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テリー伊藤×小林武史「エンターテインメントで復興を」(2)

テレビ、ラジオ、雑誌と、あらゆるメディアに登場し、活躍しているテリー伊藤さん。震災後、メディアに変化はあったのか? いまエンターテインメントに出来ることは?(対談日:2011年6月28日)

   
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前よりおもしろくなる復興を

東北地震が私たちに与えたもの

小林 東北だけじゃなくて今回のことは日本中に影響があると思いますね。

テリー 僕ね、みんな、自分よりも不幸な人を見つけられたと思うんですよ。

小林 ......なるほどね。

テリー 僕ね、自分が不幸な時に、自分より不幸な人のことを考えるんですよ。例えば車をぶつけちゃった時も、人を轢かなかっただけよかった、とかね。そういうことってみんなあるんじゃないかな。そこいくと今回なんてね、本当にひどいですよね。普通の生活してたあんなにたくさんの人が死んじゃったんだから。その後もあんなに大変な思いをしてるんだから。そんな不幸ってないよね。だから、変なことだけど、家に引きこもってる場合じゃないだろうとか、今の自分の状況に拗ねてる場合じゃないだろうとか思える人って増えてるんじゃないかなと思うんですよね。自分が不幸だと思っていたことが小さなことだったと思えれば、人生にもういちどファイティングポーズとれるかなあとね。
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小林 そうですね。

テリー 変わらなくちゃだめですよね。3.11をきっかけに。変われなかったら、何のために日本がこんな打撃を受けたんだと思っちゃいますよね。それは原発についてもそうだと思うんですよ。今まで通りに原発のことを考えていていいわけは絶対になくて。日々の暮らしにリスクを背負わされて、節電という飢えも経験させられて、苦しい思いをしているかもしれないけれど、そこから新しい日本が生まれるという気もするから。ただ正直言ってその先がまだ見えないんですけどね。
再生エネルギーというものがどれだけなのかというのが。専門家の人にはそのあたりを教えてほしいなと思うんだけれど。

小林 それは僕も本当に知りたくて、色々な専門家の方々と話をしていることなんですけどね。色々な手立てはあると思うんです。例えば、ソフトバンクの孫さんなんかは、耕作放棄地を有効活用してソーラーパネルをおけばいいのではと提案しています。日本には土地がないと言われていますが、実はかなり広い面積の耕作放棄地が何にも使われていなかったりするんですね。工夫次第で、やりようは色々とあると思うんです。
テリー そういうところを見直そうという努力をしていないだけなんですよね。

小林 そうなんですよ。そういうことに一つひとつ取り組んでいけばなんとかなるんじゃないかと。僕らは今、千葉の農場で農業にも取り組んでいるんです。ap bankでは食に関するプロジェクトも始めました。僕は食とエネルギーというのは人間が生きていくうえで本当に大切なことだと思ってるんですよね。「食べる」という、「命をいただいて生きていく」ということには、できるだけ自活できるようになったほうがいいなとは思っているんです。


テリー 日本は食料自給率が低いんですよね。

小林 そうですね。近代化が進んで先進国になればなるほど、第一次産業が減っていくという話があるじゃないですか。第一次産業は後進国に回されていくという。このパターンがね、いい加減、終わるべきなんじゃないかと思うんですよ。

テリー 僕もそう思います。

小林 後進国というもの自体がいずれなくなると考えた方がいい。
世界には必ず貧しい国が出てくるという原理的な話はありますけれども、それでもかなり加速度的にフラットになってくると僕は思っていますから。それに農業は、本気でやるとすごいクリエイティビティがあるものだと思うんですよ。自然の力と呼応しながら美味しいものを作っていくというのはすごく面白いことだと。

テリー 僕も農業はいいと思うんだ。

小林 でしょう?
テリー うん。すごくそう思う。

小林 食べるものを創る行為ですから。生きていて食べることくらい楽しいことはないですからね。僕は未だに大好きなんですよ、食べることが。テリーさんと違って、今でもお腹いっぱい食べちゃいます(笑)。食べることが好きな人ってたくさんいますしね。

テリー そうだよね。食べることは活力になるからね。

自粛モードもそろそろ終わり

小林 最近はメディアになにか圧力がかかっているんじゃないの?と言う人が多いですけれど。テレビなんかでは原発のことに触れちゃいけないモードになってるのでは?とかね。でもそんなことないんでしょう?

テリー まったくないと思いますよ。

小林 テリーさんがテレビに出演するときに、こういうことを言ったらNGですよ、みたいなことはないですか?

テリー まったくないですね。

小林 それでもね、3.11以降、テレビは元気なくなってる気がしますよね。

テリー それはありますね。まずスポンサーがつかないでしょう? それとやっぱり、言葉を微妙に選びますよね。規制されている云々じゃなくてね。
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この前ね、お母さんとおばあちゃんが津波に流されて、お父さんと子供だけが残されている家族を紹介している番組があって。 お父さんが料理をしているシーンがあったんですよ。お父さんは子供たちのためにチャーハン作ってたの。みんなそのVTRみて感動したりしていてね。でも僕は「お父さん、炒め物はだめだよ」ってコメントしたの。

小林 なんでですか?
テリー だって、子供にチャーハンだけのごはんなんてだめじゃないですか。脂っぽいし。

小林 ははは。

テリー もっと煮物とか作らなきゃってね。焼き魚を作れとか。毎日毎日、育ち盛りに炒め物ばかり食わしたらだめだよって言ったの。それに、炒め物なんて簡単で料理のうちに入らないよってね。
小林 なるほどね(笑)。

テリー でもね、そんなことすらも今までは言えない雰囲気だったの。最近やっと普通のことが言えるようになってきましたよ。

小林 自粛モードになっていたところが、少しずつ、普通に戻ってきているということですね。

今こそエンターテインメントを

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テリー この前、話したいことがあって政治家の亀井静香さんと会ったんですよ。僕ね、東北にエンターテインメントがついたカジノを作ってくれと言ったんです。

小林 カジノですか?

テリー いま、みんなで東北に義援金支援とかやっているでしょう? 復興させようと。でも正直言って、東北は震災前からどんどん過疎化していたんですよね。お年寄りが多かった。きっと復興といっても元に戻すだけだとまたそうなっちゃうと思うんですよ。雇用といったってたいした雇用がないかもしれない。瓦礫の片付けとか、建築関係は一時的に増えるかもしれないけど、継続できるかは分からないですよね。それならね、音楽好きな人やクリエイターの人達とかね、若い人が集まるような、エンターテインメントのついたカジノを、と。ラスベガスみたいに劇場もあったりしてね。近くの飛行場もハブ空港にして、みんなでどんちゃん騒ぎする、と。

小林 ははは(笑)。


テリー そういうのがあると、新しいクリエイターも育つと思うしね。そういう方向性も取り入れないと、勢いみたいなものが生まれないのかなって。今はみんなね、「東北が頑張ってるから応援する」という感じなんですよね。その「頑張ってるから応援する」というのはこちら側の方が目線が上という感じがしませんか? でもね、どこか楽しいところに足を運ぶというのは、向こうの方が目線が上という感じがするでしょう? 「ハワイにいって、いいお姉ちゃんとうまいもの食いたいな」というのは微妙な憧れが入っていてハワイの方が上じゃないですか。

小林 まあ、そうかもしれないですね(笑)。
テリー 頑張れという激励はね、震災後、どうしたって減っていってしまいますよ。ボランティアの数だってそうなんでしょう?

小林 そうですね。一度激減してしまって、今は少し戻ってはいますけどね。

テリー そういうのは仕方ないんですよね。首根っこ捕まえて、なんで行かないんだ!と言うものでもないしね。でも東北においしいものがあれば、みんな行きたくなって行くじゃないですか。その"おいしいもの"を作らないと。
小林 それは本当にそうですよね。自由競争のこの社会では、魅力あるものを作って、みんながそれを選ぶ......というのが最初のルールですからね。やっぱり魅力ある東北、魅力ある日本にならなくては。ラスベガスみたいなのがいいかどうかは、僕にはわからないですけど(笑)。

テリー 即効性があるかなと思ってね(笑)。海外の人が来てくれるから。どんなところにもそういう下世話なものって必要だと、僕はそう思ってるんですよ。

小林 ラスベガス好きですか? けっこう行きます?


テリー あんま行かないけど。

小林 ははは。

テリー 別にニューヨークみたいなのでもいいかもわからないけれども。なんかそういうものを作っていくことも大切だと思うんです。

小林 僕も、つまらない町づくりはしてほしくないと思っています。発想が面白い人が集まってああだこうだやらないと。まあカジノがいいかどうかはわからないですけど(笑)。僕は、日本人ってあんまり賭け事で人生を捉えてない感じがしちゃうから。

テリー とにかく、楽しい人は東北に行こうと思うようにね。そうしないとね。

小林 本当にそうならないとダメですよ。

テリー カジノの話もそうですけどね、なんか今、言いにくいことってあるじゃないですか。
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でもね、たとえば僕だったら農業やってたって、被災地にいたって、夜はきれいなお姉ちゃんと遊びたいと思うと思う。 そういう方が人間らしいと思うの。そうじゃなかったらそこから新しい文化が生まれないし、新しい欲望も生まれないし、新しいカルチャーが生まれないんだよね。

小林 たしかにね(笑)。まず、男が女を追っかけなかったら子供ができなくなってしまう。それは最もサステナブルじゃないですよ。

テリー そうですよ。そういう物の本質的なことってすごく大切だと思う。農業もカジノも同じくらい大事だと思うんです、僕は。
小林 じゃあ、なにかエンターテイメントのことを考えましょうよ、一緒に。

テリー そうだね。才能がある人達が出てくるような気がするんですよね。ボコボコと。ミュージカルやるのか、絵画なのか。この前、石原都知事にも言ったんですよ。金を出してくれと。例えば東京アカデミーの東北分校という形にしたっていいじゃないかと。

小林 確かに、悪い話じゃないですね。東京都がお金だして、分校を作るとかいうのは。直接福島に作るかどうかは、ともかくですが。でも僕らだって福島で作る電気をジャブジャブ使ってきたんだから、東北に楽しいところ作ろうよというのを僕らがやるっていうのはね。
本当に人が楽しむために、一生懸命お金もつぎ込んで、見たことないもの作ろうとするというのはいいですよね。 しかも普通の人に開かれているというのがね。そういうエンターテイメント、みんながそこにいくといっぱい楽しめるというものを。

テリー 僕たちに本当にできることってそういうことかなと思うんですよね。

小林 今日はテリーさんと政治の話までしようと思っていたのに、アッという間に時間がきてそこまでいけなかった。またゆっくりお話しましょう。今日はどうもありがとうございました。
   
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テリー伊藤

演出家。
1949年12月27日生まれ。東京都出身。「天才・たけしの元気がでるテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」などのテレビ番組を手がけ、注目を集める。現在は、演出業の他、テレビやラジオ出演、新聞・雑誌・携帯サイトの連載など、マルチに活躍中。クルマ、ファッション、野球好きでも有名。



(撮影・取材・文/編集部)


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