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仮設住宅ではない、復興住宅を建てよう

東北の木材を使って被災した人たちの住まいを作る、仮設じゃない「復興住宅」プロジェクト。住む人の環境や雇用、町全体の活性化など、復興をあらゆる面からサポートする、この取り組みの実現に向けた話し合いをレポートします。

地域を活性化する、復興住宅という取り組み



――はじめに――

東日本の復興を考えた時に、
これからのエネルギーはどうするのか、という話が当然出てきます。
福島は東京の電力を支えていたから
関係ないというのは本当に皮肉で悲しい話ですが、
とりあえず外したとしても、東北地方で必要な電力を
どう選んで行くのかは、とても大事な問題です。
何年か前に田中優さんの紹介で、東北の豊かな山を活かしたバイオマスなどの
循環していく仕組みを考えて実践しようとしているチームを知りました。
宮城にある日本の森バイオマスネットワークと、栗駒木材、
そして東京にある天然住宅を中心としたチームなのですが、
今回「仮設住宅ではない、東北の木を使った復興住宅を作る」という
かなりキャッチーでもあるわかりやすい提案をしてくれました。
ap bankとしてどう関われるかをミーティングするために、
宮城県栗原市の栗駒木材にある循環型の工場見学も兼ねて伺いました。
その会議内容を敢えて掲載させていただきます。

小林武史



復興住宅は、仮設住宅と何が違う?


被災した場合、避難所での生活が終わると仮設住宅に移行するのが、これまでの復旧の流れ。しかし、その環境は決して良いとは言えないのが現状だそう。断熱材の薄さにより、温熱環境が悪いだけでなく、音漏れや結露を引き起こしてしまう。そして、そんな建物を狭い敷地の中に隣接させるので、ストレスが溜りやすいのだ。また、仮設住宅はプライベートが守られる反面、心が通わない空間になりがちであるという。
さらに、問題点はそれだけではない。「仮設住宅には色々な法律があり、規定の中でやろうとすると民間業者が入れる状況ではないんです」と、佐々木さんは言う。つまり、仮設住宅の建設によって潤うのは、大都市の大手業者や資材を輸出する海外の企業といった、震災の外側にいる人たちなのである。
これらの問題を解決するために考えられたのが、復興住宅というプロジェクトだ。森林資源の豊富な東北の特性を活かして、地元の材木を使った高断熱、壁気密で温かみのある木造住宅を建てる。施工を現地の業者や職人がおこなうことで、失業してしまった人たちが働く環境ができ、被災地の経済が生まれ変わることにも繋がるのである。
「地域で(分散して)避難している方々は、昔からのコミュニティをそのまま維持したいという意識が強いんですね。なので、避難所の次の段階で仮設住宅に移るのではなく、エコビレッジのような住まいを提供する復興支援センターを作り、復興住宅が建設できるまでの間、そこに入居していただくのがいいと思うんです。
銭湯のような共同施設を作ることで、地域がコミュニケーションを取りながら復興に向けた取り組みをおこなうことができるし、その間は仕事や子供のことなどの支援や相談、手当などの力になれればと思っています」(佐々木)。
復興後、残った建物は高齢者のデイサービスなどに使えるような設計にすれば、仮設住宅のようにたくさんの廃棄物を出す心配もない。雇用や資源など、復興そのものを循環できる仕組みのなかに取り入れた、まさに画期的な構想なのだ。
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大切なのは、自ら立ち上がろうとすること

壊滅的な被害を受けた海沿いの地域。全てが瓦礫となり、住民が家も職もなにもかもを失ったこの場所で、小さなコミュニティの中から循環型の社会を新たに作り出す。それは、震災のダメージをチャンスに変える、希望の光になるだろう。その一方で、実現には国や政府に頼りきりになるのではなく、一人ひとりが自覚を持って行動することは欠かせないこと。
小林も「県や国、企業などが絡んで、復興によって膨大なお金を得るようなところがあるはずで、それを考えければいけない。それに、僕がこれまで見てきた限りだと、単に市民団体や市民運動的に叫んでいても変わらないんですよね」と、現実的な疑問を投げかけた。
「お寺などに自主避難した人たちは、自分たちで役割分担をして、みんなで暮らしていこうという団結力が強いんです。復興支援センターを考えたのも、コミュニティを作って、一人でも多く雇用を増やして復興に向かってほしいという気持ちからなんですね。仮設住宅に入れる2年の間に復興の道を切り拓くのは難しいと思うんですよ。自分たちで動き出す方向に進んでいかないと、また大都市に復興のチャンスを持っていかれて、仕事を求めて都会に人が出ていってしまう。だからなんとかして仕事を作りだして、早く働くこと。つまり活性化することを支援しないと駄目だと思います」(大場)。
関西出身で、阪神大震災のときには自ら乗り込み、支援活動と建築的な調査を大学と共におこなったという相根さんは、「神戸や西宮は経済的に豊かで大阪も近いので、復興したらすぐに働く場所があった。それが決定的に違う部分で、今回は現金収入の少ない地域が徹底的にやられてしまっているんですよね。だから、住宅を建てても暮らしの仕組みがないと何も見えないわけです。私も、小林さんがおっしゃったことに大賛成でNPOと民間がちまちまとやっていても社会は変わらないと思います。ビジネスや融資、投資といったお金を活かす仕組みを作ってあげなくてはならないと考えて、復興住宅の企画をしたんです」と語る。

山と海とが繋がって循環する復興を

復興住宅建設に向けての話し合いを実際におこなっている場所もあるという。 「東北の漁業は、放射能の影響や、今回の震災で防波堤が流されて海の環境も変わったことにより、大変厳しい状況です。それでも、やっぱり漁師の人たちは漁業を再興したいと言っています。もしも復興住宅を海の近くに建設することが実現すれば、漁師を続けられるんですね。」(相根)。
そこで復興するまでの間、どうやって生計を立てていくのか? そこにも、地域が自立するための具体的なビジネスチャンスがあると、相根さんは言う。
「せっかく山と海が両方あるから、きのこ栽培を始めたらいいんじゃないかと漁師の人たちにアドバイスしたんです。今、麹菌、酒や納豆も含めて、日本の発酵文化が滅びてしまっているので、本物のものを作れば高く売れると思うんですね。それに、海がダメな時は山があるし、山がダメな時は海がある。両方の仕事をすればリスクが半分になるでしょう?」
林業、そして農業や漁業など、この地の特性を活かした産業が賑わう。さらに、エネルギーやゴミのリサイクルなど、町全体が資源を循環する仕組みができれば、そこにも雇用が生まれて、人が住めばサービス業も盛んになっていく。必要なのは震災前の町に戻すことではなく、このように町がイキイキと元気になることなのだ。

復興住宅にはサステナブルな仕組みを取り入れる

基礎を除けば1週間で建てることのできる復興住宅は、200〜300年の耐久性があるという。これを上や横に建て増ししていけば、それぞれの生活スタイルに合った住まいを作ることができる。仮設住宅は無料だが、入居希望者が多く供給がおいつかず、しかも2年間しか住むことができない。しかし、今、検討されている事業モデルの例では無利子の民間ファンドからの融資などを利用して復興住宅を購入すれば、1戸あたり450万円程度で次の世代まで受け継ぐことのできる家が手に入るのだ。
「最低限のインフラは行政を絡ませないといけないのですが、水さえあれば自然エネルギーでとりあえず自立できるんです。トイレはコンポスト(微生物による分解の働きで、排泄物を自然の力で浄化する)を使えば完璧にキレイになりますし、エネルギーも庭にソーラーパネルを設置して10アンペアで暮らしてもらおうと思っています。それに、ボイラーとストーブは木質ペレットなどのバイオマス燃料で対応できるんです」と語る相根さんも、東京・鶴川の循環型マンションで、持続可能な生活を実践している。
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東京・鶴川の循環型マンションの各屋上に設置してあるソーラーパネル。向かいには、共同の屋上庭園や菜園がある。
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ミミズのコンポスト。生ゴミは分解しやすいように細かく砕いてから入れる。そのまま屋上菜園の肥料に使用。
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コンポストトイレ。通気口もあって、まったく臭わない。これも屋上菜園の肥料になる。
復興住宅の取り組みは、単に被災者の住まいの面だけをサポートするものではなく、地域の雇用の問題、そして日本全体のエネルギー自給や環境の問題の解決にも繋がっていく。 今回の話には、気が付かなかった新たな発想もあった、と小林は言う。
「エネルギーはじゃぶじゃぶと使えるもの、と考えるのではなく、どういう循環をするのかが分かった方がいいと僕も思います。アジアの中で育まれてきた、知恵の世界を僕らのなかでもう少し取り戻すというか、呼びこんでいくことがすごく大切じゃないですか。
こういうことを伝えることが、メディアと関わっている人間のやらなくてはいけないことだと思っています」(小林)。「そうですね。ねじり鉢巻で辛抱しながらの生活はだめですよ。成功例を見て、あれならいいやって、ルンルン気分で生活できる仕掛けにならないと広がらない」(相根)。「確かに。楽しさを伝えていけたら、これは広がっていきますよ。それに、こういうことに興味のあるクリエイターはいっぱいいますから」(小林)。
循環型システムや有機農業のプロ、クリエイターなど様々な人たちがぞくぞくと集まって、そこに住む人と一緒に知恵を出し合って作る、これまでにない復興支援のモデル。民間主導の新たな町並みが生まれる、明るい兆しがここにあった。

ミーティング参加者
佐々木豊志

「くりこま高原自然学校」主宰。長期キャンプや、エコツアー、長期寄宿制度「耕英寮」の運営など、持続可能な社会づくりと人づくりに寄与する自然体験活動のプログラムを提供している。また、宮城県や周辺地域の森林資源の活用を進め、自然と共生する地域社会の実現を目指す「日本の森バイオマスネットワーク」の代表も務める。 ※現在、「RQ市民災害救援センター」のメンバーとして南三陸町(歌津地区)の支援ボランティアも行なっている。
くりこま高原自然学校 http://kurikomans.com/
大場隆博

「栗駒木材株式会社」営業担当。栗駒木材では、植林や伐木造材、原木の輸送や製材の事業、また木質ペレットの製造など、山から住宅まで一貫した仕事をおこなっている。
栗駒木材株式会社 http://www.kurimoku.com/
相根昭典

一般社団法人「天然住宅」代表理事。住まい手の健康と、日本の森林、長年受け継がれてきた職人の技を守る、自然素材を使った住宅づくりのコーディネートをおこなっている。
天然住宅 http://tennen.org/


(情報・資料提供/日本の森バイオネットワーク、イラスト/加納徳博(eco)、撮影・取材・文/編集部)
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