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安藤忠雄

no

02

小林武史 × 安藤忠雄

建築家の安藤忠雄さんと小林武史による対談、そのテーマは「農業」。
土に触れること、そして試行錯誤を繰り返し、植物を自分の手で育てること――。
これからの時代、そんな「実感できる場」として、若者が農業に参加することの意義を語り合いました。

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第3回 「安藤忠雄×小林武史 道具であるお金の使い方を考える」

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ap bankが田植えをした石垣島の田んぼで、稲が育っていることを実感しました。



建築家・安藤忠雄さんとの対談の3回目。農業から、募金や融資の話など、お金の話に発展していきました。どんな風にお金を使うかは、これからの生き方のヒントになるかもしれません。


安藤
我々が東京都と進めているプロジェクトで、「海の森」というのがあります。東京湾のお台場沖のゴミの埋め立て地に植樹して育て,市民の力で緑豊かな森を作ろうというプロジェクトです。1口1000円ずつの募金で苗木一本が植えられます。
この間、97歳のおばあさんが、「私も募金したい。天国から海の森ができていくのを見たいから」とお金を送ってくれました。ノーベル賞を受賞された小柴さ んも「僕も賛成だから、今度行くときに自分も植えたい。ちょっと足が悪いけど、車があれば行けるから」と言ってくれて。こういう心ある応援団の人はいっぱ いいますね。

小林
すごいですね。

安藤
子供たちに土を触らせた方がいいと思います。特に、今の東京では難しいですからね。土を触ったことがない 子供たちが大きくなると、問題が起こりそうです。私たちだけでなく、10代くらいまでに土に触らせた方がいいと思っている人が結構多いです。そのリアリ ティを感じないで、成長した子供は怖いなと感じます。

小林
そうですね。

安藤
小林さんには、若い人への発信をやってもらえると。若い人が立ち上がったら数は多いですよね。 バングラデッシュのグラミン銀行の創設者のムハマド・ユヌスもすごいなと思いますね。主に貧困層を対象に、低金利無担保の融資を農村部で行っています。彼 が人間として生きていくことの喜びを知っているから、あのシステムが作り出せたと思います。人間の信頼があれば必ずお金は返ってくると......。
日本だけでなく、世界中の銀行は、担保があったら貸すと言うでしょう。でも、ムハマド・ユヌスは心に担保があれば貸すんでしょうね。それは彼がそういうふ うに育ってきたからだと思います。つまり、世界でも最高の人間なんでしょうね。人間って捨てたものではないなと、私は思っています。

小林
ap bankを僕がはじめるときに、お金は道具にすぎなくて、いい方向に使っていくことを考えようと思いました。ためこんで、お金に使われるような人間になる のは本当にナンセンスだって。だから、ちゃんと口にだして言ってしまおうと思って、ap bankを作ったということもあったんです。逆に言うと、何をやるにしてもお金に立脚するから、そこから何か考えてみようということでもありました。
今まではずっと頑張る人への融資を中心に活動してきましたが、これからはもう一歩突っ込んでいこうかなと思っています。新しいビジネスモデルをきちんと構築することをプロデュースしていけるような、新しいチーム作りをする予定です。

安藤
そういえば、直島でも田植えをやっていますよ。

小林
そうですか。

安藤
2年か3年くらい前からね、あの島の子供たちと一緒にやってますね。収穫もしています。直島が、うまくいっていると思うのは、初めは島の人たちの中で、観光客がたくさん来ることに反対していた人もいたけれど、この5、6年、住んでいる人たちが意欲を持ってきたことです。

小林
そうなんですね。

安藤
人間は、「欲」も大事だなと思いました(笑)。「こんなに人が来るなら、うちも民宿やコーヒーショップをやってみよう」と言う、70代の人もでてきたりして......。

小林
(笑)

安藤
お金を儲けたい。私、うどん屋をする、私、コーヒーショップをする。でも、うどん屋もコーヒーショップも マズいの(笑)。私の知り合いが行って「いやー、安藤さん、あれ、マズいな」と言うんです。うどんが250円くらいで、コーヒー200円くらいだから、 「そりゃ文句を言わないで」と私は言いました。70歳を越える人たちが、意欲を持ってなにかを始めることは、人間が生きていくことにつながっていくと思い ます。建物は、それほど心には残らないけれども、少なくとも200年くらい前の民家が直島にはだいぶ残っていて、そういう風景が人の心に残って行くのではないか と思っていますね。我々も、これだけ作ったら建築はいらないと思いますね。もう十分ある。そのままでは使えませんけど、今ある物を、安全のために少し補強 したり、設備を変えたりして使う方が、いいと思います。

(撮影/浅田政志)
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安藤忠雄プロフィール

建築家。東京大学名誉教授。
1969年安藤忠雄設計事務所設立。
住宅、公共施設、商業施設など国内外の多くの建築を手がける。代表建築は大阪の「住吉の長屋」香川県直島町の「ベネッセハウス」東京の「表参道ヒルズ」など

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