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COOL Renovation クール・リノベーション

あらゆることに環境コンシャスな現在、建築においても安易にスクラップアンドビルドを繰り返すのではなく、「古い建物」という資源をもっとみんなに喜ばれながら再生していく方法があるのでは?建物が持つの良さを再発見し、時代の変化を見据えた新しい価値を提案する、そんな「クール・リノベーション」を訪ねる。

2010.01.19 第3回パリオ花屋敷

ラウンジサロンから中庭を介してリビング・ダイニングとピットを見る

©Hidehiko Nagaishi

大きな紅葉がシンボルツリーとなった中庭はそれぞれの空間をゆるやかにつなぐ

©Hidehiko Nagaishi

キッチンカウンターからは畳コーナーの向こうにピットが眺められる

©Hidehiko Nagaishi

どこにでもある老朽化の進んだ建築物。
建物として既に使用されなくなっていれば、これまで紹介してきたように建物を全面的に改修し、新たな付加価値を伴ってより魅力的に再生することもできるし、場合によっては全く新しい建築物として建て直すことも考えられる。
しかし、実際にはまだ使用中、できることならこれからもこのまま使い続けたい・・・建物のオーナーや使い手側がそんな思いを持ちながらも、建物自体がその老朽化によって先に悲鳴をあげてしまうことがよくあるのが現実だ。
そんな時、必要なタイミングでより安心に安全に、そして快適に建物を使い続けられるよう、さらにはその場所でそれまで積み重ねてきた時間と共に、これから過ごす時間に愛着を持てるようなリノベーションが実現できれば理想的だ。

今回紹介するプロジェクトは、耐震工事が必要となった大手自動車会社の独身社員寮を、「建築」・「素材」・「住まい方」の3つの「再生」をキーワードとして、生活を継続したままに行ったリノベーションプロジェクトだ。

玄関ホールから続く、食堂としてのみ使われていた広い空間が、食事以外にも読書やテレビ観賞、料理など多様な過ごし方ができるリビング・ダイニングとして再生された。さらにその一部は自動車会社の寮ならではのスペースとして、雨の日でも思いきりクルマいじりができる屋根付きピットと姿を変えた。ダイニング・キッチンスペースから空間がつながったピットは眺めるだけでも男心がくすぐられる。

内装でも「再生」をキーワードとして環境に配慮した素材が使用されている。
たとえば、ダイニングのテーブルや椅子、キッチンカウンターやスツールには端材(建築工事の際などに余った材)が使用されており、カラフルに塗装されたピットの工具棚は寮生の部屋で使っていた不要となった机だ。玄関ホールが再生されたラウンジサロン兼ギャラリーの壁には、石を製材する時に発生した端材を施し、素材感も存在感もたっぷりの空間のアクセントとなっている。

蛍光灯に白く照らされた単調な空間から一転、素材や照明にこだわり、自分の時間をゆっくりと過ごしたくなるカフェのような心地いい空間となった。ここで暮らす人たちが思い思いの目的でひとつの大きな空間に集まり、緩やかな時間を共に過ごすことで生まれる自然な会話は、新たにはじまる何かのきっかけになるに違いない。
大きな紅葉がシンボルツリーとなった中庭を介してラウンジサロン、リビング・ダイニング、ピットなど各スペースがゆるやかにつながった空間は、暮らす人それぞれの気配がほどよく感じられる「大きな家」となった。

案内人

梶原文生((株)都市デザインシステム)

1965年東京都生まれ。1992年建築・不動産コンサルティングを目的とした都市デザインシステムを創業。事業展開が難しいと言われていたコーポラティブハウスのコンサルティングで注目を浴びる。エンドユーザーの視点で、「いいもの」を創るための「しくみ」を提供しつつ、付加価値と社会的意義のある新しい選択肢を創り続ける。東北大学工学部建築学科非常勤講師。

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