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緊急会議 飯田哲也×小林武史 (4) 「新しい時代へ向かう意思表示を」

今までになく、エネルギー問題を身近な出来事として考えざるをえない今。国や企業など誰かに任せてしまうのではなく、一人ひとりに意思表示をして欲しい、それがより良い未来へのシフトに繋がると飯田さんは言う。

    
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変化のチャンスを逃さないように

国ごとに違うスマートグリッド

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小林 スマートグリッドをやることによって、勝手に電気の効率がよくなるということはないのですか?

飯田 それも10年後には期待できると思います。

小林 あとはいわゆる、電気自動車のバッテリー的なこと? 前回、優さんとの対談に出てきたスーパーキャパシタみたいなものも、これからどういうふうになっていくのかまだ分からないけれども。どんどん発展して欲しいですよね。そういうものを使うことによって、さらに自給エネルギーを高めるということも含めると。

飯田 それが入ればさらに高まると思います。もっと可能性があがりますね。

小林 それはでも、希望は持てないわけじゃないんですよね?

飯田 そうですね、まあ......。



小林 希望があるということにしといてください(笑)。

飯田 希望はあるんですけど、半々というか、悩ましいところがあって、ヨーロッパ型スマートグリッドと、アメリカ型スマートグリッド、日本型スマートグリッドというのは違うんですよね。今現在の日本型スマートグリッドというのは、電力の独占を前提とした、非常にギミックというか、小細工的なスマートグリッドですね。アメリカはやっぱりアメリカ的で、Google energyに代表されるような、まったく新しいビジネスモデルを作ろうとしている。これは非常に面白いですけど。

小林 興味あります。そこには当然、エネルギー自給という部分も含まれてきているんですよね?

飯田 そうですね。自給をもっとはるかに超えたような、それこそインターネットの情報のクラウドのようなイメージで、エネルギーの需要側に供給もあり、バッテリーもあり、需給調整もあるというものを作るのが、Googleの構想ですね。それはそれで非常に面白い分野です。もうひとつヨーロッパ型はやっぱりヨーロッパらしくて、すごくオーソドックスな道を歩んでいるんですよ。それはどういうことかというと、イギリスの1990年の自由化から始まって、ノルウェーそしてスウェーデンと、90年代に自由化の基本形のようなものを終えているんですね。
それは電気料金の自由化なので、ユーザーが、どこの電力会社でも選べるように、古典的スマートメーターじゃないとそもそもだめなんですね。A電力会社はひとつの地域だけ売るのではなくて、いろいろな地域に電気を送り込む。ユーザー側から言えば、自分のところで色々な電力会社の電気が買えるわけだから、その電気が段階的に整備されてきた。だから日本でスマートグリッドのブームが始まったときに、ヨーロッパではスマートメーターがとても普及していた。つまり90年代にエネルギー自由化をした時から整備が始まっていたわけですね。

小林 なるほど。

飯田 それがまずベースとしてあって、次の段階が、電気料金と需要と供給の関係をリアルタイムにつないでいこうという、リアルタイム料金ですね。つまり需要が高くなって供給が低いときは、価格を高くしよう、逆のときは価格を安くしよう、そういう仕組みをちゃんと作ろうということを、2000年あたりからやってきています。そして第3段階として、Google的なスマートグリッドが射程に入っている。それがヨーロッパ型スマートグリッドなんですね。日本型スマートグリッドは、そういう段階はまるで踏んでないし、かといってグーグル的な大きな構想力もない。ガラパゴス携帯と同じで、ちょっと今、出口がないんじゃないか、というのが私の見方ですね。
小林 それはスマートグリッドに関して?

飯田 ええ。だから制度の整備も必要だし、一方で日本の企業がGoogleのようなイノベーションの力、構想力を持つ必要もあるのですが。私も今、経産省がスマートコミュニティーといってやっているところのいくつかを見て歩いているのですが、ほとんど笑えないジョークのような状態が続いていますね。もう、悲しくなるようなことがいっぱいあるので。

小林 それはまた外側だけで、中が空洞化するようなものなんですか?

飯田 例えば、ある地域で某社がやっているスマートグリッドというのがあって、それは直流でネットを組むんだとかいっているんですが、これはじつは出来が悪くてそのシステムと合わず、風車が止まってしまって身動きがとれなくなっているんですよ(笑)。その直流システムがいつまでたってもできなくてですね。でもやっている人たちは別にGoogle的な壮大なビジネスモデルを持っているわけじゃなくて、スマートコミュニティとかスマートグリッドと呼ばれているある種のビジネスモデルを作りたいというのを、モルモット的にやっているように見受けられます。その辺りが、日本大丈夫かな?と思ってしまうところですね。



小林 個人的にはGoogleを含めたアメリカ型スマートグリッドが日本でも広がっていって欲しいのですが。 じゃあ(資料を見て)2020年まではこんな感じなんですね。この表(下の【自然エネルギー拡大目標の検討(電力量に占める割合)】)を見ると、水力はすでにある施設を増強していくのがいいと。これ、バイオはそんなに伸びないんですね。
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(資料提供:環境エネルギー政策研究所)
飯田 バイオが1.1%というのは製紙会社で自家発電機を使ったものがほとんどなんですね。あとは一部がごみ発電。日本のバイオ発電にはすべての資源を使ってもせいぜい全体の5%くらいしか供給できないという資源の限界があって、これはどんなにがんばっても3%くらい、2050年までには5%くらいまで到達するかなというヨミですね。

小林 この中で風力、太陽光、地熱とか、新しいものに対して僕らは比較的なるほどという感じがあるんですけど、水力ってね、これがこれだけまだ増やせる余地があるというのがもともと昔から言われているけれど、どうしてなのかなという。ダムの問題もありますものね。
飯田 この見通しは、もともと小力協(小水力利用推進協議会)に出していただいた資料の数字をもとに想定したもので、新設の大型ダムは、環境破壊になるので作らないということを前提に考えられています。その代わり今あるダムを、発電機などを改良するなどでパワーアップしようと。もうできてしまったダムは活用しよう、というのが増強なんですね。

小林 なるほど。それにしても8%から13%はなかなか難しそうな感じがするけれども。

飯田 そうですね。でもダムの増強だけで2%から3%はあがるんですよ。あとは小水力をしっかり作っていく。それは河川環境を壊したりしない、環境に優しい形でちゃんと作るということですね。

新しいエネルギー政策について、国と国民が一緒に議論するべき

小林 では話を戻しましょう。最悪の......ってところに。

飯田 そうですね。いま日本に起きていることは、明らかにこれまでの古い日本型システムの終わりを象徴していると思うんですね。言うなれば明治維新と太平洋戦争が終わったときに匹敵する転換期なので、これから様々な議論が起きるはずだし、起きないとおかしい。まだ事故が続いている中で、早々に結論づけて、これまでの考え方や仕組みのままでうまくいくんだという形で収めてしまうのは、それこそ国民が許さないと思うんですよね。

小林 ところがね。許さないと僕も思いたいんですが。日本人って「喉元過ぎれば......」というところがあって。結局このまま飲み込ませようとする力があるじゃないですか。今回の喉元はずっと続きそうだから、日本人が飲み込んでしまう前に、この力にどうやって対抗すればいいのかというね。今まで飯田さんはずっとどこかに風穴をあけるなり流れを変えるということを考えてこられたと思うんだけれど。言ってみればすごいチャンスなわけですよね。
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飯田 そうですね。

小林 この数年間、原発は無敵の状態が続いていたのに、原発が老朽化していくような時期にこういうことが起こって。これまではちょうど国民が方向性を見失っていたから。今は最悪な状況ではあるけれども、新しい方向性は見えてきているから。

飯田 ですから、きちんと既存ではない新しい旗を立てること。それは色々な人が立てていくと思うんですけど、それがだんだん糾合していって、大きな旗になっていくだろうと。というのも、官僚の方などいわゆる内側の人たちからも「協力しますよ」という連絡がくるわけですよ。経産省の中にも新しい考え方の人もいるし、東電のなかにも志を持った人が少なくありません。そういう未来志向の人が、組織を越えて表にでていける環境さえ作れば、じつは一気に変わるんじゃないかと思うんです。
その環境を早く作らないと、また「粘土」に塗り替えられるので、今まさに、まっとうな議論ができるステージを作る必要があるんじゃないかと思います。

小林 東電が倒産するというような話も出ていますが。

飯田 倒産する可能性は高いかもしれないし、仮に倒産しなくても、従来のように東電が電事連(電気事業連合会)や、電力総連(全国電力関連産業労働組合総連合支援)を通じてとか、政治家に個別に働きかけて封じこめるという、古いやり方はもうできなくなった。一瞬かもしれませんが、開かれた議論ができる、戦後の焼け野原にぽっかりと青空が広がったような状況が出現していると思うんですね。
小林 なるほど。

飯田 やはり経産省には、日本の電力や電力会社の持つ問題をなんとかしたいと思っている人が相当いると思うんです。「これを機に電力再編だ」という人もいっぱいいますし。それが単に上からの改革ではなくて、下からの我々が望むような理論とも糾合して、協調しながら、新しい今後のエネルギーと電力市場体制はどうあったらいいのかということをきちんと議論してゆきたいですね。ただ、関東東北の、とくに東北復興の話は官邸筋の方で、一気に動こうとしていますから、それはチャンスでもありますが、やはり上からの動きなのでリスクでもありますね。

小林 それはどういうことですか?



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飯田 東北復興のために、あらゆる施策とお金を動員しようとしているので、そこに変化のチャンスはあるんですけど、官邸が今やろうとしているのは各省庁の持ち寄りになるようなところがあるので。そうすると従来型の、国交省が神戸でやったような、都合よく勝手なことをやりかねないんですね。だけど、うまく力学を持ちながら、電力市場が新しい開かれたかたちにもっていけるといいのだと思います。色々な力が働くので思ったようにはならないかもしれませんが、古い時代の電力にも戻らないとも思いますし。

小林 粘土のような体質といいましたけど、いままでの大企業や電力会社、そして国、という強大な影響力というのがね。僕らは音楽とかやっていますがエンタテインメントの周りにまでね、当然影響はきていたんでしょうから。あんまりそこまで日々感じていたわけじゃないですけど。そこに、これだけ大きなことが起こってすでに焼け野原みたいな状態になっているのだから、そこを怖がってどうせだめだとかどうにもならない、仕方ない、という風に思わない方がいいということですよね。



飯田 それに、粘土とか、おごっている部分というのもね、佐藤栄佐久前福島県知事は「玉葱の皮をむいたら中はなにもなかった」と表現されていましたが、本当に確信をもって最期の一人になっても戦い抜くぞと思っている人はいないんですよ。

小林 僕もそう思う。構造ってそういうふうに出来上がっていくんですよね。誰かが本当にそう思っているとかいうわけじゃなくて、誰も望んでないのにいつのまにか構造が構造を支えているという風になっていくんですよね。
飯田 その部分が今回のことで大きく変わるし、場合によっては一度砕け散るので、強大な粘土と思えていた部分からふっと青空が見えるようには、瞬間かもしれないけれど、なるかもしれない。そこにまた色々なものが入ってこようとするかもしれないけれど、そこがチャンスなんです。我々や、市民側からだけでなく、国の側でも電力を変えていきたいという声は間違いなくあるので、ここで大きな流れを作っていければいいんじゃないかなと。これはもう、ある種いい意味でのバトルだと思うんですけどね。これだけの事故が起きても、そう簡単に従来型のシステムが終わることにはならないと僕は思っていますけどね。
そういう意味では小林さんのされていることは絶対に意味があると思います。意思表示をちゃんとすることが大事なんです。銀座では1200人のデモがあったという話もありますし。

小林 ドイツでは25万人のデモとありましたしね。

飯田 そうですね(笑)。いい意味で、日本人はたまには怒って意思表示をしたほうがいいと思いますね。

小林 はい。今日はどうもありがとうございました。


――対談を終えて――

ap bankを設立当初、僕は、環境の問題、特に温暖化問題をどうするか、
という視点で自然エネルギーの推進を考えていました。
実際、いまでも、ap bankの説明には自然エネルギーの促進という言葉が使われています。

原発のことについてどうだったかと言えば、やはりいずれなくなった方が良いと考えてはいましたが、
「もっとも自然じゃない感じ」とか、「怖い」とか、ネガティブな印象はあるものの、
「CO2をあまり出さない環境に優しいエネルギー」という
社会広報的な寄り添い方、というか忍び寄り方も感じていて、僕らの回りに対しても、
何とも言いようのない感じがしていたのも確かです。

でも今回の原発事故で、CO2どころではない環境破壊が、
ある意味で環境破壊どころではない
命にかかわる被害が出てしまっています。

このような対談をサイトに載せた上でも、
僕はこのサイトもap bankも反原発の旗を立てるためのものだとは考えてはいません。
そして今はまだ、日本が、僕たちが、これからどう進むのか、
どう変わるのか、結局あまり変わらないことを選ぶのかは見えてきません。
難しいところです。
だけど、「和を持って尊しと成す」と「シカタガナイ」が混ざり合って、
僕らのなかで「知ろうとしない」が続いていけば、
僕らは結局、何かに「飼いならされ続けて行く」のではないでしょうか。
僕は変わっていかなければならないと思っています。

飯田さんとは前から知り合いではありましたが、
自然エネルギーの推進派であるというイメージの方が強く、
原子力に対する想いがどれほど深いかはよく知りませんでした。
この原発事故が進行している最中での対談で、
今までならば正直ここまで突っ込んだ話を聞く気持ちになれなかったと思うのですが、
結局3時間を超えるインタビューとなりました。お疲れさまでした。

小林武史


    
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飯田哲也

環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長。
京都大学原子核工学専攻修了。企業や電力関連研究機関で原子力研究開発に従事した経歴を持つ。その後、スウェーデンのルンド大学客員研究員などを経て、現在は持続可能なエネルギー政策の実現を目的とするISEPの代表を務めつつ、複数の環境NGOを主宰。『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論)、『グリーン・ニューディール―環境投資は世界経済を救えるか』(NHK出版)など、著書・共著も多数ある自然エネルギー政策の第一人者。

環境エネルギー政策研究所(ISEP)
http://www.isep.or.jp/

(情報・資料提供/環境エネルギー政策研究所、撮影・取材・文/編集部)

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