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小出裕章×山戸孝×小林武史 祝島で語る「今、おきていること。これからのこと」(3)

山口県の南端、瀬戸内海に面した上関町に中国電力(株)が上関原子力発電所を作ることに約30年間、一時も止めることなく反対を唱えてきた祝島の人たち。震災による原発事故以降も、島民の方々は変わらず「反対」の声を挙げ、運動を続け、いまなお闘っている。今回、小出裕章先生とともに訪ね、島民と語り合った。(公開対談日:2011年5月29日)

     
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現在、福島原子力発電所で起きていること。

鼎談後は、小出裕章先生に祝島の方々からの質問が。貴重な意見交換会となった。

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――(男性)  福島原発の事故から2カ月以上経っていますが、作業員の方々が被ばくしながら作業するのも大変だろうと思います。作業員は現在どのくらいいて、これからの人員のやりくりなどはどうなるんでしょうか。被ばくということなども含めて教えてください。

小出  被ばくというのはあらゆる意味で危険です。微量であっても危険です。だから日本の国も被ばくしていい限度を法律で決めているわけです。みなさんの場合は、1年間に1ミリシーベルト以上を被ばくしてはいけませんとなっています。これは、1ミリシーベルト以上被ばくすると危険という考えに基づいて決められたのです。では私はどうかというと、私は京都大学で原子力について研究しています。放射線があるような場所で働いています。それで給料をもらって、家族と一緒に生活していられるという身分なんですけれども。それで国からは「おまえは給料をもらっているのだから被ばくのほうはガマンしろよ」と(笑)。なので私は被ばくに関しては年間20ミリシーベルトでガマンしろと。
小出 とはいえ、人間的にはみんな同じなんですけど、これは、みなさんの20倍は被ばくしても仕方がないということなんです。 今回、福島の事故を収束させるために作業をしている人たちは被ばくをしながら作業をしています。彼らは本来、私と同じように1年間に20ミリシーベルト以上は危険とされている人たちです。けれども、そんなことを言っていては仕事にならないので、彼らについてはいっぺんに「250ミリシーベルトまではいい」ということになりました。この事故を収束させるためになのです。それだけのためだけど仕方がない、ガマンをしなければ仕事にならないということですね。
それで汚染の現場に行って、何かしらの仕事をして帰ってきます。それで調べてみたら250ミリシーベルトには達しているわけですから、その人はもう現場には戻れない。そういうことが次々と起きています。詳しい人数は知りませんが、たぶん100人という人が限度に近づいていて、これまでは何百人という人たちが現地で働いて250ミリシーベルトという限度に達してしまい、働けなくなっていると思います。
ではどうするかというと、他県の原子力発電所で働いている人たちが次々に送り込まれるようになるのではないかと思います。でもそれで間に合うのだろうかと私は心配です。この事故処理は、ものすごく長期戦です。これから先「何年」という時間をかけて放射能を閉じ込める作業をしないとなりません。作業員の人もできるかどうかわかりません。しかも、現場の作業というのは、誰もができることではなく、特殊技能を持った人でないとできないことです。みなさんは漁師だと思いますが、漁師としての経験、知識、勘があって船上で魚を釣ることができるんだと思います。何もない人を船に乗せたところで魚は釣れませんよね。原発の作業員も同じです。専門的に知っている人に働いてもらいたいのに、ちょっと働いたら被ばく限度量に達してしまう。
次に国がやる手段としては、作業できる人がいなくなったら、被ばくの限度量を上げることだと思います。今250を500にするとか。私としてはそういうことは絶対にさせたくないですが、でも作業をする人間は必要なわけです。大変なことです。
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山戸  6年くらい前にフランスのフリージャーナリストが被ばく労働のことで取材に来られました。その人も言っていたのですが、フランスでも失業率が高いために、被ばく労働を若い人がやる。被ばく労働をしつづけて、ある程度やったら体がガタガタになってしまって、原発ですら働けなくなる。もちろんふつうの仕事もできないような体になってしまうけれど、決して公にはならない社会問題だと言ってましたね。 福島の事故現場だけでなく、どの地域の原発も、原発そのものがどこかしら弱い人を犠牲にしないと動かないシステムなんだろうと思いました。
――(女性)  私は海でひじきや海藻を採って暮らしています。原発事故のニュースを見ていると、毎日放射能汚染が気になります。海洋に広がったり、雨が降れば地中に入り、それが海に注いでいくと思うのですが、放射能が海に流れてしまうと、日本の海産物はどうなってしまうんでしょうか?

小出  私は海の専門家ではありませんし、食べ物についても詳しくないので、あまり答えにならないと思いますが、海洋汚染については、あまり調査がされていないんですよね。


畑や作物、上水下水などについてはあるんですけど、海についてはあまり言われていないんです。 でも海洋汚染を調べるには海藻が一番いいんです。なぜなら海藻は魚と違って動けませんから。私は福島をはじめに、ものすごい海洋汚染が茨城、千葉と広がっていくんだろうと思います。祝島まで来るかどうか......は定かではありませんが、海は繋がっていますから、全く汚れないということはないかと思います。けれども、福島の海ほどの汚染が祝島で出るということは私はないと思います。みなさんは祝島でひじきを採って、放射能汚染の少ないひじきとして特に子どもたちに食べさせる。安全なひじきを作ることができるのではないかと思います。
――(男性)  子供のことで質問があります。 学校の校庭で遊べるとか遊べないとか問題がありますが、地場産の野菜を使って給食に出したりしているのは、どれほど影響があるのか全く想像つかないんですけど、いかがなものなのでしょうか。

小出  さきほど言った年間1ミリシーベルトの規制を厳密に守ろうとすると、福島県全域を無人にしないとならないくらい汚染地域は広がっています。けれども残念ながら、政府の能力と照らし合わせて現実的にそれができるような状態ではないですね。だから国はなんと言ったかというと、「年間に20ミリシーベルト以上の被ばくをするところだけ避難しろ」としたのです。その中にはもちろん子どももいます。
子どもは放射線の感受性が非常に強い。子どもは細胞分裂を繰り返して大きくなっていくので、そういうときに被ばくの影響を受けてしまうと、細胞に受けた被ばくの傷がどんどん拡大していってしまうんです。

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年齢別に比較すると、赤ん坊は4倍も高いんです。 子供たちに対しては、我々大人はこのような原発を許してきた責任があるわけです。責任のない者を危険にさらすというのは許されないことと思います。そのために私たちは、やるべきことはいくつもあります。そこで汚染された農産物や海産物をどうしたらいいかと思いますか?

(会場から)年寄りに喰わす!(場内笑い)

小出  そうですよね。私はそう思うんです。
電力会社や国に補償してもらうという手もありますが、補償してどうするんですか?穫った魚や海藻や作った米や野菜を、育てた豚や牛を捨てればいいんですか?----捨てるために漁や農業をしているわけじゃないんですよね。そんなことあり得ないじゃないですか。人はみな食べるために魚を穫り、豚を育てるのであってお金をもらうためにやっている仕事ではないじゃないですか。みんな捨てちゃうなんてできないですよね。だから、福島県の野菜や海産物は、そして今後広がるであろう汚染された地域の農作物や海産物は、要するに大人が食べるべきなんです。
さっきも言ったように、大人は放射線の感受性がどんどん鈍くなります。50歳60歳になると、平均の1/100くらいになります。だからいいんです。私も含めてそういう年代の人たちは、原発をここまでさせてしまったという責任もあるわけです。映画に「18禁」という規制がありますが、私は食べ物にもその規制をかけるべきだと思いますね。「60禁」とかね。「汚染度の低いものは60歳以上の人は食べてはいけない」というような(笑)。そういう規制をしてもいいのではないかと実は思っているんですけれども、なかなか賛同してくれる人はいません(笑)。


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――(男性)  報道などで見る福島の事故のデータは、隠しきれなくなったデータしか公に出していないようにみえるんですが、本当のデータをおおっぴらにすることはないのでしょうか?

小出  おっしゃる通り、隠しきれなくなったから出しているというのがあると思います。さらにもうひとつ恐ろしいのは、データが取れていないという可能性もあるかもしれない。事故現場の汚染が非常に高く、当事者である東京電力すら何が起きているかわからないということになっているのではないかと想像します。
私からしてみると、相当恐ろしいことが今まさに起きているなかで、それは大袈裟ではなく即刻全国の原発を止めていいんじゃないかというほどのものです。ですが、それが正しく日本のみなさんに知れわたっていないのだと思いますし、その中には停電したら困るから原子力発電は必要だと考える人がまだいるということに、たいへん驚かされます。電気が足りるとか足りないとかの問題ではなく、原発は即刻止めるべきです。
このような状態になってもなお稼動し続けているというのは、日本という国はほんとうに不思議な国だと思っています。

山戸  福島事故以前の話なんですけど、前に小出先生が「上関は原発を建てないよ」と言っていたと聞いたことがあります。それは何を根拠に言われたんでしょうか? じつは当時は反対運動そのものも非常に厳しい状況だったものなので。

小出  ちゃんとした根拠はあって言ったわけではありませんでした。最初、孝さんが命を奪われそうになったら嫌だと抵抗するのは当たり前でと言っていましたが、そうなんですよね。私も最初からひたすらそれだけでした。原発は危険だとみんな知っているのに推し進めてきた。東京や都心部の人は電気がほしい、でも原発は危険だから過疎地に押し付ける。 私にとっては代替案や妥協策なんて全く興味がなくて、ひたすらダメなものはダメと言い続けてきました。でも勝てなかった。お金の力でみんなを巻き込んでいく歴史でした。でもこの島は違うんです。
30年もお金に屈しないで、自分たちの島を自分たちで作っていくという意識に溢れている。だからいくら金で切り崩そうとしても、切り崩されることなく続いてきている。だから私は(上関町に原発は)できないだろうと言ったんですね。いくら向こうがやろうとしても、地域が自立していこうとしていたらできないなと思ったんです。 ((場内から拍手))

小林  今日はお集りいただきましてありがとうございました。原発事故については解決できるのかどうかわかりませんが、今後も長い時間をかけて解決すべく当っていかないとならないことと感じています。今回の事故で僕らはもちろん、若いミュージシャンや影響力のある人たちも発言したり行動を起こしています。これから先もフクシマを見捨てることがないように活動していこうと思います。 そしてこの島には、今後の在り方の重要な要因がいっぱいあると思います。微力ではありますが、小出先生のような強力な助っ人と島をつなぎながら、原発がなくなる流れを作っていきたいと思います。一緒にがんばらせてください。ありがとうございました。
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小出裕章

京都大学原子炉実験所助教

1949年生まれ。東北大学原子核工学科 卒、同大学院修了。74年から京都大学原子炉実験所助教を務める。原子力工学者として研究していく過程で、原子力発電反対の立場となる。以来、原子力をや めることに役立つ研究を続け、著書、講演を通じて反原発を主張している。著書に『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)『隠される原子力・核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)、共著に『原子力と共存できるか』(かもがわ出版)ほか。福島原発事故後、初の書き下ろし『原発のウソ』(扶桑社)が、今月発売されたばかり。

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山戸孝

1976年生まれ。祝島生まれ。
上関原発建設反対運動のリーダー格である実父、山戸貞夫氏とともに、「祝島島民の会」を支える中心メンバー。本文中にもあるように、映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督)に出演。びわの栽培を行いながら、ヒジキなど海産物の加工、販売などを手掛けている。二児の父。
祝島島民の会 http://blog.shimabito.net/



(撮影/編集部、文/井上晶子)


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