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テリー伊藤×小林武史「エンターテインメントで復興を」(1)

テレビ、ラジオ、雑誌と、あらゆるメディアに登場し、活躍しているテリー伊藤さん。震災後、メディアに変化はあったのか? いまエンターテインメントに出来ることは?(対談日:2011年6月28日)

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しんどいところから生まれる力

改めて、エネルギーの話を

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テリー 小林さん、色々やってますね。僕、よく分からないんだよね。小林さんがやってるエネルギーのこととか。

小林 僕とテリーさんで改まってエネルギーのことや政治のことを話すのなんてきっと初めてですよね。今までは、エネルギーのことや政治のことなんて、そうそうみんなの話題の中心になることではなかったんじゃないでしょうか。でも最近ではテレビを見ていればすぐに菅総理の姿が出てきて、エネルギーの話が始まって......という状況になりましたよね。これはしばらくは続きそうです。

テリー うん、そうだね。

小林 震災後、政局なんかやっている場合じゃないと言われながらも、結局はそこに色々持ち込まれてしまう。そこでしか未来が決まらないように、政治のシステム......というか、日本のシステムがそうなってしまっているんですよね。僕らがいくら声を出しても、関係ないところで政局はどんどん変わっていく。


小林 だから僕らも注視するしかなくなる。囲碁将棋をみているように、「また菅総理が次の一手を繰り出しました!」という感じでね。テリーさんは日々メディアのど真ん中にいる。報道系からバラエティまで、色々なメディアの中にいらっしゃる立場から、いろいろ話していただきたいと思いまして。

テリー この記事が出るのは7月頃かな? 一週間とか10日で、政治って動いちゃうかもしれないけれどね。今の状況を見ると、菅さんは鈍感力でけっこう頑張っていますよね。

小林 鈍感力(笑)。 

テリー 今までの自民党の政治家って派閥で数が多いと総理大臣になれていたじゃないですか。
だからみんなから支持されなくなって派閥の数が少なくなると、自分から辞めていってましたよね。今までの歴代の総理は。けれど、菅さんは市民運動から成り上がってきているからか、一人でいることに怖さを感じていない気がするんですよ。

小林 そうかもしれないですね。

テリー 逆にこういう状況になってね、なんか元気になってきてませんか?

小林 まあそうですね(笑)。思えば、最初に元気を取り戻したのは、僕が孫さん達と首相官邸に行ったあの日(※6月12日に首相官邸で行われた、自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」の日)だった気がします。あの日を境に菅総理が元気になり始めた。
テリー その頃なんだろうね。「菅の顔を見たくないなら法案を通せ」発言があった頃でしょ?

小林 それはエネシフ(※6月15日に国会で行われたエネルギーシフト勉強会)ですね。そうですね、たしかにあの辺です。僕もあの場にいたんですけど。会議の内容というよりは、「菅の顔を見たくないなら法案通せ」というあのフレーズだけがテレビでも繰り返し流されましたよね。 

テリー 菅さんの主張しているのはエネルギー法案(※再生可能エネルギー固定価格買い取り法案)ですよね。実は僕はよく分からないんですけどね、その内容が。なんか、よさげなことを言っている感じはするんだけれど(笑)。とにかく一番の正義なんですよね。これは野党も与党も反対しにくいじゃないですか。


テリー きっとね、日本中で「どうしても原発が欲しい」なんて人はもう誰もいないんだと思うんですよ。原発を日本から減らしていこう、なくそうということは、子供の交通事故を100%なくそうと言っているのと同じで。

小林 まあ、似てるかもしれないですね。

テリー 交通事故をなくすなら車をなくせばいい、というのと近いところがあって。

小林 うーん、それは、近いところはありますけれど、僕は違うと思っていますけれど......。

テリー まあ、極端な言い方していますけどね。誰しも子供の交通事故はなくしてほしいじゃないですか。原発だって欲しい人は誰もいないですよ。代替えのエネルギーがちゃんとあれば。日本人誰しもがそう考えていると思うんです。じゃあ、それがどれくらいの時間で実現できるのかなあと思うんですね。
小林 その通りという部分も多いにあると思うんですが、ただ、交通事故の事と、原発事故には違いがあると僕は思うんです。車や飛行機に乗ることも、たしかに、ある程度のリスクを背負って覚悟していかなければならないことです。それを言えば、東京にいることだっていつ大地震があるか分からないし、生きていくにはみんな、「今日死ぬかもしれない」というリスクは背負って生きていますよね。まあ、テリーさんは「俺は死なない」って思っているかもしれないですけど(笑)。でもそれは交通事故にしても地震の被害にしても、原因や起こる事をある程度想定できるリスクなんですよね。ただ、原発のことってね。死ぬ、死なないということだけじゃなく、子供たちや生き物、広く言えば地球に対して、どういうことが起きたらどう影響を与えるのかということが分からなすぎるから、覚悟のしようがないものだと感じるんですよ。だからみんなこれだけバタバタしてしまう。どの情報を信じていいのか分からない、大丈夫かどうかが分からないという状況でしょう?
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テリー 本当に、それは誰もわからないですよね。最近は慢性放射線量という言葉も出てきていますよね。この状態が1年も2年も続いた時にどうなるのかというのは、政治家も専門家も誰も把握していないわけですからね。

小林 そもそも原子力というものを見つけてから、まだ100年も経っていないわけですからね。世界でも、"過度期のエネルギー"なんて言われている。これからは太陽などの自然エネルギーを上手に使っていけるようになって、原子力エネルギーは段々減らしていくという潮流にあるんだと思うし、そう思いたい人はたくさんいると思うんです。

テリー 今回は不幸なことに原発の事故が......まあ、人災なのかどうか分からないけれども、とにかく被害が出てしまいましたけれど。
この出来事に対してちゃんと検証すべきだと思うんです。それはなにかというと、日本には原発をなくしていこうという感覚があるかもしれないけれど、一方で中国やインドはまだ、どんどんやっていこうとしているわけじゃないですか。原子力は国を伸ばしていく特効薬みたいなところもありますからね。日本はこれだけの犠牲者を出して、これだけ混乱しているなかで、なくそうといっている。でも、ただやめてしまうだけではここから先なにもない。一方ではやっていこうとしている国があるわけだから、事故の中で起きたことをちゃんと検証して、そういう国に対してアドバイスができるようになることも大事だと思うんです。日本がいくら自然エネルギーで頑張っても、もし中国で原子力事故が起きてしまったら......。

小林 そうなんですよ。偏西風でがんがん日本に流れてきちゃいますからね。
テリー きちゃいますよね。その時に「うちはやめてたのに」といっても仕方ないと思うんですよ。そこのところを、反省を含めて検証していくということをしていかないと、とも思うんです。

小林 それは本当にその通りですね。同時に、実は中国でも自然エネルギーの開発は進んでいるという側面もあるんです。ヨーロッパでもイタリアは脱原発を宣言しましたが、そういう動きが中国やアジアに移っていって、彼らの流れも変えていけるという可能性もあるとは思うんですね。

テリー なるほどね。

安定した経済に頼りきるのはもうやめよう

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テリー 電力量の問題はどうなるんでしょうね? 大陸だと近隣の国から買ったりできるわけでしょう? 日本は島国だから買えないですよね。

小林 本当にそれは仰る通りなんです。だから少し時間をかけて考えていくという選択肢はとらざるを得ないのではないかと僕は思っています。大阪の橋下知事などは、今年の夏が乗り越えられれば、来年以降も原発なしでいけるんじゃないかと、かなり強気で仰ってますけれどね。僕はもっと検証が必要なんじゃないかと思っています。

テリー 対策として企業の節電が言われていますけど、どうなんでしょうね?

小林 夏のピークタイムを避けるよう、作業時間を変える努力をするというのは、国民から企業にお願いしてやってもらうしかないんじゃないかなと思います。この国は今までずっと経済がなによりも優先だったから、経済活動に少しでもブレーキをかけるようなことというのはしてこなかったんですよね。


でも、今はもう「経済がすべて」という時代は終わったと僕は思うんですよね。少なくとも、命や、そういうものと比較して......ということですけれど。テリーさんはどう思いますか?

テリー 僕もそう思う。僕の年になるともう、どうでもいいですよね。

小林 どうでもいいですか(笑)。

テリー うん。僕はもう「焼肉をたらふく食いたい!」とか思わないんですよ。ただ、僕たちの世代というのは、若い頃に焼肉をたらふく食って、今になってヘルシーになろうと言っているような世代だから。
俺なんかもう食事をしても腹七部しか食わないですよ。あんまり欲もないしね(笑)。

小林 年代的にね(笑)。

テリー そう。でもね、子供たちに最初からヘルシーにいけ、ヘルシーの方がいいんだというのは、はなからの教育になるよね。経済のことも同じで、俺達は好きなことやってきて、バブルも経験してふらふら遊んできたからいいんだけど、今の若い人達はどうなのかなあと。

小林 それはね、やっぱり面白くないとダメだと思うんですよ。
経済的なところが最優先じゃないと言ってもね、つまらなくなるのではなくて......。 サステナブルだからおとなしい、というわけじゃなくてね。電力をジャブジャブ使わなくても、考え方を変えることによって、もっと面白くなる余地はいっぱいあると思うんです。

テリー それはそうだよね。

小林 戦後の日本は経済第一でやってきたかもしれないけれど、それは高度成長期だった。そこにはワクワクすることや面白いことがたくさんあったと思うんです。でも、ある程度安定してしまった大きな経済に委ねてしまうと、どうしても与えられるものが均一化されてしまって。


段々面白くなくなってくるのではないかと思うんです。今の若者は、粒の揃ったものを与えられた方が食べやすい、という性質もあったりするのかもしれないけれど。

テリー そうかもしれないね。

小林 既存の、安定した経済というものにあんまり頼り過ぎないでやっていくということです。上から「安定供給ですよ」と降ってくるものを受け取るのではなくてね。今あるものはあまり信用できないと思ってかかった方が、ぼこぼこ色々な人やアイデアが出てくる気がするんですよ。なんでもそうじゃないですか?

テリー そうだよね。
人はやらなきゃいけないという状況とチャンスが揃えばやるからね。

小林 僕らからみたら、テリーさんなんてまさに、そういう状況とチャンスを使って、ものすごい適応力と反応力でいろいろやってこられた方ですよ。

テリー あんまりよくわからないけれど......。

小林 自分のことってよくわからないかもしれないですけど(笑)。すごく面白い独自の生き方をされていると思います。テリーさんみたいな人が「あんまりでかいもんに頼らないでも、自分でなんとか楽しくやれるよ」と言ってくれたら、ものすごい説得力がありますよ。
テリー そう(笑)?でも、今の人達も、いろいろな楽しみ方を知ってるんだよね。ファッションなんかでもそう。洋服なんて安くまとめてるじゃないですか。上から下まで7~8千円で、うまいコーディネートしますよね。なるほど、それなかなかいいなあという。もしかしたら本当はもっと高いブランドものが欲しいのかもしれないけれども、「これでいいや。ここは1万円くらいで押さえて、後は違うところでお金使おう」という、そういうバランスはすごい持ってるなあと思うよね。

小林 それはありますよね。

今の若い人たちのチカラ

小林 僕、先日、被災地の高校生たちが集まるところに行ってね、ピアノを弾いて、いろいろと喋ってきたんですよ。にわか先生みたいなね。そこにいる子達というのは、震災で大学に進学することとかも諦めていて、この先に不安をいっぱい持っている子達だと言われて行ったんですけれど。

テリー どうでした?

小林 正直、最初はみんな途方に暮れているように見えたんです。でもね、「君らが当たり前だと思っていること......例えば親が生きているとか、何の苦労もなく大学に進学できるとか、そういうことは、君らが思うほど当たり前じゃないぜ」という話しをしたんですよ。そんなの当たり前と思わなくていいんだよと。自分で自分の当たり前を作れるよ、ということをね。そうしたらみんなの表情が変わってきた。話し始めたら実はみんなちゃんとやる気があるんですよ。自分は漁師になりたいんだという子に、「小林さんはどうやって曲を創るんですか? どういう風に降りてくるものなんですか?」と聞かれたんですけどね。
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僕もね、真剣に考えて。「何をやらなくてはいけないのか、歌手が誰かとかも含めて、そこにあるものや与えられたものを使って調和を生み出そう、ベストなことをやろうとするだけ。水産高校の君が魚の漁に出る時も1日として同じ日はないだろうからそこでベストを尽くそうとしているはずで、それと僕の曲作りとは同じだよ」という話をしたんです。そしたら「おおーっ!」て共感してくれてね(笑)。みんな自分の中にすごくやる気を持っているんですよ。
テリー 一度は落ち込んでも、更に強い想いになるということもあるよね。今回の震災で震災孤児になってしまったりと、大変な思いをしている子達がたくさんいると思うけれど、あそこからすごい人が出てきそうだと僕は思ってるの。

小林 そう期待したいですよね。

テリー しっかり生きてもらうしかないよね。
自分も親戚のおやじだったら、いつまでも人に頼ってるんじゃないぞっていいますよ。 それこそ戦後の大変な時って、焼け野原の中で育って、それを目に焼き付けてパワーにしてきた子達がいっぱいいたと思うのね。それが日本を変えていったと思うんですよ。今回の震災でも、東北でしんどい思いした子供たちは、そこから得た物も大きいんじゃないかと思うんです。そこに期待したい。とんでもない子供が出てきたら嬉しいなと。しんどい思いだけで終わらないでね。
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テリー伊藤

演出家。
1949年12月27日生まれ。東京都出身。「天才・たけしの元気がでるテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」などのテレビ番組を手がけ、注目を集める。現在は、演出業の他、テレビやラジオ出演、新聞・雑誌・携帯サイトの連載など、マルチに活躍中。クルマ、ファッション、野球好きでも有名。



(撮影・取材・文/編集部)


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