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緊急会議 小出裕章×小林武史 「原発は今すぐ止めなければならない」(1)

かつては原子工学者として原子力の力を信じていたが、その研究過程で放射能被害や原子力エネルギーの限界を知ったという小出裕章さん。以来40年間、"原子力を止めることに役立つ研究"を続け、反原発を主張し続けている。専門家から見て、現在、福島原発はどのような状況下に置かれているのか? 今後はどのような展開が予測できるのか?(対談日:2011年4月28日)

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今、福島原発で起きていること

レベル7という判断について

小林 40年間お疲れ様です。

小出 いいえ、今回の福島原発の事故については、止めることができずに皆様にご迷惑をおかけしてしまい、長年この問題に取り組んできた者として本当に申し訳ないと思っています。こんなことが起きる前に止めたかったのですが、私の力が足りませんでした。

小林 僕らも自然エネルギーを頑張って広めていこうとしていたのですが、一向に進んでいかない現状も見てきました。民主主義という洋服を着ているだけで、実質は国民も若者たちも物事を考えなくなってしまっているという感じもあります。
だからこそ、未来をシフトしていくことに興味を持ってもらえるようにするために、言ってみれば僕がエンタテインメントのプロデューサーとして、少しでも分かりやすい言葉に噛み砕いたものを緊急会議としてみんなに届けていければという思いでこの企画を進めているところなんです。

小出 ありがとうございます。私なんかがいくら発信してもなかなか多くの人に届かないというのが、長くやってきて感じたことでもあります。小林さん達のような音楽をやっている方々の発信力というのはとても大きいと思いますし、ぜひ力を貸していただければと思っています。よろしくお願いします。
小林 こちらこそよろしくお願いします。早速ですが、今回の福島原発の事故がレベル7と発表されましたがこの判断について小出先生はどのようにお考えですか? レベル7は大げさすぎるなどという意見も出ていましたが。

小出 レベル7というのは、国際原子力事象評価尺度というものに照らして言っているんですね。ではその尺度というのは誰が作ったかというと、原子力発電を推進してきた人たちが集まって作った尺度なんです。小さな事故から大きな事故まで色々な事故があると。




小出 レベル0からあるのですが、事故の規模が大きくなるに従ってレベルが1、2、3、4......と上がっていくわけですね。原子力発電所という機械が、最悪な事故を起こす場合はレベル7にするという、彼ら自身が決めたものなんです。

小林 で、福島の事故が起きた。

小出 日本の政府も電力会社も原子力産業も、とにかく事故の規模を小さく見せたいと始めからそればかりだったんですね。ですから3月11日に事故が起きた時にはレベル4だなんて言っていた。推進の片棒を担いできた学者達もマスコミの前に出て「大したことない、すぐに終わる」という発言を繰り返していたわけですが、翌日には原子炉建屋が爆発して吹き飛ぶという事態になった。それでもまだレベル4だと言っていたんです。
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1週間ほど経った18日になってようやくレベル5だと言い出したわけですけれど、実はもうその時には原子力を推進する人たちも含め関係者はみんなレベル7の規模だということを知っていたわけです。もちろん私もそう思っていました。それでも彼らはなんとか事故を小さく見せたいと思い続けたわけで、その後ずっとこの点に関しては口をつぐんでいたわけですね。でも世界から見てもレベル7だということは当たり前のことになってしまって、もうどうしようもなくなってからやっとレベル7だと認めたわけですね。ところがレベル7だと認めながらもまだ彼らは言い訳をする。チェルノブイリに比べたらまだ規模が小さいんだと(笑)。
一体あなた達は何を考えているんだと言いたくなりました。自分たちで決めた事故の尺度で最悪の事態になったわけですから、一切の言い訳をせずに、とにかく今は本当にひどいことになっていますと彼らこそ言うべき。それでもまだ事故を小さく見せたいと思い続けている、そういう人たちなんですね。

小林 うーん。なるほど......。

小出 チェルノブイリの事故というのは一応収束しました。ただ、福島の原発事故というのは残念ながら今現在進行中です。これからもっと悪くなる可能性もあると私は思っています。
もちろんなんとかこれ以上悪くならないで欲しいと願うけれども、悪くならないと自信を持って断言することは私にはできません。現に今も、福島原発のサイトの中で必死に作業している人たちがいる。それは何故かと言えば、これ以上事態を悪くさせないためにやっているわけです。逆に言えば、これ以上悪くなる可能性があるからこそ、彼らは被ばくしながら作業しなければいけないという、そういう状態なんですね。ところが現場で苦闘している人たちのことを全く無視するかのように政府は「事故は収束に向かっている」という発言をしているわけです。私から見るととても異常な世界です。

負け続けている現状

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小林 そうですね。最近は福島原発の汚染水をどうするかということについても、大分解決に向かっているんだというような情報が流れていましたが、小出先生はもしかしたら再臨界の可能性があるというようなことも仰っていましたね。その辺のことも含めて、現状についてどのように推測されているか教えていただけますか?

小出 起こっていることは非常に単純なことで、原子力発電所という発電するための機械が、自ら制御することが出来なくなって発熱が続いているということなんですね。発熱が続いている限りはそれを冷やさなければ機械が壊れるというのは当たり前のことです。今日まではただただそれを冷やすという作業のために苦闘を続けてきているわけです。ではその冷やす相手の熱というのは何かと言うと、原子力発電所が動くと核分裂生成物という放射性物質が次々と生み出されるのですが、それは放射能であるが故に必ず熱を出すという性質を持っているんですね。事故が起きてウランが燃えること、つまり核分裂反応を止めるということは比較的容易に出来ます。制御棒という棒を入れればいい。そうすれば止まります。
でも既に原子炉の中に溜まってしまっている核分裂生成物はそこにあるわけだし、それが熱を出し続けるというそういう性質を持っているんですね。例えば福島の原発の一号炉という一番小さな原子炉でも、ウランの核分裂反応を止めたところで10万キロワット分の発熱がある。 10万キロワットって想像できますか?みなさんの家庭にある電熱器や電気ストーブはせいぜい1キロワットの発熱です。そういうものが10万個分、止めることができない発熱を続けているのと同じなんですね。冷やさなければすぐ壊れるというのは当たり前なわけです。ただしその熱というのは、放射性物質自身が出している熱であり、放射性物質というのには色々な種類があって、寿命がものすごく短いものもあるし、少し短いものもある、少し長いものもあるし、ものすごく寿命が長い、そういう放射性物質もあるわけですね。比較的寿命が短いものはありがたいことに1日経つと10分の1くらいに減ってくれる。ですから当初は10万キロワットくらいの発熱があっても1日経てば1万キロワットくらいまで減ります。でも寿命の長いものは残ってしまいそこからがなかなか減らないんです。今、事故からもう1月半くらい経っていますけれども、3000キロワットくらいになった。




小出 要するに事故直後に発熱が3分の1くらいになってから、その状態がずっと続いているわけです。それをなんとか冷やし続けなければ、原子炉自体が溶けてしまう。それを防ぎたいのです。

小林 なるほど。

小出 しかしそれ以前に、恐らくは、事故直後の放射性物質がものすごく強かった時に既に原子炉はたくさん破壊されてしまっていると思うんです。どうして破壊されたと分かるかというと、原子炉建屋の中で水素爆発というのがあちらこちらで起きているからです。私たちが燃料棒と呼んでいるもの(組成がジルコニウムという金属で出来ている)の金属が水と反応して水素を出すという物理的な法則があるんですね。それで出てきた水素が爆発したということなので、既に燃料棒がもうボロボロになっているということは確実なわけです。事故直後の放射性物質が強い時にそこまでやられてしまったわけですね。
小林 うーん。

小出 通常の冷却が既にできない状態の中で、なんとか原子炉を冷やし続けなければいけない。とにかく外から水を入れ続けるしかないのですが、水を入れればその分溢れてくるというのも当たり前のことですよね。既に福島の発電所の中には7万トンにも及ぶ放射性物質に汚染された水がそこらじゅうに溢れているんです。一時期、ピット(※使用済み燃料などを貯蔵・管理するための場所)という部分から汚染している水が滝のように溢れて、これは大変だとそこをなんとか塞いだんですね。でもみなさん考えて欲しいんですけど、あのピットというのはコンクリートで出来た水路なんです。ピットだけではなく、原子炉から溢れた水が溜まっていくタービン建屋もその横にあるトレンチもコンクリートです。コンクリートはもともと割れやすい素材で、水を溜めるのにはそんなに適していないんですよ。特に今回は地震で揺さぶられているわけですから、ピットもトレンチもタービン建屋の床もおそらくひびがいっているだろうという状態です。
それでは水はどんどん漏れていく可能性が高い。ピットだけ直して「もう大丈夫だ」という顔をしていますけれど、実際にはそうではないと思います。すでにもう放射性物質で汚染した水がどんどん地下に染みこんで海に流れている、そういう状況が続いているでしょう。それでもまだ7万トンもの汚染水が溜まってしまっているわけです。もうどうにもならないところに追い込まれているんですね。そこで今度は、「仕方がないから汚染の少ない水から海に出してしまおう」という処置を取ってしまったわけです。

小林 低濃度の汚染水を、ということでしたよね。

小出 低濃度と言っても、その「低」というのは日本の国の基準で環境に出していいと決められている数値の何百倍もの高濃度のものです。

小林 そうなんですよね......。




小出 そんなものを海に流すしかないというところまで追い込まれている。今ようやく開けたタンクにトレンチなどの水を移そうとしています。コンクリート構造物ではどんどん漏れてしまうからもちろん移さないといけないのですが、移せたところでせいぜい1万トン。そこにまた追加で次から次へと水を入れていくわけですから、いくら移しても間に合わない。東京電力は仮設のタンクを作ると言っていますが、それには何ヶ月もかかるでしょう。これから原子炉を安定的に冷やすためには大掛かりな工事が必要になるのですけれど、その前に応急処置で発生する汚染水をさばくための対応しか出来ていないというのが現状。安定した状況に向かっているかのように言う人もいるけれども、決してそうではない。もう負けて負けて、負け続けて、今ここにいる、これからどうなるか分からないという、そういう状態なんです。
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"メルトダウン"の可能性は?

小林 依然として厳しい状態が続いているということですよね。その中でも、水素爆発が起こらないことだけをなんとか祈っているということなんでしょうけど。その可能性もゼロではないんですよね?

小出 私が恐れているのは水素爆発ではなく、水蒸気爆発というまた別の爆発なんです。それをなんとか防ごうとして今でも原子炉の中に水を入れ続けるという作業を続けているんですね。

小林 水蒸気爆発というのはどういうものなんでしたっけ?

小出 原子炉の中心部分は炉心と言われる部分です。
そこに直径1cmで長さは4メートルくらいある長い金属の棒になっているウランがあるんですね。それを燃料棒と呼んでいます。直径1cmの細い物干し竿のようなものの中に、ウランを瀬戸物のように焼き固めたペレットというものを約400個くらい詰め込んであるんです。その鞘(さや)の部分がジルコニウムという金属でできているのですが、それが水と反応して水素を大量に出したということが分かっている。850度を越えないとそういう反応は起きないので、原子炉の炉心がそこまでの温度に達したということは確実だと言えます。中に入っているウランの燃料ペレットというのは2800度近くにならないと溶けないので、仮に燃料棒がボロボロになって形をなくしてウランのペレットがこぼれおちたとしても溶けない状態にはあるはずなんですね、今は。
でも事故直後の、まだ発熱が激しかった頃に一部の燃料ペレットが既に溶けているんです。それはどうして分かるかというと、福島の発電所の敷地の中でプルトニウムという放射性物質が検出されたし、敷地の外でストロンチウムが検出されたからです。それらの放射性物質は温度が高くないとでないものですから、これはもう必ず溶けているということなんです。ただ、炉心と言われている部分は約100トンくらいの巨大な構造物なんですが、その全体が溶けているわけではないと思います。ごく一部だけが溶けているんだと思います。

小林 一部だけというと?
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小出 炉心と言われている部分の燃料棒は4メートルあります。例えば1号炉について言うと、東京電力は昨日の段階で70%損傷していると発表していました。燃料棒がずらっと並んでいる構造なので、上の方はボロボロになって下の方に崩れ落ちていくという、そういう状態だと思うんです。それから炉心部というところにウランの大部分は残っている状態で、一部が溶け始めているといわれている。ここで冷却に失敗して全体が溶けてしまえば、溶けて落ちる、いわゆるメルトダウンということになってしまうんですね。その時に炉心はどこにあるのかというと原子炉圧力容器という巨大な圧力釜があるのですがそのなかに入っているんですね。厚さが16cmくらいの鋼鉄の容器ですけれども。炉心がもし溶けて落ちるときに、圧力容器の底に水が残っているとすると水の上に溶けた溶融体が落ちていくということになる。そういう時に水蒸気爆発が起きるんです。そうすると圧力容器が壊れると私は思っていますし、圧力容器のすぐ外側には放射性物質を閉じ込める最後の擁壁である格納容器というのがあるのですが、それは比較的ペラペラの容器ですのでそれも壊れると思います。




小出 そうすると原子炉そのものは溶けている、圧力容器も壊れる、放射性物質を閉じ込める最後の擁壁の格納容器も壊れるということになってしまうのでもうどうにも止めることができず放射性物質が外に出ていく事態になってしまう。それを私は恐れているし、きっと原子力を進めている東電の方々もそれを恐れているために今必死で作業しているんだと思います。
小林 聞いていると骨の髄がきしむような話ですね。そうか......。一部はものすごい高温になっているのは間違いないんですよね?

小出 間違いないです。

小林 周りを冷やしてはいるけれども、高温になっているところがどう広がるかによって、ということですよね。
小出 そうです。冷やし方がうまくいかなければ溶けるのは広がってしまう。最悪の場合は溶け落ちるだろうと思っているわけです。私も、そんなことはない、大丈夫だと言いたいんだけれども、言えないんです。

小林 少なくとも今はまだ言える段階じゃないということですよね。

小出 そうです。
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小出裕章

京都大学原子炉実験所助教

1949年生まれ。東北大学原子核工学科卒、同大学院修了。74年から京都大学原子炉実験所助教を務める。原子力工学者として研究していく過程で、原子力発電反対の立場となる。以来、原子力をやめることに役立つ研究を続け、著書、講演を通じて反原発を主張している。著書に『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)『隠される原子力・核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)、共著に『原子力と共存できるか』(かもがわ出版)ほか。

(撮影・取材・文/編集部)

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