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COOL Renovation クール・リノベーション

あらゆることに環境コンシャスな現在、建築においても安易にスクラップアンドビルドを繰り返すのではなく、「古い建物」という資源をもっとみんなに喜ばれながら再生していく方法があるのでは?建物が持つの良さを再発見し、時代の変化を見据えた新しい価値を提案する、そんな「クール・リノベーション」を訪ねる。

2010.03.23 第6回モーフ南青山(東京・南青山)

東京の中心部にありながら目前の豊かな緑を生活の一部として取り込める大きな窓と、眺望が生かされたシンプルな室内。

同じ柄のシンプルなタイルが多様で有機的な文様を創りだす。

シンプルで真っ白な水回りはどこか近未来的でもある。

港区南青山、東京の喧騒にありながら、目前に広がるエアーポケットのような青山霊園の豊かな緑を望む稀有なロケーション。この恵まれた環境で43年もの長い間ここに建ち続けたマンションは、老朽化が進んでいるというだけでなく、竣工当時の図面も詳細な資料も失われていた。

そんなマンションを耐震補強も含め、構造、機能、デザイン、全ての面から社会的に価値ある魅力的なものとして蘇らせようというリノベーションプロジェクトが、不動産・設計・アートなどそれぞれを専門とするプロフェッショナルなメンバーたちによってスタートした。

コンセプトは「都心と緑」「過去と未来」など2つの異なる要素が交信し合い、空間が変容していくという意味をこめて、形態を変容させる意味の「MORPHING」と、超越、交信などの意味を持つ「TRANCE」を掛け合わせた造語「トランスモーフ(Trance-morph)」。
都心にありながら豊かな緑を享受できる環境と、長い年月を越えて現在に至ってもなお、途切れることなく持続発展可能となる高感度な建物への再生を目指した。

外観は一見すると古き良き面影を残した普遍的なデザインと感じられるが、特徴となるのは大きな二つの窓の間を1階から3階へと立ちあがったタイルのファサード。近づくにつれ見入ってしまうそのデザインは、同じ柄のシンプルなタイルの組み合わせ方向によって、多様で有機的な文様が切れ目なく繋がって創り出されるものとなっており、ここではコンセプトである「途切れることのない変容」が象徴されている。このタイルデザインはプロジェクトのアイコンともなった。

一方、室内では壁一面の大きな窓を通して流れ込んでくる光と一望できる緑が生活の一部となる。
様々な要素を削ぎ落とし、普遍的でシンプルなデザインに仕上げたことで、より効果的に眺望が生かされ、同時にそこで暮らす人の創造力を掻き立てることになる。

建物のハード部分を見ても、耐震改修とあわせて行った設備改修は築43年の建物に対して異次元な気配さえ感じるオール電化であり、建物のクオリティを最新レベルなものとするべくリノベーションを行った結果、この希少な立地に存続し得たのだ。

このプロジェクトのように構造、機能、デザインを共通するコンセプトの下、「モーフ」していくことで、まだまだ世の中に溢れているストックを社会的資産、しかも魅力的で不可価値の高いものとして大切に使い続けていくことができるのだろう。

モーフ南青山
http://www.rebita.co.jp/morph_minamiaoyama/

案内人

梶原文生((株)都市デザインシステム)

1965年東京都生まれ。1992年建築・不動産コンサルティングを目的とした都市デザインシステムを創業。事業展開が難しいと言われていたコーポラティブハウスのコンサルティングで注目を浴びる。エンドユーザーの視点で、「いいもの」を創るための「しくみ」を提供しつつ、付加価値と社会的意義のある新しい選択肢を創り続ける。東北大学工学部建築学科非常勤講師。

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