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Chim↑Pom×小林武史「出る杭になる」 (1)

渋谷駅にある岡本太郎の壁画「明日の神話」に、何者かによって福島第一原発を風刺する絵が付け加えられた――。そんな報道が世間を騒がせた数週間後、アート集団「Chim↑Pom」が展覧会「REAL TIMES」で、その作品が自らの手によるものだったことを明らかにし、再び賞賛と非難の嵐を巻き起こした。彼らはなぜ、社会を挑発する作品を生み続けるのか? その真意に、小林武史が迫る。(対談日:2011年6月10日)

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「つまんない」なんて超サイアク

現代社会での常識は、どちらかに傾いているわけではない

卯城 何度かご挨拶させていただいていますが、リーダーの卯城です。

 僕も何度か。

小林 そうだね。よろしくお願いします。

岡田 岡田です。結構なんでもやります。

小林 絵も描くんでしょ?

卯城 彼の絵は味があるタッチで下手なんですけど、1番センスがいいしアート心がある。だから「下手うま」みたいな愛嬌のあるやつは大体、彼がやっていて、この間の絵(明日の神話のコラージュ)みたいに上手くなきゃできないものは稲岡君が描いているんです。

エリイ 今日、このあと3人(稲岡君と岡田君と卯城君)は事情聴取に行く。
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左手前から時計回りに、小林、エリイ、岡田、稲岡、林、卯城、水野
 岡田君と稲岡君が直接、絵を貼ったので。

小林 マジ? 生々しい。

卯城 ははは(笑)。それ、内緒にしておこうって言ったのに。僕、実は一度行ってきて。今日は2回目ってことで。

小林 前に事情聴取に行ったときは、どういう状況だったの?

卯城 まずリーダーである僕が呼ばれて、一人で行ってきました。警察の方もやたら尊重してくれていて。とっつきづらいと思うんですよ。多分、普通の犯罪とかではないから。

小林 「お前ら!」みたいな感じではなかったんだ。

卯城 展覧会もお金を払って観てくれていて。しかも展覧会が終わるのも待ってくれていました。それで、「卯城さん、どうも。渋谷署の者です」「ああ! どうも、こんにちは!」みたいな(笑)。それから日にちを決めて、改めて渋谷署に行ったんですけれど。渋谷署のなかでも、気持ちは目くじら立てたくないけれど、そのままにしておくと、マネしてもOKみたいなことになっちゃう、ということもあるし。
小林 「こんな忙しい時に」と言わないで、「岡本太郎さんだったら、いいって言うよね」という話があることを理解しているというのは、なかなか文化都市だね。それだけ聞くと。

卯城 刑事の人達も、個人的には大体俺らの試みを理解してくれていたんですよ。悪意がある感じではまったくないし、絵や壁をまったく傷つけないように気を付けていたことも全部わかってくれていて。

小林 すごいことじゃん。つまり、理解してくれるだけのキャパシティがあったという言い方もできるけれども、何かが充分に伝わっているんだよね。

卯城 確かに刑事さんには作品は伝わっていたように思う。まぁ、作品を罰することはできないですしね。あと、やっぱり撤去するとき生で見たからかもしれないけれど。

小林 「こいつらが、何でこんなことをしなくちゃいけなかったんだろう」ということがわかりやすい話だよね。しかもアートという立場やアーティストという態度、というのが、わかりやすく伝わったんじゃないのかな。

 でも、もしかしたら聞き出しているだけなのかもしれないし(笑)。
小林 なるほど、上手(うわて)でね(笑)。でも、現代社会での常識って、確実にどちらかに傾いているというわけではないと、僕は思う。多分、警察にも色々な考えの人がいるし、メディアにも「アーティストとしては、すごくまっとうな態度なんじゃない?」って思う人がもちろんいると思うけれど。 それにしても一般的なメディアの出し方は酷かったよね。

水野 「落書き」っていう間違った報道がいっぱい出ちゃったんで。直接書いた、という印象が一般市民には強いのかなっていう。

卯城 いろんなメディアの人と話をしてみると、どうやら夕方のニュースや朝刊の社会面を担当している記者には「放送や朝刊までに何か素材をとらなくちゃいけない」みたいな、報道陣のまっすぐな熱意、というか締め切りがあるらしいんですね。で、内容はもう上で決まっているらしく、現場の記者は検証とかグレーとか別の次元からものを見てみよう、という感覚でやってるわけじゃないらしいんですよね。でも、日にちを一週間置いただけで、報道番組の特集とか、新聞の文化部の人たちとか、海外のメディアが結構来るじゃないですか。そういう人たちは、基本「時間をかけて聞いてみよう」という姿勢の人が多いですよ。


小林 なるほどね。

エリイ 「上からスプレーで書いたり、バシャーってやったりしたと始めは思った」って、言う知り合いも結構多くて、その距離感にびっくりした。

卯城 みんなそう思っているよ。ネットとかでちょっと調べたら、そうじゃないってことがわかるんだけど。

エリイ でもトレンドに詳しい人は、かなり調べているのかな? 最近、飲み屋とかちょっとしたパーティーに行くと大人気だよ。上の人とか出てきて「エリイちゃん、超会いたかった~!」とか、「Chim↑Pomと、ぜひ仕事したい」って。すっげ~人気者。超人気だよ、エリイ。

一同 (笑)。

エリイ 同年代の男の子からも「Chim↑Pomでしょ? 僕、すごくいいと思っていたんだよね。ずっと話題にしていて」みたいに、超モテる。最近なんかきた(笑)。
卯城 俺たちが警察に行っている間にね(笑)。俺たちはそういう思い、一回もしたことないからね。

 してないね。

小林 つまり、エリイが行っているところでは、ある程度情報が回っていて、面白いことがないかなって思っているということだよね。

エリイ Chim↑Pomが一般の人たちのバロメーターになっているみたいで。「Chim↑Pom知ってる? 超イケてるよね」って言うのは面白い子、みたいな。最近って、自分で情報を取りにいく時代じゃない? それをどれだけやってるか、ということが目安になりやすいって。

 でも俺らなんか、会う人たちがアート業界でしょ。逆に賛否両論があるわけで、それもウザいんだよね。

卯城 「卯城さん、会えて光栄です」って感じでありがたいんだけど、そのあと語り始められる芸術論が超ダルい(笑)。
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均一化された価値にぶら下がる無党派層

 今回すごく「売名行為だ」って言われたけれど、あれがわかんなくない? まぁ、売名と言われたら、売名したような気もするけれど、そんなつもりもないし。

エリイ プロモーションの一環だって、みんな言っているの。でも、みんなチョコレートを売るときに「チョコレートを発売します」って言うでしょ? うちらだって、展覧会やるときに「展覧会をやります」って言う。ただそれだけ。

卯城 でも別に俺たち、プロモーションにも使っていないからね。You tubeに流したCMでも他の作品と同じ扱いだし。というかマジでいつもと変わらないくらいに、ただの作品制作だったよ。作家が作品を作って発表することを売名行為とは言わないと思うんだけど、でもまぁ、みんな作品の内容のことを言ってたわけじゃないしね。

 「制作で人に伝えたい」という気持ちを売名と言われると難しいよね。

岡田 それは、情報を受け取る側の読み解き方が問われるとこで、伝えたいのは、Chim↑Pomって名前じゃないのは明らかだし。寂しい限りだね。
卯城 だから、さっき水野君とも話をしたんだけれど、菅直人が下ろされることになったでしょ。別に俺も、菅直人のことなんてなんとも思っていないんだけど、「そんなにミスしたかなぁ?」と思って。

小林 そうだよ!

卯城 いきなり「支持しますか? 支持しませんか?」って聞かれたときに、どちらでもない人は「支持しない」に流れるじゃないですか。うちらの場合も似てるっていうか、スルーして構わないような存在じゃなくなってくると、みんな、どっちでもいいよ、じゃなくて認めるか認めないか立場をはっきりしなくちゃいけなくなる。特にうちらは、皆に無関係なことはやらないし、やり方も社会に直接的だから。でも目立たないのに、美術館とかでは重宝される作家もいるでしょ?

エリイ いる。しかも目立たない芸術家って、着々と作品の値段を上げていって、着々と儲けていって、着々とコアな人たちに「あらぁ~、これいいわねぇ~」って言われてウケて。

卯城 それって目立たない、というか地味でいるために社会との間に壁をつくってるだけな気がするんだけど。そもそもアート業界自体がそう。
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エリイ 派手さには欠けるが金は入ってくる、みたいな。

卯城 そういう人達って、要は無党派層に支えられているんだよ。まず関心のない人達がいっぱいいるって状況の中で、みんなに態度をはっきりさせなくてもいいっていうか、どっちでもいいし、みたいな。それでリスクを減らせるんだよね。でもそういう付き合いってどこか表面的っていうか、だって人の心を信じてないじゃん。ハードな付き合いをしたって、人類はそれに意義や魅力があったらちゃんと意味を見つけられるのに。

小林 原発のことにも関わってくるけれど、表面は安全です、みたいな顔をして、世の中そういうことになっているからと、色々な価値を均一化して飲み込ませることがあると思うんだよ。「これって、おかしくないか?」ということに意義を申し立てさせない、というかさ。そのことに満足できない人間は、つまらないから何かをしようとするんだよね。おまけにアートって、道徳のように成り立っているのとも違うじゃない。

卯城 うちらはいつも取材で「なんでやっているんですか?」と聞かれたとき、「面白いから」って答えている。というか、つまらないって批判だけはこれまでゼロだよね。
エリイ 「つまんない」って、超サイアクだよ。 でも、エリイは悪目立ちしちゃうんだよな〜。生まれたときから、とにかく超目立ってしょうがなかったの。

小林 目立つようにしてるじゃん。つけまつげは、その願望の象徴でしょ?

エリイ つけまつげは、目立つ象徴じゃないよ?

小林 目立ちたいわけじゃないの? かわいくありたい?

エリイ 目立ちたい訳じゃないよ、全然。かわいくありたい、ね。

小林 でも目立たなかったら、かわいさって見えてこないじゃん。

水野 だけど、クラスで4番目にかわいい子が、1番人気がある。

小林 それはあるね。

卯城 ホラ! 1番に好き嫌いのグレーがない法則(笑)。1番がいいんでしょ?

エリイ 1番がいいし、1番じゃないのは嫌い。


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Chim↑Pom

2005年、エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求で結成したアート集団。「生と死」をテーマにした作品や、現代社会に全力で介入した社会的メッセージの強い作品で評価を得て、国際展への参加や2010年に開催された「アジア・アート・アワード」で日本代表に選ばれるなど、海外からの注目も高い。昨年3月には初の作品集『Chim↑Pom』(河出書房新社)が刊行された。今年5月には東京・無人島プロダクションにて「REAL TIMES」展を開催。評判を呼び、6月に大阪でも巡回展をおこなった。 http://chimpom.jp/



(撮影・取材・文/編集部)


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