、今は外の仕事をしているそうです。そう、命がけの仕事なんです!!

ここでは10種類ほど試飲させていただきました。ナタリーがデザインしているというエチケット(※ワインのラベル)はどれもかわいく人柄が出ているようです。そのなかでもBulle(泡)は今まで飲んだ事のない味わいと、斬新なエチケット。
ぜひkurkku kitchenで使いたい!と思いましたが、人気で品薄なため、日本には入っていないものがほとんど。世界中で人気のあるこのシャトーは造ったワインの三分の一が店頭で売れてしまうそうです。
いまではすっかり観光スポットにもなっていて、シャトーではなく自宅の入り口からも観光客が入ってきてしまう事が多々あり、「ここは家です。入らないでください」と3カ国語で記した看板を置いていました。

そんな人気シャトーの造る自然派ワインで、kurkkuにも仕入れているのが「Beret Frog(ベレ・フロッグ)」。
ユーモラスなカエルのラベルが目印です。こちらはkurkkuのカフェ、mother kurkkuで飲めます。 シラー(※葡萄の品種)を主体にした濃い〜お味ですがスッと入ってくる喉越しはさすが自然派。ラベルのかわいさもあって1番の売れ筋ワイン。あまりにも売 れすぎて業者の方が偵察にいらっしゃったほど。
このワインのファンも多く、mother kurkkuにも、このワインお目当てのお客様がたくさんいらっしゃいます。そのお客様達が世界各国で見つけてきてくださったたくさんのカエルグッズがmotherにはたくさん置いてあるんですよ。皆さんも、ぜひお試しを!



kurkku kitchenで味わえるこのドメーヌのワイン
Beret Frog(ベレ・フロッグ)

naturalwine_05.jpg ■造り手
 Ch La Canorgue(シャトー・ラ・カノルグ)
■産地
 ローヌ地方
■ヴィンテージ
 2007
■品種
 シラー80%、グルナッシュ15%、カベルネ・ソーヴィニヨン5%
■kurkku価格
 5500円(ボトル) 800円(グラス)

naturalwine_supea.jpg このワインに合う料理
「豚のスペアリブ 黒胡椒焼き」
詳しい説明はこちらを!



甘さ×スッキリを実現したワイン「Rasteau VDN(ラストー ヴァンドゥーナチュレル)」の造り手
「穴」という意味の名前を持つドメーヌ、「Trapadis(トラパディス)


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次に訪れたのは、同じくローヌ地方のTrapadis(トラパディス)。

Trapadis(トラパディス)という単語の意味は「穴」。その理由は、なんとカーヴを手で掘って作ったというこのドメーヌの歴史からきています。 その偉業(?)を忘れないよう、「穴」という名前をつけたそう。96年から始め、32haの畑をビオに切り替えて3年め。もうすぐ認証がとれるとのこと。

2010年は水不足により養分がみんな葉にいってしまい、実が大きくならなかったそうです。他の生産者さん達も口をそろえて言いますが、今年はワインにとって難しい年になりそうです。

そして生産者さんが皆さん口を揃えて言う事がもうひとつ。「土を耕す事は大事だ」ということ。まず、光と空気を土に入れることで、土に良い働きをしてくれるバクテリアの動きをよくすることができます。また、深く耕し根を通すことで、土の深い部分にある養分も葉と実に届くようにできるとのこと。

そうしてじっくり育てた葡萄の収穫。この、タイミングがまた大切! 葡萄のアロマ(香り)が熟しつつ、熟しすぎてしまわないぎりぎりのタイミングを見極めて収穫するのだそう。過度に熟して葡萄の糖度があがってしまうと、ワインに良くないそう。葡萄にはリンゴ酸と酒石酸という有機酸が含まれているのですが、糖度があがり過ぎるとリンゴ酸がなくなり、酒石酸が凝縮してしまうからだそうです。

ココで紹介してもらったワインの中で、面白かったのが「'07 Harys」。このワインの名前、普通に「ハリーズ」と読めるのですが、これは葡萄の品種である「Syrah(シラー)」を逆から読ませたもの。このワインはフラ ンスワイン法のVin de Pay(ヴァン・ド・ペイ/地方ワイン)というカテゴリーに入るのですが、いろいろな決まりごとにより葡萄の品種をラベルに表示できないため、ワインの名前にこっそり品種名を忍ばせたという遊び心のあるものです。

このドメーヌのものでkurkku kitchenのメニューにもあるのが、「'08 Rasteau Vin Doux Naturel(ラストー ヴァンドゥーナチュレル)」。Vin Doux Naturel(ヴァンドゥーナチュレル)というのは葡萄の糖分を残すために発酵途中で強いアルコールを添加し発酵を止めるという製法。このやり方は、甘みのあるしっかりとした味わいだけど、すっきりとした後味のワインを生み出します。
その強いアルコールというのも同じ畑のワインからマールというのブランデーを作り、蒸留を2回繰り返し、アルコール度数を96°まで高めたものを使っています。それがこのワインのナチュラルな味の大きな要素になっているのでした。
kurkku kitchenで以前からこのワインをお店に出していますが、今回ドメーヌを見学してワイン造りの過程を見せてもらって改めてこの自然なおいしさの理由がよくわかりました!



kurkku kitchenで味わえるこのドメーヌのワイン
Rasteau VDN(ラストー ヴァンドゥーナチュレル)

naturalwine_07.jpg ■造り手
 Trapadis(トラパディス)
■産地
 ローヌ地方
■ヴィンテージ
 2007
■品種
 グルナッシュ90%、カリニャン10%
■kurkku価格
 1500円(グラスのみ)

naturalwine_choko.jpg このワインに合う料理
「チョコレートのテリーヌ」
詳しい説明はこちらを!


ドメーヌ巡りを終えて......。

いやーそれにしても、フランス人はよくしゃべる!
たくさんの良い文化が世界に広がってゆくのにも、こういった人間性って深く関与していますよね。今回のフランスドメーヌ巡りでは、本当にいろんな事を学ばせていただき、みなさまに感謝です。

日本の素晴らしい文化も残していけたらいいのだけど日本人はDNAが内向的なんですよね。私はたまたまワインの世界にのめり込んでしまったので日本のワイン文化の普及に携わり、なお日本の素晴らしい生産者さんたちの応援もして行きたいと思います。

自然派ワインを造っている方々はご自身も食材は生産者さんの顔が見えるものしか買わないという方が多かったですし、畑って基本、田舎なの で自給自足みたいな生活だったりなので、みなさんおおらかだし、豊かです。家族仲良く暮らし、必要なものがあり、無駄というにはもったいないような広い庭 にお手製のツリーハウスやおいしそうなハーブがたくさん植えられて、普通で素敵な生活がそこにはありました。
金銭的には、それほど裕福だとは思い ません(ボルドーなど商業的に事業を展開しているところは別ですが......)。日本の農家さんとさほど変わらないと思います。ただ日本の農家さんは安く買いた たかれてしまったり、いろいろとかかる税金が高すぎてやめてしまう方もいて、農家を続けていくための条件があまり良くない事はたしか。

フランスのワイン生産者さんたちは、(一部を除いて)自身で値付けをします。手間をかけて造っている割に、店頭で販売している価格などを見ると安いです。

「苦しいけど、楽しい。」
今私の中に強くある言葉です。

楽しいと楽はちがいます。何もしないでテレビを見ているのは楽です。言いたい事をすべて言ってしまう事も楽です。本当に自分が目指すところに行くためには苦しさをともない、努力が必要ですし、悩みますよね。私は最近になってやっとその苦しみが楽しくなってきました。
日本の情報や物の多さは目を見張るほど膨大です。それはとても大事だし便利です。でもそこに惑わされて戸惑うこともあるはずです。そんなとき、ワインが好きなあなたならぜひ生産者さんをたずねる事をオススメします。

そして今後は私の尊敬する日本の生産者さんをご紹介していきたいと思っています。
乞うご期待!!

<文・写真/木村未穂(kurkku kitchen)、構成/編集部>

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