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2009年7月17日

「大塚 愛×Salyu×小林武史 石垣島で稲刈り」【後篇】

石垣島での稲刈りを通じて、アーティストならではの発見をした3人。音楽と農業、話はさらに広がります。

◆生命の循環を見えるようにする

小林 農業も、食の問題もそうだけれど、
社会におけるさまざまな「循環」が、
もっと僕らの生きていく中で見えるようになったほうが
良いなと思ってるんですけど。

二人はそう思わない?
どこに行っても、コンビニに行けば何でも揃ってるんだけど、
自分が生きているということや共生してるってことが
もうちょっと見えるようになった方が、
生きてることの実感があるんだと思うんだよね。

Salyu コンビニのおにぎりに
しても、たいていはお米がどこから入ってきているか、
詳しい流通がわからないんだけど、
今日は田植えをした小林さんという人のもとで稲を刈って、
「これ新米なんだよ、そこの田んぼで穫れた」というものをいただいて。

一個のものが種から商品になるまで、過程がずっとわかっているのは、
見渡してみるとあまりないなですよね。
だから今日の体験は、表現の本質的な形だなと思ったし。
いろいろなことを考えさせられました。

大塚 簡単なことは言いたくないけれど、
久しぶりに汗をかいたのは気持ちよかったです。
少し日差しは強いけれど、かいた汗が爽快だった。

小林 ときどき、僕の会社でもみんなでバーベキューをやるんだけど、
ただ飲んで騒ぐだけよりも、一緒に作業をすると
親密感が生まれるかもね。
農作業って、役割分担もあるし、同じアウトドアでも、
ときには休んで、またエネルギーを補給して作業する、といった、
知恵を含んでいるし。

今日のメンバーも、農作業は慣れていないし、
たとえば稲を手で束ねるなんて、今日やるのは無理だと思ってたの。
でも、いつの間にかみんなやってましたね。
そういう向き不向きも含めて、みんなで助け合えばできるんだな、と。

◆生命力がわいてくる

大塚 私は、基本、育てるのが苦手なので、植物を育てるのも一苦労なんです(笑)。虫も苦手で。でも、今日はとくに感じなかったな。

それよりも、刈りながら、不思議と「生きなきゃ」と思った。
「生きるためにはこれ、刈らなきゃいけないんだ」みたいな。
農業って、生命力が湧く作業なのかもしれない。

その次に「生きるためには、人との協力が必要だ」って、思って。
「何人かでやらないと、これはしんどいな」みたいなこととか。
手とからだを動かしているだけで、生命力が出てくるから、
ただ毎日ぼーっと「何で生きてるんだろ」と思ってる人には
すごいオススメなのかな、って思いましたね。

小林 そうなんだと思うよ。
左脳的に、みんな組織とか
集団の中で精度をあげて
やらなくちゃいけない
と考えている。
もちろん、ビジネスでは
必要なことなんだけど、
もしも、そういうことが合わないとき、
「農業のようなチャンネルもあるよ」という社会にならないかな、
って、思ったりするんです。
農業を基礎から学べて、その人のペースでいいから「やっていいよ」
と言える社会になればいいのに。

僕たちだって、今まで人がやってこなかった魅力が
歌でも音楽でも作れたら、「やった」という気になるじゃない。
それは僕らの原動力にもなる。
競争というよりも、人ができなかったことや、
やれなかったことをやりたいと思うからさ。
ひとつの方向でうまくいかないと、どんどん追いつめられて
「タイムアウトです」と言われるだけの社会は、
本当に駄目なんだよな、と思う。
何度でも復活戦ができたり、
1回、農業へ行って、戻ってくるのもあり、と
なるといいんじゃないかと思います。

◆体験して、わかること

Salyu 今日の作業は、
左脳と右脳、どっちの脳もバランス良く必要な作業でしたよね。
効率よく作業するためには整理整頓だったり、
でも仲間や環境を大切に思う気持ちも大事だなと思ったの。
花をおうちに飾るときに話しかけると良いとか、
糠床に話しかけると、善玉菌が増すという話があるじゃないですか。
だから、「途中で稲に語りかけたりするのも大事なのかな」
と思いつつ、ワーッと進めちゃったんですけど(笑)。

農業は、そういう感性と知性がバランス良く共存できる場所なんだな、
と、小林さんの話を聞いて思うんですね。
だから本当に体験してみることで、
「自分が求めてたのは、このバランスなんだ」
と、思う人はたくさんいらっしゃるかもしれない。

小林 農業も、農地の問題とか、
いろいろ難しいことがあるみたいなんだけど。
農業専門の人たちだけの世界と思わないで、
少しずつでも、出入りしやすくなったりすることが
何かを変えていくんだよね。
みんなが関心を少しずつ持てることで変わっていくので。
そういう意味で、二人には、
「よくぞ来てくださった」という気持ちなんです。

大塚 私は、自然のないところに
生まれ育って。農業に触れる
ことも、おばあちゃんちに
芋掘りに行ったくらいの記憶
しかない感じのなか、自分から、
農業をやりにいこうという
気持ちにはなかなか、
どうしてもならないし。
特に若い女の子は、あまり関心がないというか、
遠い存在で、「しんどい」とか「大変そうだ」とか、
そういうマイナスなイメージが多いのかもしれないですけど。

でも視点を変えれば、家で観葉植物を育てたり、
そういうことともさほど遠くない気もしたんです。
ものを育てて、それを自分にとって有り難みのあることに変えるとか。
歯を磨いて、寝て、起きて、トイレに行って、
という自然なことと同じだと思ってもいいんじゃないかな、って。
身の回りのことをするように、
食べるものを育てることも、そういう遠くない、
自分にとって身近なものに感じてもいいんじゃないかな、
ということは思いましたね。

Salyu 私は、正直、驚きでしたね、
何がと言って、小林さんが土を触ってるんだ、ということが。
まさか一緒に稲刈りをするとは思わなかった

私も愛ちゃんと同じで、自然の少ない場所で育ってますから。
大丈夫かな、と思っていたんです。
最初に想像したのは、「虫とか大丈夫かな」「爪に土が入ったりするのかな」
とかね。
そういう保守的な気持ちだったんですが、
作業して本当に良かった!と思った。
いろんなものが得られて、音楽のことも考えられたし。
すごい楽しかったです。

小林 とんでもないです。
でも、なんだか発想が浮かんで来ちゃうよね。
農業って確かに大変だけど、
そこに快適なものとちゃんとセットになっていれば、
エンタテイメントとして、充分楽しめるんじゃないかな。
さっき大塚さんが言ってたけど、観葉植物なんかと似てるんだと思うよ。
育てたり、収穫したり。
趣味で農業をやっている方もいらっしゃるけれど、
「農業はこういうものだ」という敷居を高くしなければ、
もっと広がっていく可能性がある、とあらためて思いました。

二人とも、今日は本当にありがとう!

(撮影/浅田 政志 構成/eco-reso web編集部)

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