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上杉隆×小林武史「ガラパゴス化した日本のメディア」(3)

政府の発表、テレビや新聞のニュース、専門家の意見......。僕らが与えられている情報は何が正しくて、何が間違えているのか。メディアの内側を見てきたジャーナリストの上杉隆さんにその実情を語ってもらった。(対談日:2011年9月13日)

     
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真実を報じないメディアは責任を問われるべき

鳩山家の元秘書

小林 ちなみに、今『報道ステーション』なんか見てると、古舘さんとかが反原発に関して非常に心がこもった感じに見えますけど、あれはどうなんでしょうか。

上杉 そうなんですか? 僕、テレビ観てないから分からないんです......。

小林 ああ、そうか(笑)。

上杉 もう全く何の期待もしてないんです、テレビには。『報道ステーション』も当初はいろいろディレクターと話したりしてましたし、僕もかれこれ10年ほどテレビの内側にいましたから、そのやり方も、情報番組の作り方も見てきました。でも、まあ、自己変革は無理だなと。企画というか今のテレビ局の組織のあり方全体を変えない限り、報道局からの圧力という自主規制で、異論は押さえこまれてしまいます。『とくダネ!』も『ミヤネ屋』のレギュラー時代も、僕の発言は報道局を刺激するんですね。そうすると、「上杉が出るなら素材は貸さない」とか、そんな圧力ばっかりでした。そのたびにこちらは、更に上の幹部に密かに話をしたりして、上はOKと言っているけれどだめなんですか?といって進めざるを得ない、ということもありました。報道局から圧力かけられたらその更に上に言えばいいんです。

そうすると止まるんですよ。でもそんなことばかりに労力をかけていると、何のためにテレビにでているのかなと思って嫌になってしまって。

小林 でも上にパイプを持っているというのがすごいし、ちょっと意外ですよね。上杉さんってどちらかというと排除されているというようなイメージがあったから。異端児とういか(笑)。

上杉 それはやっぱり鳩山事務所で秘書をやっていたことが大きいですね。たとえば記者クラブメディアの盟主ともいうべきナベツネさん(※読売新聞グループ会長)も、新人時代は鳩山一郎首相の番記者(密着して取材を行う記者)だったんです。だから鳩山家の、要するに由紀夫さん、邦夫さんのおじいちゃんに育てられたというわけなんですね。また氏家齊一郎さん(※元日本テレビ放送網会長)のおじいちゃんは小石川の弁護士だったんですが、鳩山和夫さんといってその一郎さんのお父さんと同僚弁護士だったんです。鳩山和夫さんも国会議員で文部大臣を経験するんですけど、最初の後援会長でもあるんですよ、氏家のおじいさんは。横綱審議会の委員長は、石橋義夫さんという共立女子大の理事長ですが、石橋さんは鳩山一郎さんの犬番だった人です。

小林 犬番?

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上杉 犬の世話をする人です。そこから出世して鳩山家の秘書になって、後に共立女子大の理事長にまでなるんです。よく話してますよ。「私は犬番から......」と(笑)。日ソ共同宣言の時に、半身不随の一郎さんに随行して遠いモスクワまで行った。それまでの功績を買われて共立女子大学に入って、共立は鳩山家が創立したのものですから、理事長になるわけです。実はナベツネさんが右も左も分からない新人時代に、犬番だった石橋さんがこっちから入って来いよと連れていってあげたというエピソードがあるんです。二人はそれ以来の仲なんですよ。だからナベツネさんが横綱審議会を退くとき後任に石橋さんを選ぶんです。さらにその石橋さんが退ぞくときにはナベツネさんの後輩だったNHKの海老沢勝二さんに譲るんです。そのあたりは、みんなつながっているんです。そうすると僕自身も、その鳩山家にいたとなるから、そういった面々の方々とは昔から顔見知りになるわけです。僕も最初の頃は鳩山家の元秘書というイメージですから、「大変だなあ、ニューヨーク・タイムズなのか?」なんて言われたし、そのうちフリーランスになると、

上杉 「上杉君、うちの番組でがんばっているんだってな」と目をかけてもらったりした。 でも、途中から記者クラブ攻撃を始めたあたりから、ナベツネさんに「そんなパパラッチみたいなのはやめろよ」と言われるようになって、しまいにはこっちがそればっかりやってきたら、「あいつだけはつぶせ」という風に変わってきた。でも、彼らにとっては僕は扱いにくいでしょうね。鳩山家時代にお互い知っていることを知っていますから。そうすると、喉元に匕首を突きつけあいながら、「そっちが刺すならこっちも刺しますよ」という感じになってきて。僕だけが治外法権みたいなことになっているんです(笑)。

小林 それは知らなかった。

上杉そりゃそうです。こんなことは今まで言ったことないですから。どこでも。

小林 ナベツネさんと上杉さんがつながるなんてあり得ない話だよね。

上杉 ナベツネさんはいい人ですよ。サービス精神旺盛な人なんですよ。実際、話を聞きにいけば本当に親切にしてくれますしね。でも、僕はこういう人達には「もう時代が違うんだから」と言っているんですね。「通信と放送の融合なんてことは世界中がすでにやってしまって、終わった話ですよ。日本だけがそんなことをやるかやらないかでまだもめている」と。そうすると、最上層部の人たちは結構、「そうだよな」となるんですよ。ところが、その周りを固めている中堅やそのちょっと上くらいの茶坊主みないな人達が、要するに虎の威を借る狐みたいに自分たちの既得権益になっている部分を守りたいあまりに「絶対にダメだ!」と出てくるわけです。今は自分たちがいろいろなものを独占できるシステムで優位に立っているわけですから。新しい時代が来てしまうと、それが良くなろうが悪くなろうが、自分たちの既得権益が侵されてしまうと思うわけです。だから、排除ということで、そこに耳を貸さない。それで、ますますひどいことになっていくという状態なんですよね。

石原慎太郎さんの関係

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小林 石原慎太郎さんとも仲がいいんだっけ?

上杉 じつは99年に『石原慎太郎「5人の参謀」』(小学館)という本を書いたのがぼくにとっての初めての出版だったんですよ。その中でね、「子供たちが小さかった頃、伸晃さんのお年玉袋だけが大きかった」ということを、書いたんですよ。あとは、今、4人子供がいますけど、その他に別に子供がいて認知している、これは大したもんだと書いたら、慎太郎さんから連絡がきて、「ふざけるな! 削除しろ!」と。

小林 ははは(笑)

上杉 どこを削除すればいいですか?と聞いたら、「ここの部分」というのが、「俺はなあ、伸晃も差別したことはないんだ。全員お年玉袋は一緒だ」と(笑)。「でも、伸晃さん以外は全員、お兄ちゃんのお年玉袋が大きかったと言っているんですよ」と言ったら、「そんなことはない! ここだけは直せ! うちの家に関わることだ」と。



上杉 他には?ときいたら、「おれは認知したんだ。そんなことは書くな」と。「若気の至りだからしょうがないだろう」と言うんです。そのときはごまかされたんですが、その後確認したら、石原さんが50すぎのときの出来事だった。50歳代で若気かよ!と(笑)。その時は政治の話に関係ないしと思って削除したんですが、後にこの事を記事にしたんですね。そしたら慎太郎さんがまた怒って、「お前なんだあれは!」となった。でもそのときは突っぱねたんです。

そしたら、銀座の法律事務所から内容証明書が届いて、法的手段も辞さないと。どこが問題なんですかと言ったら、怒りながら、ああだこうだといっていました。でも、あの性格ですから、しばらくしたら一緒にごはんを食べようということになって。パークハイアットだったかな、一緒にご飯を食べたときには許してくれまして、仲直りしたんですよ。仲直りしながらその話があまりに面白いので次の日に電話して、またあの話を書いていいですか?

上杉 と聞いたら、ふざけるな!とどなられて。

小林 ははは(笑)

上杉 そういえば、3月の震災直後にも二人でご飯を食べた。まあ、とにかく、石原慎太郎さんとは、喧嘩して仲直りして喧嘩して仲直りして......という感じで12年くらいお付き合いさせていただいています。

遅すぎた国の対応とメディアの報道

小林 上杉さんは今の日本の状況をどうみていますか?

上杉 ちょっと手遅れですよね。東京も全員、被ばくしちゃっていると思います。

小林 やばいということ?

上杉 まず福島は厳しいですよね。セシウムは、10人中、10人。あとはヨウ素131が甲状腺から2000人中900何人検出されているんですよね。ヨウ素なんて半減期が8日間ですから、それが検出されるということは、まだ放射能の放出は止まっていないということです。先月になってやっと、15日の3号機爆発、25日の再臨界で、空間線量が基準値の一千万倍あったなんてことも発表されていました。もうあり得ないですよ。こういうことを予測して、全世界が避難勧告を出していた。にも関わらず、当事国の日本だけは避難誘導をしていなかった。あの時だけでも、本当に一日だけでもいいから、避難しておいてくれれば、相当助かったと思うんですけどね。 放射能の健康被害というのは、それこそ直ちには出ません。

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広河隆一さんもずっと言っているように、チェルノブイリでもだいたい4~5年経ってから出てきたんです。積量ですから、それが8年、9年、10年と経てば被害者は何倍にも増えてきます。チェルノブイリでも、1年目の1986年の子どもの放射線による健康被害は2人だったといいいます。最初に甲状腺異常が出て、いまも多くの人達がチェルノブイリネックレス(※甲状腺がんの手術痕)で苦しんでいる。そのあと、白血病、がん、そして小頭症や無頭症の赤ちゃんが産まれたりしました。今回の福島についても、本当に10年後になったらどうなっているのかというのは想像するだけで悲しくなってきます。だから、僕はずっと枝野さんを始めとする政府の人たちを指して「ほとんど、人殺しに近い」と言ってきたんです。そういう人たちが代表選に出てまた入閣するのは、人間としておかしいじゃないか、と。

小林 枝野さんは、最初のころ一所懸命とりあえず応対しているように、みんなには写っていたと思うのですけれど。何が、そんなに悪だったんですか? 悪意があったわけじゃないんですよね?

上杉 私は初日からまったく評価していません。そもそも枝野さんは会見をオープンにしませんでしたし。もともと、枝野さんとの付き合いは16年くらいで、それこそ年齢も近いし、古くて長いんです。旧民主党時代に鳩山さんの秘書をやっていたので、当時は枝野さんとか前原さんとかあの辺りは、年も近いということで友達みたいな感覚ですよ。細野(豪志)さんなんかは民主党歴でいえば後輩になりますよね。だから震災発生以降は、携帯電話に直接かけたりしてなんとかしようとしていたんです。これはジャーナリストとしての活動を100時間やめて、とにかく情報を知らせたいという一心で。それでも結局動かなかったですよね。東京電力からの情報を保安院経由で受けて、それを信じてしまったんです。だから僕が枝野さんや細野さんや長島(昭久)さんなんかに言ったのは、「合成の誤謬(ごびゅう ※ミクロの視点では正しいことでも、合成されたマクロの世界では必ずしも意図した結果にならないということ)に気をつけてください」と。つまり、1つずつの情報は正しいものが上がってきているようでも、全体を見たら絶対に隠していることがありますから、と。 

小林 なるほど。

上杉 東京電力の会見に出ているフリーランスの記者は数人でしたが、少なくとも、枝野さんや官邸のどの職員、どの政治家よりも、当初は状況に詳しかったと思っています。資料も持っているし。それで14日に電話したときに「手元にある資料をすべて提供しますから、とにかくこの部分が嘘を付いていると確認してほしい」「17:00に2号機の炉圧が7.68、19:00の発表で0.63ですよ。これは爆発していますから、はやく調査してください」というようなことを伝えていたんです。それでも、まったく聞く耳を持たなかった。つまり、枝野さんは官僚からあがってきた確実な偽情報以外発表しない、ということをしたんです。でも、それでは役人ですよね。しかも、放射能の事故の場合は、やっぱり予防的措置をするということが世界的な基準ですから。他のことならともかく、放射能の場合は取り返しが付かないんですよ。

小林 はい、そうですよね。



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上杉 スイスやアメリカ、フランスなど全世界が、軍人も含め80キロより外に出ろ、一般の人は東京、横浜以西に行け、そして子どもや妊娠中の女性、これから子どもを産む若い女性は、国外脱出しろ、という指示を震災直後に出しているんです。日本にチャーター便を飛ばして、台湾やフィリピンに避難させた。各国の大使館も一度、大阪に避難させてました。これらのことは日本ではガセ情報として扱われているんですが、全部ホームページに載っていますからね。これが、16日までに完了しているんです。だから、僕もそれを受けて枝野さんに「子どもは当然、放射線を溜め込みやすい。妊娠している女性は子宮に溜まるので、胎児にあたるところは完全にアウトですから。セシウム137や134は生殖器に溜まりやすくて子どもが産めなくなるので妊娠する予定のある女性も気をつけたほうがいい。各国はみんな避難していますよ。アメリカのオバマ大統領が2時間前にホワイトハウスで会見して、日本から脱出しろと言いました。フランスもドイツも全員逃したんですよ。なぜ日本だけ20キロなのですか?」と言ったんです。



これは記者会見で言ったことですが、「日本がいう20キロと、世界がいう80キロ。 この間の60キロの人たちはみんな不安になるはずだ。僕は日本人だから枝野さんのことを信じたいけれど、不安じゃないですか。日本が正しいんだったら今、オバマさんに電話して、そんなこと言うなと抗議してくれ。全世界に抗議することができないんだったら、日本の避難の範囲を広げてください。どっちですか?」と詰め寄った。そこでさっき話したように「日本と世界の基準は違います」と言われたんです。

小林 そうか......。

上杉 結局みんな被ばくしてしまったんですよ。だからそれは業務上過失致傷と同じじゃないかと言っているんです。責任があると。それをちゃんと報じなかったメディアも共犯関係だと思います。「人殺し」に加担している共犯。政府やマスコミの発表を信じて避難しなかった、そして大丈夫だと言うからミルクからセシウムが出たけれど赤ちゃんに飲ませてしまったという人はたくさんいます。もし5年後くらいに、甲状腺がんや白血病になったとしても、政府を責めても取り返しがつきませんよね。それでどうなるかというと、自分を責めてしまうんですよ。

そうすると、ベラルーシやウクライナみたいに若いお母さんたちの自殺が増えてしまう結果になりかねない。

小林 そんなに増えたんですか。

上杉 増えたと聞きました。日本の記者クラブは否定していますけれど広河隆一さんなどに聞けばいいでしょう。彼はその統計を持っていますし。子供たちは、髪の毛が抜ける、助かってもチェルノブイリネックレスが残る。最初はビキニのマーシャルネックレスでした。今度、フクシマネックレスも多分できるでしょう。しかもこれは何度も再発するわけですよ。なぜあれを知っているのに、日本は対応をしなかったのかな、と。

小林 枝野さんとか、何も知らなかったんだろうね。民主党が政権をとって、原発推進で、というふうになってしまって。世界中で、オバマさんも含めて、原子力はCO2を排出しない、地球温暖化対策の助けになる新エネルギーだということで、舵は完全にそっちにいっていたから。その中で、万が一を含めて動くという裁量はなかったんでしょうね。

上杉 でもそういう人は、政治家失格ですよね。辞めるべきです。言ってみればA級戦犯ですから。なのに今回辞めないで、当時の閣僚が全員代表選に出て、大臣にまでなっているんですよ。財務大臣が総理になって、官房長官が経産大臣になって、いや、本当に変わった国だな、と。要するに、犯罪者が犯罪者を選んでいるわけだからしょうがないんです。

小林 菅さんには、そういう状況を鷲掴みにして、本当になにをやらなくてはいけないということを判断する力はなかったかもしれない。枝野さんも、きっと同じだったんだよね。

上杉 それは、マスコミを含めて、全てが共犯関係だからです。要するに、自分たちも全員嘘をついていたから、ここですいませんでした、メルトダウンは分かっていたんですと認めたら、その瞬間に、お前ら誤報だったじゃないかと。賠償責任を問われますからね。

     
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上杉隆

フリージャーナリスト
自由報道協会暫定代表
1968年福岡県生まれ、東京育ち。都留文科大学卒業。大学在学中から富士屋ホテル(山中湖ホテル)で働き、卒業後NHK報道局勤務。26歳から鳩山邦夫の公設第一秘書を5年間務め、退職。ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者になる。退職後の2002 年、フリーランスジャーナリストとして政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。著書に『記者クラブ崩壊』(小学館101新書)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など。



(撮影・取材・文/編集部)


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