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「一人ひとりが行動し、選択する社会へ」

緊急会議 河野太郎×小林武史(2)
「一人ひとりが行動し、選択する社会へ」

緊急会議、第5弾。今回のお相手は自民党所属の衆議院議員、河野太郎さん。以前からエネルギー政策の転換を提唱してきた河野さんが語る、現状の政治の問題点と、それを打開するために私たちがするべきこととは?

   
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国民が、企業が、そして政治が変わるには

民主主義は、国民の声が確実に反映される

小林 河野さんは、自民党を中から変えようとしているんですよね。

河野 自民党の中で、「この政策のままでやっていたら、あなた方は次の総選挙でいなくなりますよ」と言っても、半分くらいは「いや、これでいいんだ。より安全な原子力を」ということを言う人がいますから。

小林 半分くらいですか?

河野 半分くらいになったかもしれないです。前は「あいつは何を言っているんだ?」と言われていたのが「あいつの言うとおりになったな」という雰囲気にはなってきましたよね。国会議員の中でも核燃料サイクルのことをよく知らなくて、「ウランとプルトニウムの違いはなんだろう?」というレベルだった人が多いわけですよ。それをちゃんと国民が分かって、情報を出していかないといけないから。
小林 そうですね。でも僕は、今ある政治に対して、期待が持てないというアレルギー感が相当あって。今、河野さんが自民党の中で半分くらいになったと言っていたのを聞いて、「それはけっこうなことだな」と思うんですが、もっとこの国が抜本的に、もう一度改めるような方向にいかないものかと思ったりするんですよね。憲法を変えることとか。

河野 そう思えば、みんながそういう投票行動をすれば変わるわけじゃないですか。だって、自分の選挙区の国会議員がエネルギー政策のことをどう思っているのか、知らない人がたくさんいるわけでしょう? まずは、それを聞きに行ってください。それが違ければ、「違うから政策を変えろ」と言ってください。それで変わらないのならば、人を変えるしかないでしょう。そういうことだと思いますよ。

小林 大変時間のかかる作業ですよね。
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河野 それは、人はやってくれないでしょう。みんなが、自分でやらなくちゃ。

小林 分かります。ただ、それをどこに向かってやるのかということを実は今、ずっと模索していているけれど、その方向が見えない。でも、河野さんなどが、いい形で出ていくと良いのだろうな、ということを思って、今日伺っているんです。ネットで、「原発推進ですか、いずれ代替エネルギーを見つけていくのがいいですか、それとも即刻辞めるべきですか」みたいなアンケートは、もう色々なところでとっていますけれどね。それで変わるとは思えない。僕はものすごく企業の力というものを感じるんですよ。メディアのこともそうだけれど、強いものに付いて行ってしまうところがあるからね。それと、僕やap bankは環境プロジェクトの推進から始まっていて、一神教とか人間中心とかよりも多様性を大切にするアジアの考え方というのは、良いな、と思うんだけれど、リーダーシップがなかなか生まれにくいなという感じがするのでね。

河野 それはね、今の政治の構造なんでしょね。
結局、日本の国会は、なんとなく与党が言ったものをどう通すか、というか。ちゃんと議論しようぜ、ということではないから。

小林 飯田さんも言っていましたが、色々な政策も全部「こういうふうにやろうよ」と決めてそこに帳尻を合わせるような話になっていくじゃないですか。言いたくない部分は黒インクで塗りつぶしていくような。

河野 だから、そこをきちんと表立って議論できるように変えていかなくてはいけない、ということはありますけれどね。

小林 でも、僕の周りには、一所懸命生きていて音楽が好きというファンがたくさんいますけれど、あまりものを考えないという子たちもすごく増えているようですから、かなり危機的な状況だなと思っているところもあって。だから分かりやすく伝えていくということはすごく大事だと思って、この緊急対談もやっているんですよ。
河野さんがおっしゃっていた、「みんなが投票してよ、民主主義なんだから」というのは、僕も分かっているんです。けれど、それがそうはならないんですよね。そういう歴史が長すぎて。それは、江戸時代から続いているお上文化も含めてだと思うんだけれど。

河野 ちゃんと考えるというのは、日本の未来のためにも大事だから、そういう人間の養成をどんどんしていかないとダメだと思います。ちゃんと考える人間が増えれば、その周りにいて「どうすればいいんですか?」と言う人に「こうだよ」という説明ができるようになるわけじゃないですか。だから、民主主義は時間がかかるけれども、きちっと動き出せば動くわけですよ。それが独裁制などとは全然違うところなんです。社会的なコンセンサスも取れてくるわけだから。独裁政治を続けていくと、ジャスミン革命のようになってしまうので。だから、民主主義はかったるいけれど、きちっと動かしていけば、本当ならば変わるものなんです。

政策が変われば、企業も変わる

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小林 なるほど......。では、もう少し先ほどの原発のことに関して突っ込んで伺います。僕らは、印象として東電や政府が槍玉にあげられることがあっても、原子力関係の企業がなかなか見えてこないという感覚があるんです。それは、あまり関係ないことなのですか?

河野 それは当然ぶらさがっているわけですよ。けれど、もともとの政策を決めてきたのは東電であり政府であるわけだから。だからまず、日本の政策を変えることが大事だと思うんです。

小林 そこさえ変われば、企業やメディアも変わっていくんですか? 僕はそういう大きな経済の輪によって、なかなか発言できなくなっていると思うのですが。

河野 分かります。でも、原発を造っている企業も、いくら海外に「これからも原子炉を売るんです」と言ったって、「日本の事故を起こした原子炉だろ」と言われて、それで終わりですよね。




だから、今はまずまったく合意性がなく進めてきた日本のエネルギー政策を転換しなくてはいけませんね。それが転換されれば、「今後は自然エネルギーでいくんです」と言えば、再生可能エネルギーに投資をする企業はどんどん増えてくるわけですよ。海外の企業は原子炉に投資しても儲からないし、これだけ莫大な投資をしてリターンがこれしかないのであれば、もっと効率の良いものはたくさんあるから撤退していっているわけですよね。日本の原発を造っている企業が、なぜまだ原発を一所懸命やろうとしているかというと「日本はまだまだ原発でいきますよ」という暗黙のメッセージが政府と東電から出ていたからなんです。それにプラスして、海外に売れたら丸儲け、みたいなところがあって。でも、今度はそうはいかなくなれば、「この部門は40年間メンテナンスはやらなくてはいけないけれど、あとは縮小しよう」という方向に行って、むしろ太陽光や風力が儲かるのであればそちらにシフトしていこうということになりますよね。

小林 なりますかね?
河野 なります。だって、日本以外は猛烈に再生可能エネルギーに投資をしているわけですよね。日本で原発を造っている企業よりも時価総額の大きい自然エネルギーのメーカーというのはいくらだってあるんですよ。でも、日本だけは経産省や東電や政府が抑えたから、そこが伸びませんでした。これは、完全なビジネスの判断ミスですよね。

小林 原発の危険性に対して、甘く判断した時代の証文で動いている感じはしますよね。

河野 そうですね。

小林 そうか、変わっていくのかもしれませんね。変わっていくという感覚が僕にはなかったから。だって、みんな気を遣い合っていると思っていたので。実際に僕の知り合いの大企業に勤めている人間ともやりとりをしていたけれど「公にはとてもじゃないけれど、原発に対しての批判的なことは言えない」と言っていましたから。
その大企業は原子力に実際に関わっているわけではないけれど、同じ業界の中で繋ぎ合っているところがあるみたいで。当然、僕らを含めたありとあらゆるメディアが、企業スポンサーとなんらかの繋がりを持っているところもありますから。

河野 結局、そこを牛耳っていたわけで。その根本を変えてしまえばいいわけです。

小林 田中優さんもおっしゃっていた送電線のことをお聞かせください。国有化されると色々なリスクがあると思いますけれど。そこにどういうエネルギーが通るのか、国民が選べるということになるとすごく良いと思っていたんですが。

河野 そう思いますね。少なくとも、送電と発電の分離は、東電管内はやると思います。すると、多分日本中がやれよ、という話になると思いますので。そうすれば、太陽光や電気や風力でできた電力を買いたいと言えば、それができるようになってきて。




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小林 固定買取制度が実現する、ということですよね。それは、できると思いますか?

河野 思います。それくらいやらなかったら、事故の後始末をしたことにはならないと思いますね。

小林 では、まずはそこですか。それで企業が方向性を変え出すということがあれば、確かに大きな政治の転換がなくても僕らの声が反映されていくのかもしれないですね。

河野 だって、原発を造っている企業だって原子炉をやっている部分が稼ぎ頭かと言うと、決してそういうわけではないんですよね。「それだけの投資をして、これだけのリターンしかないの?」というビジネスですから。こんな事故も起きてしまったし、早く辞めたいというところはあると思います。

小林 そうですか。 ところで菅さんは、電力の問題でそんな東電に対して、ずいぶんエキセントリックに振舞っていたじゃないですか。
それでもかなり、労働組合に引っ張られている感じはあるんですか?

河野 だって、菅さんは選挙で落ちるとは思っていないでしょう。けれど、選挙で電力会社や労働組合に世話になっている議員はたくさんいますから。

小林 なるほど、全体的な話なんですね。

河野 だから言えません、という人がほとんどです。けれど、今はいいチャンスというか。僕も、こんな事故が起きるとは正直思っていなかったので。少なくとも、これだけの事故が起こったのだから、エネルギー政策は転換せざるを得ませんよね。けれど、「東京電力は大丈夫ですよ、銀行の融資が決まったから潰れることはありません」なんてことを言って歩いている人は、まだたくさんいますし「東京電力は国有化してはいけません」と言って東京電力の利権を擁護しようとしている人もいるし。これはやっぱりおかしいとちゃんと言ってやらないと。提灯持ちみたいなのが出てきちゃいますから。

国民が選んで、自ら動く社会にしていく

小林 この間、スウェーデン在住のナチュラル・ステップ・ジャパンの高見さんとSkypeで話したときに、終わり際に「なぜ、日本はいわゆる緑の党、環境党ができないんですか?」という話をしていて。もちろん規模は違いますけれど。 安いところの労働力を使って安く作って高く売る、という資本主義の基本原則がある。けれど、アジア、アフリカなどでもどんどん労働賃金がフラットになっていきますよね。日本は早い段階でそういう踊り場に入ってきて、低成長期に入ってきている。ある程度地域の中で循環していくべきというところにきていると思うんです。そこに、僕らがアメリカから影響を受けてきた豊かさとは、違う豊かさに気が付いてきた人はすごくたくさんいると思うんですよ。東北が復興していくときに、またどこの街に行っても外資系のファストフード店があるという状況を誰が望むんだろう?と思うわけですよ。その土地独自のハンバーガー屋さんが出てきてもいいと思うんです。もちろん鎖国じゃないとは思うんですけれどね。
でも、規制も増えるかもしれないけれど、自分たちの中での循環を守ってやっていくほうが人間は幸せになれるんじゃないかという気がするんです。つまり、命の循環なりエネルギーの循環も、そういうことが見えたほうが幸せだという気がしていて。そういう意味では、震災後自民党が世界標準のような豊かさに向かうことを前提として考えているということが、どうなんだろうなという気がするんですよね。

河野 でも、それって豊かになることとは唯一背反じゃないと思うんですよ。だって、コスタリカなどに行くと、エコツーリズムでお金を世界から稼いでいるわけですから。今までみたいに、外資系のファストフード店で同じものを安く食べて単価を下げて利益を出す、というモデルがあると思えば、手作りで高いけれど美味しいからたくさん売れるお店もありますよ、とか、うちは有機野菜しか扱っていません、というところがあったっていいわけだから。逆に、そういう選択肢があることが豊かなのだと思うんですね。
小林 僕も、国の方向性で決めるのではなくて、みんなで選んでいくのが良いと思うし、自由競争が良いと思っているんです。僕も、魅力あるものをずっと作り続けていたいと思っている人間なので、上から「平等ってこういうものだ」ということでは当然ない方がいいと思っているんだけれど。それにしても、この国はあまりにも中枢が粘土みたいになっていて響かないから結局、みんなが諦めてしまう感じがずっとあるのでね。

河野 ずっと溜まりに溜まっていたマグマを総選挙で変えよう、ということで変わってみたら酷かったから行き場がなくなってしまったとか。

小林 そう。毎度のことじゃないですか。

河野 だからやっぱり、現状ではダメだということは、一部の上の人を除けば思っているんです。僕らレベルではどうにもならないからどうするか、一緒にやるかという議論はしているんですよ。
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でも、そのさなかにこの震災が起きてしまったから、選挙も一年くらいはできそうもないし、まずは復興と原発の後処理をやらなくてはいけない。原発の処理でエネルギーの転換ということもやれることは一緒にやろうよ、と。そうすると、「一緒にやりたいけれど、僕も後ろがひっかかっているからさ」という人もいる。でも、労働組合の票が大事だから変わらないのならば、他の人はみんな逃げるし、結果として議席がなくなるから。労働組合に恩はあるかもしれないけれど「ここは変えざるを得ません」といって支持を得なければ、次はいなくなってしまうのだから、一緒にやろうぜと。

小林 政治家の心ある人たちがそういうふうになっているということは、僕でも知っているんですけれど、それでも変わらないから。だから河野さんには、もっと先に行って欲しいなと。




河野 アメリカなどではオバマが大統領選に出るというと、お金も支持者も集まって、アメリカ全土で支援活動をするわけですよね。ところが日本は「だれかが何か言っているぞ」と言っても、「あぁ、そう」で終わってそこからもう一歩が出ない。だから、「頑張ってくれ、頼むぞ」ではなくて、「お前も一緒にやってくれよ」と。

小林 応援するからやってくださいよ。

河野 応援するからではなくて、一緒にやろう、と。

小林 一緒にやりましょう(笑)。

河野 そうなんです。そういう人間を集めていって。まずはエネルギー政策を変えてみる。それで変わったら「やればできるじゃん」ということになるじゃないですか。

小林 だから僕は思うのが「やっぱりやり方はそれしかないのか」ということなんですよね。
信用していないもの、自民党を(笑)。河野さん、出たらどうですか?

河野 (笑)。蓮舫さんが「2番じゃダメなんですか?」と、言っていたけれど、自民党の総裁選については、1番じゃなければ全然意味がなかった。でも、今新しい政党を作るよりも、取りあえずもう一度乗っ取ってみようぜ、と。そうしたら「あいつは嫌だ」と言って、半分くらいがいなくなっちゃうかもしれないけれど、それはそれでいいじゃないですか。

小林 河野さんが立候補したときも「おっ!」と思ったけれど。当たり前だけれど、僕らが期待しても、手の出しようがないですからね。政党政治ですから。

河野 そこはまた、少しやってみて。「自民党変わらないな、乗っ取れそうにもないね」というならば、また新しい仕組みを作ろうということになると思うんですね。でも、これだけのものを毎日観ているわけだから。やっぱりエネルギー政策はダメだ、変えようという声は相当大きく挙がっていますね。
小林 だから、政治の根本が変わるということにならないかと思うんですね。

河野 それは、憲法を改正するという作業が必要になりますから、もっと大変です。

小林 そうですか......(苦笑)。

河野 だから、ひとつずつしか民主主義は変わらないですから。一気に変わるのは、革命ですし。独裁政権ならばガラっと変えられますが、それが本当にいいのかというと、実はそうでもないかもしれないわけで。だから、確実にひとつずつ変えていきましょう、ということだと思います。

小林 分かりました。頑張ってください。いや、一緒にやりましょう、ですね(笑)。

河野 はい(笑)。よろしくお願いします。


――対談を終えて――

民主主義がちゃんと機能するためには、というお題があるとして、
政治と市民の関係はまるで鶏と卵みたいだなというお話でした。
まぁそんな感想も持ちつつ、政治と、国民の関心や理解の距離が
どうやったら近くなっていくのか......。
気づいた人間からやっていくしかないとはいえ、
少なくとも、長年原発の問題を隠ぺいし続けてきた政治、そして政党、
何よりもそれを取り巻く全体の構造を
どうやって信じたらいいのか悩みは消えません。

河野さん、民主主義の原理原則は解るけれども、
ぜひ、もっと市民の人の気持ちに下りてきてください。
新しい動きが必要な気がします。
ちなみに、たまたま目にした4/18付の朝日新聞の世論調査では、
「民主党支持」が19%から17%、
「自民党支持」は18%から19%に増えています。
つまり、大差はない。だけれど、
「支持政党なし」と「分からない」を足すと57%という数字でした。

僕も頑張ります。
また意見交換させてください。

小林武史



   
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河野太郎

自民党 衆議院議員。
ジョージタウン大学を卒業後、富士ゼロックス、日本端子での勤務を経て、1996年に第41回衆議院総選挙にて神奈川第15区で初当選。2002年総務大臣政務官、2005年法務副大臣、2008年に衆議院外務委員会委員長を歴任。現在は、決算行政監視委員会理事、自由民主党のシャドウ・キャビネット行政刷新・公務員制度改革担当大臣などを務める。主な著書に、『変われない組織は亡びる』(二宮清純との共著/祥伝社)、『私が自民党を立て直す』(洋泉社)など。

河野太郎公式サイト
http://www.taro.org/

(撮影・取材・文/編集部)

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