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「これからのエネルギーについて僕らができること」

緊急会議 鎌仲ひとみ×Candle JUNE×小林武史
「これからのエネルギーについて僕らができること」

3月15日、テレビが不穏なニュースを流し続ける最中、鎌仲ひとみ、Candle JUNE、小林武史の3名が急遽集まった。気になるのは、原発のこと。そしてこれからのエネルギー問題のこと。ダメージをターニングポイントに変えられるよう、私たちにできること、私たちがすべきことはなんだろう? 新たに始まりつつあるプロジェクトの、そのスタートとなった緊急会議の内容をお届けします。

STOP(ストップ)ではなく、SHIFT(シフト)する

自分たちが使うエネルギーを選択するということ

小林武史(以下、小林) ここ数日の出来事をうけて僕は鎌仲さんと話をするべきだと思って、きのう声をかけたら今日来てくれた(笑)よかった、すぐに話せて。
鎌仲さんはこれまでご自身が監督する映画などで原発の問題を訴え続けてきた方だけれども、いままさに原発は国の問題として注目されています。今まで日本人はエネルギーのあり方を、現状で当たり前だと思っていたところがあると思う。今回はそこを見直すきっかけになると思ったんです。日本人はなんだかんだ言っても「原発が恐ろしいことになる」可能性というのを、薄々、感じていたと思う。なのになぜ、僕らがそれを使うことになっているのか、もしくは他の選択肢があるのかないのかなど、いろいろと情報が開示されていないことが多いと思うんですよ、今の日本は。そのあたりのお話をしたくて。

鎌仲ひとみ(以下、鎌仲) そうですね。まず、今までの日本では、どうして原発でなければならないのかということに関して「あなたたちは知らなくていいし、考えなくていい」という感じだったんです。「専門家に任せておきなさいよ!」みたいな。

小林 そうそうそう。つまり「我々がちゃんと安定供給を考えているんだからこれでいいんだよ」ということでね。原発以外のエネルギーの話をしても「それは、安定供給という意味では......」という理由で却下されてしまう流れがあった。

鎌仲 そもそも"安定供給"が第一という考え方からして、本当にそこなんだっけ?と。私たち一般人も参加して、一緒に議論して、どんなエネルギーを使うのか選択する、という方向にしたほうがいいよねというのが私の映画のメッセージなんですけれど。

小林  僕も『六ヶ所村ラプソディー』と『ミツバチの羽音と地球の回転』の二作品を拝見しました。二作品とも僕らの今の問題点をものすごく分かりやすく説明しているので、多くの人に観てもらえるといいなと思います。単なる情報収集ではなくて、知識としての情報を頭に入れるプロセスとしてすごくいいなと。
『六ヶ所村〜』は、例えたらブルースというか、自分の生まれ育った町に得体のしれないものがいるという、ズーンと鈍い通奏低音を感じるストーリーだった。『ミツバチの~』はエンタテインメントというと変なんですが、善悪がくっきりと描かれていて、みんなが感情移入しやすくなっているよね。

鎌仲 ちょっとフラットにしておかないと冷静な情報にならないと思い『六ヶ所村~』は作ったのですが、『ミツバチの~』の時には楽しく変えていく方法もあるんだよということをみなさんに知って欲しかったんです。

小林 なるほどね。

鎌仲 そういった面ではCandle JUNEさんにもすごくサポートしてもらってるんです。六ヶ所村の運動として、「6(シックス)ペーパー」というフリーペーパーを作ってもらったりと。

Candle JUNE(以下、JUNE) ロックミュージシャンにしても多くの人が「反原発」という運動を昔からやってきていると思うんです。自分はサイケデリックとかヒッピースタイルの人たちは最先端だと思ってるんですけれど、でも、どこか社会から逃避しているような感じのニュアンスで取られているところがあって、それがどんな音楽イベントでもずっと嫌だったんです。原発反対にしても、自己満足に近い、「敵は大きいものだから、そこに対して個人で戦うぜ」というスタイルには自分はしたくなかった。

『六ヶ所村ラプソディー』の中では、電力会社の人も、原発に反対している人も「子どものために」と同じことを言っているんです。それを見て、お互いを敵視するのではなくて、一緒に電力のまかない方や違う電力を選択する方向を考えていけたらと思ったんです。
電力会社も原発以外のエネルギーの開発もしているのに、これまでの国策もあって、原発路線が主流なんだという、その思い込みから逃れないのが現状。反対するというよりは、シフトを促すべきなんです。

小林 そうだよね。結局はエネルギーという必要なものを作り出さなければいけなくて、作ったそれはシェアするわけだから。

JUNE すべて切り替えて、ハイリスクなものにチャレンジしなくてもいいんです。例えば「まずは渋谷区から」など、各地域ごとに、太陽エネルギーや地面を人が歩くだけで発電するような仕組みに取り組んでみるとか。人間が動いているから電力が生み出されたりするような、少しずつエネルギーを生み出して使うことをデザイナーや影響力がある人が提案して見せていけたらいいと思うんです。まずは東京が変わって、そのスタイルを他がマネしていけばいい。「ストップ六ヶ所」ではなくて「チェンジ東京」を掲げて。

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お互いがハッピーになる方向に

小林 今回のように、みんなが真剣に節電しなければならない状況というのは、逆に言うと「こういうことって起こり得るんだ」と考えるきっかけになりますよね。「電力に関しては、絶対的な安定供給など不可能なんだ」ということだったり、「やってみたら意外に我慢できるんだ」ということだったりね。「みんなで協力しなければ」ということで、国民が久々にシンパシーを感じた、なんてこともあるかもしれない。「(エネルギーを)安定供給しますよ、だから心配しないで」ということではなくて、「供給の面では多少不安定でも、これは安全なエネルギーです」という方がいいかもしれない、ということは、今までは誰も示してくれなかったんです、この国や制度は。
今回を機に、それを僕らが選択できるようにするにはどうすればいいのかということに、今こそ一歩も二歩も踏み込んでいかなければならないと思う。

鎌仲 情報をもらっているだけではダメなんですよね。それはマスコミも同じ。向こう(原発)が出してきた情報をそのままマスコミが流してしまえば、それ以上の情報を拾えなくなってしまう。そうすると偏った情報だけが一般的な考えの元になってしまうこともある。テレビを観て「放射能は漏れているが人体に影響はない」と言われたら、そのまま信じてしまうようなね。

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小林 良くも悪くも、日本人には昔から「物事は御上が決めて」みたいなところがあると思う。悪いことではないのだけれどね、和を以て、みたいな考え方は。現状として強烈なリーダーシップでひっぱっていってくれるような存在はいないし、僕らも実はそういう人を望んではいないのかもしれないし。

鎌仲 結局そういう人材はいないから、望んでも無駄なんです。でも『ミツバチの羽音と地球の回転』のように、一人ひとりの羽音が合わさることによって大きな音になっていくこともある。だから、小さな力を合わせて大きなものを動かす力になるような仕組みさえ作れれば、みんなそこに参加すると思うんです。

JUNE 原発を推進した人たちを「あなたたちは間違えてた」と責めるのではなくて、「電力会社の人たちだって、辛かったでしょう?」と言いたいんです。今までは、この国に安定した電力供給を、という膨大なプレッシャーを国から与えられて、戦うような、どんどん攻め落としていくような勢いで、原発を作らなければいけなかった。それはきっと辛かったでしょう?と。もうこの地震をきっかけにシフトしようよ、今なら他業種の人が集まってくるから、情報開示してもらって一緒に考えようよ、というふうになれると、物事はあっという間に進むのではないかと思うんです。

鎌仲 今日、山口県の上関原子力発電所の建設工事を一時中断するという発表がされました。そのとき、ニュースのコメンテーターが「これはすごくシンボリックだ。今のこの上関のニュースで、日本のエネルギー政策が確実に変わるということを予感させる」ということを言ったんですよね。

小林 ドイツの首相も、三ヶ月間、原発の稼働を一旦停止して原発の使用に関して議論するそうですね。

鎌仲 原発を建てようと思ったけどこれを機に中止して、より環境的なプロジェクトに変換してくというふうに上関を変えられたらいいなと思うんです。ウィン・ウィンというか、どっちもハッピーになれる道があったじゃないか、という方向をみんなで作っていけたらいいなと思ってるんですけどね。

小林 当たり前だと思っていたエネルギーのあり方を見直す、という意味で、今回はいいきっかけになると思う。こんな騒ぎを、大半の人は予想もしていなかったわけだからね。

鎌仲 今回の震災の影響でも、いきなりガソリンスタンドに行列してしまいますよね? 石油だけに頼ってるということもすごく大きいんです。スウェーデンでは既に人間の糞尿や生ごみから作ったバイオガスを燃料にした車などが走っている。日本のメーカーはそういう車を作ってこようとしなかった。ただただガソリン車をつくってきたんです。

小林 安定している生産と消費のラインがあると、みんなそこにいっちゃうんですよね。

鎌仲 それだけでは将来的に、持続可能ではないんだっていう、そういう知見があって、スウェーデンは準備を進めているんですよね。日本もそういう未知に踏み出せたら、いま死にそうになっている山とか森とか、住んでる野生動物にとっても、福音になると思うんです。

ポジティブな危機感を持つ

鎌仲 今回は、ただ「原発施設があると不安だ」というだけではなくて、とうとう実害が出てしまった。現実的に、放射能がバラまかれてしまったわけです。これからは、それを反省して繰り返さないためにも、もっとポジティブに「こういう方法もあるじゃないか」という呼びかけ方をしていくべきだと思うんですね。

小林 そうだね。現に今は起きてしまっていることに対応することがいちばんなわけで。地震は天災だけれども、原発は人間が作ったものだからね。この二つの被害は全然、意味合いが違うと思うんです。今、東京にいても放射能に対する危機感というのはひしひしと感じるわけで。現地の、被災者の方々の放射能に対しての恐怖といったら凄まじいものがあると思う。

鎌仲 一方で、目に見えない放射能というものに対して危機感が足りない人も多い。マスコミが「この程度なら人体に影響はない」といったらそれを鵜呑みにしてしまうのではなくて、「本当にそうかな?」「やっておいた方がいいことがあるんじゃないかな」と疑ってみてほしいんです。
そして、危機感を持っている人が欲しいのは具体的な情報だと思うんですね。絶対マスクをしなさいとか、雨にあたっちゃいけないとか、使い捨ての雨合羽を使って雨に濡れた後はそれもビニール袋にいれて放射線物質として処理しなきゃいけないとか。
口の中にさえいれなければ、あと、鼻から吸い込んだりしなければ、そんなにびくびくすることないんです。知識を持ってきちんと向きあえば被爆は防げるということを教えることが大切だと思う。

特に子供は自分で判断ができないのだから、母親が守ってあげなければいけないわけです。 20キロ圏内にいる人たちがマスクもしていないなどという恐ろしい状況はなくさなければ。

JUNE  今現在も、多くの原発反対派の人たちは、いろいろと情報を出しているんだけれど、危機感を持った慎重な意見ほど、一般の人たちには「そこまで必要ないのでは」と思われて、悪意のチェーンメールと同じような受け取られ方をしてしまうこともある。あまりにも政府や一般的なニュースが言っていることとのギャップがあるからです。この問題を解決するためにも、一人ひとりの知識を高めておくことが必要だと思っています。まとめて情報を確認できるサイトなどが必要ですよね。できることはあるかもしれない。

今が新たなスタート地点

JUNE 原発には地方にとっての町おこしや雇用の確保という側面もあります。では、原発という選択をしなかったら、どうやって町おこししたらいいんだ?という時に、たとえば音楽のフェスを誘致しますよ、などの代案というか特典があるだけで、みなさんの受け入れる気持ちも変わってくるんじゃないかと。農や食が一体化した生活のような、継続性のあるかたちづくりにアートやデザインを絡ませているap bankみたいなところが「やるよ!」と言ってくれたら。そこに企業の人たちが入ってきてくれれば、一般の人たちにも訴えることができると思うんです。

小林 あるかもね。エネルギー問題というのはすごくむずかしい問題なんです。イタチごっこというか。どちらがいいかとか、こうすればいいなんて簡単に言えない。だからまず、情報を共有して、みんなで考える場を作るべきなんだよね。

鎌仲 原発を導入してから、原発だけを優遇してきて、原発をどんどん建ててきた。そういう国の政策が自然エネルギーを増やすということを阻んできた。
今回のことを、持続可能なエネルギーにシフトするという転換点にしたい。

JUNE 電力会社さん、いままでありがとう、安定供給してくれてありがとう、これからは一緒に変わろうっていう気持ちでね。

小林 福島の原発だって、東京の人たちのための電気、そのために動かしていた原発ですからね。あそこが支えてくれていたのは東京の、都心の人たちの生活だから。遠いところで起こった出来事、ではないのだよね。

鎌仲 なんていうか、恩返しをしなければいけませんよね。被災してしまった人たちにも、これから未来の子供たちにも、東京にいる私たちからLOVEを贈らないと、申し訳がたたないですよね。

小林 結論めいたことを言うようですけど、今、これだけのことが起こっているんだから、僕らはここで気付かないといけないよね。その気持ちが今、新たに確認できました。僕が考えているのは、とにかくエネルギーに関して考える場を作っていきたいということ。一緒にやりましょう! 今日は、そのスタートということで。これから、どうぞよろしくお願いします。

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鎌仲ひとみ

ドキュメンタリー映画監督、演出家。
早稲田大学卒業と同時にフリーの助監督としてドキュメンタリー制作の現場へ。90年最初の作品「スエチャおじさん」を監督、同年文化庁の助成を受けてカナダ国立映画制作所へ。 93年からNYのペーパータイガーに参加してメディア・アクティビスト活動。95年帰国以来、フリーの映像作家としてテレビ、映画の監督をつとめる。主に NHKで医療、経済、環境をテーマにした番組を多数制作。2003年にドキュメンタリー映画「ヒバクシャー世界の終わりに」を監督。国内外で数々の賞を受賞し、全国400ヶ所で上映。2006年「六ヶ所村ラプソディー」、2010年「ミツバチの羽音と地球の回転」では原発の問題に取り組んでいる。明治大学、国際基督教大学、津田塾などで非常勤講師もつとめる。

「六ヶ所村ラプソディー」
http://rokkasho-rhapsody.com/

「ミツバチの羽音と地球の回転」
http://888earth.net/

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Candle JUNE

キャンドル アーティスト
1994年よりキャンドルの制作を始める。ルイ・ヴィトンやPRADAなどのレセプションパーティのデコレーションや、様々なファッションショー、ap bank fesなどの野外音楽フェスなどでアートワークを行う。2001年に広島で「平和の火」を灯したのを起点に、「Candle Odyssey」と称する、N.Y.のグラウンドゼロやアフガニスタンなど、争いのあった地を巡る旅に出る。広島、長崎など、毎年国内を旅し、2005年からは終戦記念日に中国チチハルにて火を灯している。
六ヶ所村の活動をサポートするフリーペーパー「6ペーパー」を作成するなど、幅広く活躍している。

オフィシャルホームページ
http://www.candlejune.jp/

6ペーパー
http://www.eldnacs.jp/freepaper/freepaper6.html

(撮影・取材・文/編集部)



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