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ホンマタカシ×飯沢耕太郎×吹春俊光

「ホンマタカシ その森の子供」開催記念トークイベント
ホンマタカシ×飯沢耕太郎×吹春俊光

data : 2012.02.28category : 代々木VILLAGE

blind galleryにて開催されたホンマタカシ写真展「その森の子供 mushrooms from the forest 2011」を記念してトークショーが行われた。会場となったのは、代々木VILLAGEの中にあるcode kurkkuのミュージックバー。ホストにホンマタカシ氏、ゲストに写真評論家の飯沢耕太郎氏と、キノコに詳しい農学博士の吹春俊光氏を迎え、写真展のテーマである森のこと、キノコのことについてを語ってもらった。

キノコを通して森を撮る

森を作ったのはキノコである

ホンマ 今日、吹春先生に来ていただいたのは、僕はキノコの写真を2年くらい前から撮ってるんですけど、一個一個の名前も定かじゃない感じで撮っているので。そのへんの基本的なことから聞いてみたいと思ったんです。キノコって「動物と植物のあいだ」みたいな言い方もされるじゃないですか。そもそもどういうものなのか、教えていただけますか。

吹春 キノコは「森の添え物」みたいなイメージがあると思うんですが、「森を作ったのはキノコである」と、我々のような"キノコ屋"は言うんですね。陸上に植物が進出したのは約4億年前になるんですけど、そのとき植物は菌類と合体して水中から陸に上がったんです。菌根菌という土壌の栄養を分解・吸収するのが得意な菌類がいて、その才能を植物が利用したという形ですね。

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飯沢 植物が成長するために必要な窒素とかリンって、植物自体は作れないですよね。だから、根っこに菌根という組織を作って、菌根菌が供給している。その代わり、菌根菌は植物から栄養分を吸収していると。

ホンマ 共生かつ循環している感じですね。でも、菌類とおっしゃいましたけど、そもそも菌類って「キノコ」じゃないんですか。

吹春 菌類の中で子嚢菌門とか担子菌門という分類があるんですけど、その中で、子実体という胞子を作る器官が目に見えるサイズに大きくなったものを、便宜的にキノコと呼んでいます。つまりキノコは、胞子をバラまく装置なんです。

ホンマ 胞子をバラまく?

吹春 どうしてわざわざキノコを作るのかというと、胞子を飛ばすためなんです。キノコって地面から大体10cmくらい立ち上がりますよね。あれは、気流に胞子を乗せるためのギリギリの高さと考えられています。

菌類の"人生"の中では、キノコを作るステージってほんの一瞬なんです。その一瞬のためにキノコを作って、胞子を飛ばす。

飯沢 人生のクライマックスですね。

吹春 ちなみに胞子は、2万Gという加速度をつけて打ち出されます。

ホンマ キノコからブワーっと?(笑)

吹春 胞子は約10ミクロンと非常に微少なので、ちょっとしか飛ばないですけどね。ロケットの加速度は10〜20Gくらいですから、それよりもすごい力で打ち出されるのがキノコの胞子なんです。

ホンマ キノコ狩りの人と撮影に行ったとき、「キノコは清潔で風通しのいいところにある」と言われて。それは胞子が飛びやすいからですか。

吹春 キノコが出やすいのはそういう環境ですけれど、キノコの本体というのは、地面に広がっている「菌糸」なんですよ。

飯沢 地面の下に細胞が長く連なってるみたいな、糸状の菌糸がたくさんあるんです。

ホンマ それがキノコのカラダなんだ。

吹春 森の中に立ったとき、すでにキノコを踏んでいるわけです。森を菌糸がびっちり覆っている。そこからキノコを出してくるんです。

飯沢 「世界最大の生き物はキノコ」って話があるでしょう? オレゴン州の森の中のオニナラタケを調べたら、DNAが全部一致したわけ。つまり、ひとつの菌糸から生えていることがわかって、その広がりは約2200エーカー(890ヘクタール)にもなるんですよ。

ホンマ 僕らには見えないけれど、森の地面中に菌糸が広がってるってことですね。

飯沢 そう、それを言いたいのよ!(笑)

吹春 陸上に広がっている森はすべて、菌類と共存して生きている。




飯沢 だから我々が見ているキノコって、 "巨大キノコ"の氷山の一角なんですよ。それを考えると想像力が湧くでしょう? 僕は地面見ると、いつも菌糸のこと考えちゃうんだけど(笑)。

ホンマ じゃあ、森に行って「今日はキノコがないな」なんて言うのは間違いですね。

飯沢 そう、キノコはいくらでもある。一年中ね。

ホンマ 北半球にも...南半球にもある?

吹春 世界中にあります。

ホンマ でも、キノコはどうやって生きているんですか。

吹春 まず動物と菌類の違いから説明すると、餌の獲り方が違います。「動物」「菌類」「植物」というふうに生き物を分けますよね。自分で栄養を作れるのが植物で、栄養を作れないから餌を獲らなきゃいけないのが動物と菌類。で、自分は動かずに、周りのものを分解して表面から吸収するというふうに進化したのが菌類。自分で動いて餌を捕まえるために、運動神経と感覚神経を発達させたのが動物なんです。

ホンマ 周りのものって、木とか?

吹春 そうそう。森の中で基本的に暮らしているので、そこで生産される木材や葉っぱを分解するのがキノコです。植物遺体と言いますけど、ようするに死んだ植物を食べて生きている。

飯沢 たまに生きているやつを分解する、ちょっと悪いキノコもいるんだけど(笑)。

吹春 そうですね。ただ、基本的には生きているものを食べるのはタブーです。森を殺してしまうと、お互いに生きていけませんから。

飯沢 非常に平和的なんですよね。

ホンマ 栄養はどういうふうに吸収するんですか。イメージとしては、ブクブクブクって泡みたいなものを出して、そこから吸収するのかなと。

吹春 カビをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。カビを樹木の表面に這わせますよね。すると、表面から酵素を出して、リグニンやセルロースという木材の構成成分を小さい分子にして吸収するんです。

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ホンマ そこの栄養を取り尽くしたら、どんどん広がっていく?

吹春 そう。植物遺体をどんどん探していく感じですね。それが腐生菌といって、生きていない有機物を食べるキノコです。もうひとつはさっき飯沢さんがおっしゃったように、生きた植物と栄養のやり取りをして生きている菌根菌というキノコもいます。

飯沢 キンコンキン。いいよね〜、この響き(笑)。

吹春 森って材木がどんどん生産される場ですよね。それを分解して、また植物が利用できるような形にする腐生菌は、森の中になくてはならないものです。菌根菌も植物に栄養を供給しているわけですから、この二つがないと森はやっていけません。で、陸上に暮らしている我々動物は、基本的には森から生まれた生き物ですよね。その森はキノコがなければ生まれなかった。だから「森を作ったのはキノコだ」と。我々が暮らしていけるのも、キノコあってのものなんですよ。

ホンマ ちなみに、子実体ってどのくらいで成長するんですか。

吹春 数日から数週間ですね。サルノコシカケみたいなものは、ひと月くらい胞子を出し続けます。

ホンマ そのあとは抜け殻になるんですか。

飯沢 いや、また伸びてくる。だから層状になって、よく見ると年輪みたいでカッコいいよね。まあ、キノコはなんでもカッコいいけど(笑)。

ホンマ イメージとしては、成長が早いから、いわゆる放射性物質も取り込みやすいのかなって理解してたんですけど。菌糸が張り巡らされていると考えると、だいぶ違いますね。

吹春 あらゆるものを取り込みやすい性質があるんでしょうね。昔から重金属を非常に取り込みやすいと言われていましたし。

ホンマ チェルノブイリのときで、キノコが特別、放射性物質を取り込みやすいってことは、データ的に証明されているんですか。

吹春 そうですね。

飯沢 だから原発のニュースを見たときに、一番最初に考えたもの。あれ、いつ頃でしたっけ? 政府が通達を出したの。

ホンマ 9月ですね。
(編集部註:政府が2011年9月6日、福島県棚倉町と古殿町で採れた野生のチチタケから、暫定基準値<1キロ当たり500ベクレル>を超える放射性物質を検出したとして、両町で採れる野生のキノコ、マツタケやチチタケ、ホンシメジなどの出荷を停止するよう福島県に指示した)

ペンやアヴェドンがキノコを撮っていないのが不思議

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飯沢 かなり遅いよね。遅すぎるくらい。......ところで、そろそろホンマさんの写真の話も聞きたいな。なんでホンマさんはキノコを撮り始めたの?

ホンマ 5、6年前から興味があったんだけど、魅力もあるし、撮ってる人はいっぱいいるだろうと思って放っておいたんですよね。でも、調べると意外と撮ってる人がいないというか、ちゃんと発表している人がいなくて。じゃあ「ちょっとやってみよう」と思って始めたら、どんどん面白くなってきて。

飯沢 最初は何気なく撮っていたの?

ホンマ いや、やっぱり僕は最初から発表することが前提で。どう撮ったらキノコの写真として成り立つのかなっていろいろ試しました。その中で、それこそ菌糸のことなんて知りませんでしたけど、「土と根っこみたいなところが面白い」と思って撮り始めた。それが1、2年前くらいから。

飯沢 いや〜、素晴らしく勘がいいなと思って。僕らみたいな"キノコ好き"が見たい形になっているんだよね。

ホンマ だから以前、飯沢さんが「ホンマはファッション写真家だ」みたいなこと言ってたと思うんですけど、それは当たってて。アービング・ペンとか(リチャード)アヴェドンがなんでキノコを撮ってないのか、僕は逆に不思議なんです。  福島の写真にはないんですけど、スウェーデンで撮った、オレンジで真っ直ぐな帽子をかぶったようなキノコがあって。それを2本並べて撮ったとき、「ペンのタバコの写真にすごい似てる」って思ったんですよね。

飯沢 だから、ホンマさんが白バックで撮ったのは正解だったと思う。あと、いま言ってたように、根っこのところに土がついてるじゃない? あれがいいな〜(笑)。これ、その場で撮ってるんでしょ?




ホンマ そうですね。

飯沢 そこがすごい大事だと思う。

ホンマ キノコって、しばらく持ってたら全部ダメになっちゃうんですよね。そこも写真的だなと思って。

飯沢 そうそう! 僕もその場で撮るとしたらこういうやり方しかないと思っていたから、「やられた!」って感動しましたね。

ホンマ いくつかほかにもアイデアがあって。「森」ということでいうと、キノコが生えてるところをギリギリまで引いて、「キノコがちょっとある」みたいな写真も撮りたいんですよね。

飯沢 展示している写真で、森の中にキノコが生えてるのは......。

ホンマ 1点だけ。

飯沢 いや、それはすぐわかったけど。ほかの森の写真には?

ホンマ ほかのにはないです。

飯沢 オレ探しましたよ!(笑)「どこにいるんだ...」って探した人、いるんじゃないかな?

ホンマ だからちゃんとやりたいと思っていて(笑)。今回は「福島の森とキノコ」っていうテーマだったから、キノコが写ってない森もあるんです。

これまでのキノコの写真とは違う

飯沢 ところでホンマさんは、これからも福島のキノコは撮り続ける?

ホンマ どういうふうになるのかわからないですけど、一応次のシーズンも撮ろうと思ってます。ただ、キノコ全体に関心を持っているので、ほかにも撮りたい場所がいっぱいあって。福島だけじゃなく、熊楠の森も入ってみたいし、北海道のキノコとか、いろいろ撮りたいと思っています。

吹春 自然を見る視点として、何かの生き物を通して見るって非常にいいですよね。私、よく言うんですけど、「菌を通して森を見る」という言葉があるんです。そこで暮らしている菌を通して、その森を理解していく。森が健全に生きているのかヘトヘトなのかということも、キノコを見ると意外にわかったりするものなんですね。

ホンマ それこそ写真では、キノコはあまり撮られてないけど、森って簡単に撮られてますよね。

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飯沢 そうだね、テーマとしてはけっこうある。

ホンマ なんとなくカッコよく、重みがあるように撮れるじゃないですか。だから僕は、あからさまな森は撮らなかったんです。でもいま言われた通り、キノコを通して考えると、森というのも写真として撮る意味があるなと。

飯沢 それはほんとに思うよ。キノコを通していろんなものが見えてくるんです。写真だけじゃなくて、生き方、世界。すべてのものが見えてくるって感じだなあ。

吹春 私はアート系の写真とまったく縁のないところで育ったんですけど、今回写真を見せていただいて、何気ない森の写真が並んでいますよね。ふつうの"植物屋さん"が絶対撮らないような。で、そのあいだにキノコが生えている。「これはキノコを通して森を見てるんだな」ってすごくよくわかりました。都会に住んでいるとなかなかわからないですけど、そういう形で自然というものを把握して、情報発信していただけると、いろんな方が森のことやキノコのことを考えるようになるんじゃないかと思ったんです。キノコ屋が撮るキノコの作風とはまったく違いますよね。図鑑的なキノコの撮り方ではまったくないというか。

ホンマ ある意味、図鑑的でもありますけどね。

飯沢 微妙に違うような気がするね。これまでのキノコの写真とは。

吹春 「暮らしている姿を撮りたい」って感じですよね。でも、キノコ図鑑の撮り方は、その種類の特徴を表すという形になってしまうんです。

ホンマ それこそいまのお話を聞いてても、キノコが森を作って、その森も同じようだけど環境によって確実に違うわけですよね。そこに興味があるのかなって思います。

キノコを見ることは世界を見ること

司会 ホンマさんは青山でも展示をやられていますよね(「MORE Mushroom」展/青山 The Caveにて2月29日まで開催)。あちらは外国のキノコがメインですが。

ホンマ そうですね。スウェーデンと、サンフランシスコの国立公園のキノコと、なぜか八王子のキノコも入っています(笑)。

司会 海外と日本のキノコの違いは感じますか?

ホンマ うーん、それこそ名前もわからない状態でやっているから、違いははっきり言えないですけど......。

飯沢 文化的なことで言えばね、キノコって民族性みたいなものとかなり強い関係を持っているという気がします。一般的に言われているのは、ロシア人とかチェコ人とかポーランド人とか、そういうスラブ系の人たちはものすごいキノコが大好きで、文学にしてもアートにしても、キノコをテーマにしている作品がものすごく多い。

 僕のライフワークのひとつは「キノコ文学」なんですけど、キノコ文学って世界中にいろいろあって、スラブ系の国にはたくさんあるし、逆にスペインとか南のほうの国になると、あんまりない。アングロ・サクソン系のイギリスでは推理小説に毒キノコがよく出てくるけれど、スラブ系の人みたいに"愛をこめて描いてる"ことがないですね。そういう違いは出てくるんじゃないでしょうか。  それにしても、ほんとにここ数年、キノコが気になり始めている人が増えてきていますよね。ここにいる人はみんなそうだと勝手に決めてますけど(笑)、この中にアートをやっている人もいると思うので、そういう人たちがこういう話を聞いてくれると、胞子が脳の中に入っていくから、そのうちそれが発芽して、立派なキノコアートが出てくるんじゃないかなと。キノコがひとつひとつ違うように、それぞれの頭の中で描かれるキノコの形も全然違うわけですから、それをそのまま形にしていただけると面白いと思いますね。

司会 では最後に、キノコの魅力について聞かせていただけますか。まず飯沢さんから。

飯沢 僕はキノコが宗教みたいになっているから(笑)、魅力と言われても全部が魅力としか言いようがないけどね。でも、キノコを見てるだけで頭の中が活性化してきません? いろんな想像力が膨らんでくるっていうか。そういう存在だと思ってます。  あと、さっきも言ったように、キノコを見ることは世界を見ることにつながるんですよね。ほんとにいろんな見え方がキノコにはある。吹春先生はどうですか、キノコの魅力。

吹春 うーん、キノコの魅力はみなさんに発見していただくしかないですよね。私はキノコ屋になってしまったんで(笑)。  でも、ホンマさんにキノコを撮り続けていただけるのであれば、私は昔から「原生林」っていうものに非常に興味を持っていまして。原生林は何十万年という歴史の中で成立した森で、いまは人間が切ってしまってほとんどないですけれど、原生林の中には何らかの「情報の流れ」があると昔から言われているんですね。
 理論として昔から言われているのは「赤の女王理論」。

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「鏡の国のアリス」に「その場にとどまるためには全力で走り続けなければならない」というセリフがあるんですが、原生林は制止しているように見えるんだけど、なかにいるすべての生き物は生き残るために全速力で進化し続けている、と言われているんです。つまり、情報の流れがものすごく速い。そういう原生林ならではの現象って、生物学ではなかなかアプローチしづらいところがあるんですけれど、撮影の中で、そういうものもあるんだということを意識していただけると、個人的にはうれしいですね。

飯沢 そういえば、原生林のスピード感とか、あらゆるものがつながって一斉に動いている感じの写真って見たことないなあ。その動きみたいなものは、どうやったら写真で表現できるのかな。

ホンマ 福島でも原生林って言われているところを撮ったんですけど。動いているとは思わなかったけど、やっぱりほかの森とは違うなって明らかに感じましたね。




飯沢 そういえば、キノコの学者の中で「菌糸のネットワーク」ってことを言っている人たちがいる。森の中には菌糸が張り巡らされているでしょう。だから大量の情報がものすごい速度で交換されているんじゃないかと唱えていて、それをインターネットに例えているんです。それを可視化して表現するってとても難しいんだけど、写真というメディアはそういうことをできる可能性があると僕はずっと思っているから。いまの話はすごく面白いですね。

ホンマ そう考えると逆説的に、みんなが森の写真を撮って、その写真がダレが撮ってもまあまあよく見えるっていうのは、そういうことが起きているから写真にも当然写ってるとも言えますよね。

飯沢 そうだね。見えない動きみたいなものを写真家がある程度感知して、写真というメディアでつかみとったものが、無意識レベルで我々に働きかけているということは絶対あると思う。その無意識レベルのことが、ほんとに大事なんですよ。

吹春 森を切っちゃうと、そういう関係がまったくなくなるじゃないですか。海も同じような状況ですよね。

海を埋めて同じような建物作っていく。すると、そこに育つ人間もどこか単純になっていくんです。多様な森があったときは、そこで暮らしていた人間も多様だったんですよね。それでいろんな文化や宗教が生み出されてきたと思うんですけど、それがなくなりつつある......。

飯沢 だから多様なキノコがある世界って健全ですよね。

吹春 写真でやることは難しいでしょうけれど、ホンマさんにはそういうことを、写真を通して発信していただけたらと思うんです。

(会場から質問が出る)
来場者 ホンマさんは以前、東京の郊外の子どもを撮っていましたけど、そういった写真と、今回のようなキノコの写真と、ご自分の中で共通している思いとかものの見方ってありますか?

ホンマ 僕はやっぱり写真が好きなので、「写真に撮ってどういうふうに見えるのか」ってことに興味があるんです。

波の写真も撮っているので「サーフィンするんですか?」とか「海好きなんですか?」って聞かれるんですけど、それはあんまりなくて。もちろん感情レベルで「きれいだなあ」とかはありますけど、あくまで写真にしたときに、どう見えるかなんですね。キノコもまったく同じことで、キノコの写真がそんなにきちんと撮られてない、と。そういう意味で、可能性があるんじゃないかと思ったんです。だから「原生林では情報がものすごいスピードで流れている」みたいな話を聞くと、それを写真に撮りたいなって思いますね。ただ、ほかにもいろいろ興味はあります。

飯沢 「その森の子供」っていうタイトルは、ホンマさんの『東京の子供』という写真集を連想させるんだけど、それは意識した?

ホンマ それもありますが、どっちかっていうと大江健三郎さんの著作を最近いくつか読んだってことがあると思います。四国の大江さんが育った森も入ってみたいですね。




ホンマタカシ

写真家。 2011年1月から、自身初の美術館での巡回展「ニュー・ドキュメンタリー」を開催。金沢21世紀美術館、東京オペラシティ アートギャラリーを経て2012年7月からは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ巡回予定。2012年3月4日まで、The Caveにて「MORE mushroom」展を開催。木村伊兵衛賞受賞作『東京郊外』がアプリにて好評発売中。詳細はホンマ主宰の写真情報サイトbetween the booksにて。
http://betweenthebooks.com/

飯沢耕太郎

写真評論家、きのこ文学研究家、きのこアート研究所所長。1954年宮城県生まれ。筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了後、フリーランスの写真評論家として活動し、90年に発刊された季刊写真雑誌「deja-vu」の編集長もつとめた。主著に『写真的思考』(河出ブックス)『「女の子」写真の時代』(NTT出版)他多数。近刊にアフリカ紀行『石都奇譚集』(サウダージ・ブックス+港の人)。きのこ関連の著書では『きのこ文学大全』(平凡社新書)『世界のキノコ切手』(プチグラパブリッシング)などがある。近年は「旅」や「きのこ」をテーマにしたドローイングやコラージュ作品の展示もおこなう。

吹春俊光

農学博士、京都大学総合人間学部非常勤講師。1959年福岡県生まれ。京都大学農学部卒業。千葉県立中央博物館 自然誌歴史研究 部 植物研究科 上席研究員。1987年に千葉県の博物館の準備室、1989年から現在の所属となり千葉県のきのこを20年以上も調査。主著に『きのこの下には死体が眠る!? 菌糸が織りなす不思議な世界』(技術評論社)、共著に『見つけて楽しむきのこワンダーランド (森の休日) 』 など。信州きのこマイスター協会で講師として野生きのこの魅力を解説。



(撮影/ホンマタカシ写真事務所、取材・文/成田敏史)


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