HOME > FEATURE > 緊急企画「LOVE CHECK/energy - 今だからこそ、のエネルギーのこと-」 > 緊急会議 田中優×小林武史 (1) 「今だからこそできる話がある」
緊急会議の第二弾は小林武史×田中優。早くからずっと「脱原発」を訴えてきた田中さんは、今、何を思うのか。これまで何度も議論を重ねてきた小林×田中の二人が、改めてこの国の置かれた状況を確認しつつ、動き出すべき方向についてを話し合った。
田中 しかしまさか、こんな事態になるとは思わなかったね。
小林 本当に。かれこれ10年くらい経っていると思うのだけれど、ap bankを作ろうと動き出した頃から優さんがおっしゃっていた電力会社の問題が、今、すべて露呈してますよね。
田中 ほんと。結局、露呈しちゃった。
小林
今になってヒステリックに騒ぎ立てる人もいるけれど、ここ数日の優さんの執筆や発言を拝見しているとすごく冷静じゃないですか。予測し得る出来事だったから、というわけですよね。そもそも優さんがエネルギー問題について行動を始めたのも、チェルノブイリ事故がきっかけだったということですが、今はどんな気持ちなんですか?
田中
まず事故が起こったこと自体は、この無責任な人達の責任を問いたいって気持ちだよね。だって僕たちはあれほど「こういうふうになるよ、こんなことが起こり得るよ」と伝えていたのにそれを無視し続けた結果だから。
だけど一方で、多くの人々は全然そういう論争があることすら知らなかった。だから今のこの現状に、非常にヒステリックになってしまっているところもある。それが怖いんだよね。パニックになりかけているから。今日も僕のところには、メールを1通送ると、10通返ってくる勢いで連絡がきている。永遠に追いつかないんじゃないかと思いながら、とにかく片っ端から、いい加減なデータや煽るような論調があると「それは間違っている!」と、すぐにメールを返してさ。変な方向に動きかけてるところの芽を摘むということを一日中やっていました。
小林
今回は東京電力でこういう問題が起きたけれど、「日本の原発はしっかりしていたからこの程度で済んだ」という論調、そして既にアメリカなども言い出しているけれど「今回の事に学んで更なるいい原発を作れば、より正しい道が待っています」みたいな論調が、既に出てきているじゃないですか。
これはやっぱり、"経済"というものの礎の上に立っている原発はすごいものだと思っている立場からの意見だと思うし。でもこの意見で進むと、どこまでいっても繰り返しになってしまうのではないかと。一個爆発しても「一個で済んで良かった。危なかった。」で済んじゃうみたいな話にもなりかねない。
田中
そこがまさにせめぎ合いのところだと思うんです。そこから我々の望んでいる方向に動かせるか、要は今回のことをエネルギー問題のターニングポイントにできるかどうかの、まさに局面に立っていると思うんですよ。これは日本だけの問題では全然なくなっている。ドイツのルフトハンザ航空は成田空港にもう降りないのを知っている?
小林
え! そうなんですか?
田中
名古屋と大阪にしか着陸しないの。なんとドイツでは日本から帰った人は全員、放射線のチェックを受けられるんだって。
小林
外資系企業などもみんな、「日本を離れろ」という動きになっているよね。外国人こそ、今の日本は本当にTerrible(恐ろしい)だと言っていますからね。
田中
それくらい、海外にも注目され、影響を及ぼしている。この状況を契機にできるかどうかがすごく重要だと思う。
小林
そうですね。僕としては、日本はエネルギーに対してのデモクラシーで言うと初級、子どもレベルだったと思うんですよ。
田中
そうだね。その分野に関しては言ってみれば独裁レベルだからね。ファシズム体制。
小林
あるところでエネルギーを享受するようになって「これは国が与えてくれるもの」ということで、バブバブというか。原子力ってなんだか怖いと言うけれど、でも仕方ないから飲み込む、という矛盾した体制を続けているから。
田中
うんうん。
小林
次のステップに行くためには、いきなり全部を変えなくてもいいけれど、まずは開示できる場というのを作らないと。今は東京電力さんもすごくショックだと思うし。
田中
ショックを受けているだろうし、ものすごいダメージだと思う。
小林
この状況で、周りがそこにちゃんと協力をするというか「一緒に話し合いをしませんか?」ということがすごく大事だと思うんですよ。優さんが今の状況で「そらみたことか!」と言わないのは、きっとどこかにそういう考えもあるのではないかと僕は勝手に思っていたんだけれど。
田中
実際にそうですね。
少し話はそれるかもしれないけれど、そこから先の話を少しだけさせてほしいんだよね。実は、原子力発電は保険に入っているんです。「原子力損害賠償制度」というものなんだけれど、1200億円までは保険がおりるの。イギリスのロイズに再保険をかけているから、使うことになってもイギリスの貴族の懐が痛むだけなんだけどさ。
小林
そういう仕組みがあるんですか。
田中
でも、どう考えても今回はその額だけでは足りないわけです。そういう時は国と電力会社があとは負担します、となっている。でも、国だって今は財政が厳しい。一方、東京電力は、ここまでは豊かだった。この構造がある意味チャンスなんです。国は一度はお金を払わざるを得なくなるけれど、その分あとで東京電力によこせと言わざるを得なくなるでしょう?その時に、東京電力が持っている送電線を担保に取ってしまえばいい。インフラとなる送電線を、道路のように自由利用の原則に戻してしまうわけです。そうなれば、みんなが原発以外の方法で作ったエネルギーを流すことができるようになり、欲しい人はそこから買えばいいわけだから。すると、いきなりヨーロッパ型の電力体系にもっていけるわけなんです。
小林
なるほど! 初めて光が差してきた(笑)。
要するに、今までは送電線を電力会社が持っていたから、誰かが他の方法でエネルギーを作ることができてもそれを送ることが難しかったわけですよね。
その問題が解消する道筋になるわけですか。
当然今回の事故は1200億円では足りる感じじゃないですよね。海水を入れてしまっているし、あれを再開するのはとんでもない費用がかかることでしょ?
田中
あれはもう直せないと思うけれどね。今までは原発事故の時には、その修復に保険を全て使っていたわけです。柏崎の原発事故のときも、実はロイズが壊れた部分の修復を全部負担しているわけだから。
一方で、例えば個人が被災して家に帰ることができないから福島からどこかに転居して暮らさなければならないというときに、そういう費用は今までだと自治体が負担するか、結局は賠償されないかどちらかだった。
でも今回は、そういう費用も電力会社に負担をしてもらおうという仕組みを作るべきだと考えていて。
小林
確かに今回はそういう責任が東京電力なり、国にはっきりとあると言えそうですよね。
田中
実は今、大阪で被災者の避難費用の請求を準備してるんです。このままでは善意の人たちの義援金から払われますね。でも原因を作った東京電力という加害者がいるのに、その被害を市民が負担するのはおかしいと思うんです。それを弁護士に頼んで、政府と話し合いをつけてという道筋で。今回の被害はとても1200億円では足りないから、どっちにしろ政府が負担することになります。でもそれなら代わりに政府が送電線をもらいうければいいと思うんです。
小林
なるほどね。それにしても、そもそもなんで国は、送電線を国の管理物にしなかったんですかね?
田中
戦前には、600以上の電力会社があって、各駅ごとにあちこちにあった。それが戦争が始まるときに、政府が「日本発送電株式会社」といって、勝手に全てひとつの電力会社にしてしまったんだよ。それを戦後になってみんなに分けなくちゃいけなくなって、九つの地域に分けたから9つの電力会社ができたわけ。実はそのときに、戦前にその中の多くの発電をしていたのは各自治体だったんですよ。その県が「ふざけるな、返せ!」という運動を起こして1965年まで戦っていたんだけれど最終的に負けてしまった。そのときにどうしたかというと、施設を取られてしまった自治体には、株券を返している。だから、東京電力の第三位の株主は東京都、中国電力の第一位の株主は山口県、というふうになっているわけ。
小林
なるほどね。
田中
そういう仕組になっていたので、9つの電力会社が全ての送電線などを押さえるというかたちは戦時中以降の体制で、それまでは自由にやっていた。そのころの東京電力は「東京電燈」といって、東京周辺でしかやっていないちっちゃなガス屋みたいなもんだったんだよね。それが今、世界最大の会社になっちゃったわけだけれど。大きな仕組みを維持するには大きな仕組みじゃなくちゃいけないでしょう? だから、巨大な原発を建てて、そこから全部配りますよという巨大なヒエラルキーを作ってしまった。それを今度は地域分散にしていかなくてはいけない。そのほうがコストも安いしね。今まで、青森県に作ろうとしてきた東京電力の東通原子力発電所は、東京までの送電線だけで3兆円くらいかかるの。実は電力会社の最大コストは発電所じゃなくて、発送配電の送電線なんだよね。その送電線を国に戻してもらうことができればと。
小林
そうした方がいいよね。
田中
既にヨーロッパはみんなそういう仕組みなんです。発電、送電、配電といって、発電所は自由に誰かが作ればいい。送電線は道路みたいなものだから、国が持つ。それで、配電線も民間企業が勝手にやればいい。
小林
配電線というのは、家とかに電力を配っていくものですね。
田中
そう。そうやって3つにわけて、真ん中の送電線だけを公が持って維持していくから後は自由にやっていいですよ、と。
小林
その代わり、大事な部分に関してのジャッジは国ができますよ、という。国民の総意が生かせますよね。これは、子どもにも分かるすっきりとした話だよね。今まではだからなんだか変だった。
そうか。送電線を電力会社が全部押さえていたら、つまり風力発電や太陽光発電を作るといっても分配はみんな電力会社に決められてしまうわけだったんですね。
田中
今までは本当に不幸なことに、「規模は小さいけれど水力発電で作った電気を買ってください」といっても、「買いません」と断られちゃうんですよ。買ってもらえなくて、いくらでも二酸化炭素を出さずに発電しているのに使えないんですよ。
小林
ものすごいすっきりした。情報を整理すると問題点が明確に見えてきますよね。
今のこんな状況は誰も望んでいなかったけれど、今回の大打撃があって始めて、今まで分厚い鉄壁に守られてきた構造に、改善をするためのスキができたわけですよね。僕と優さんなんかは、今までもずっとこういう会話を繰り返してきたけれど、今だからこそできる話があるわけです。
田中優
「未来バンク事業組合」理事長。
地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などに取り組むさまざまなNGO活動に関わる。「日本国際ボランティアセンター」「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表も務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院の非常勤講師。著書(共著含む)に『環境破壊のメカニズム』(北斗出版)、『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方』、『世界から貧しさをなくす30の方法』(以上、合同出版)、『ヤマダ電機で電気自動車(クルマ)を買おう』(ランダムハウ ス)ほか多数。最新刊は『幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア』(河出書房新社)。
田中優の'維持する志'
http://tanakayu.blogspot.com/
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