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安藤忠雄

no

02

小林武史 × 安藤忠雄

建築家の安藤忠雄さんと小林武史による対談、そのテーマは「農業」。
土に触れること、そして試行錯誤を繰り返し、植物を自分の手で育てること――。
これからの時代、そんな「実感できる場」として、若者が農業に参加することの意義を語り合いました。

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第4回 「安藤忠雄×小林武史 日本の未来と、農業をつなげていく」

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ap bankが田植えをした石垣島の田んぼで、稲が成長していることを実感しました


「音楽家がどうして農業なのですか?」と、建築家・安藤忠雄さんの根本的な質問から始まった4回目。二人の話は今の日本の現状、そして日本の未来へと発展していきました。

安藤
日本の農産物はいいですよ。安全で安心でしょう。世界中、食の安全っていうのは大事だと思っていますよね。そういう意味では農業という原点から始めると力になるでしょうね。だけど、そもそも、音楽家がどうして農業なのですか?

小林
僕は、戦争はもう、ずいぶん前のように思っていたのですが、まだ、たった60年しか経ってないですよね。 そのすごい勢いが日本の中での価値観を変えてしまった。原爆が落とされて、ぐしゃっとなってしまった。特に、意志というか、男が持つ父性原理みたいなもの が、ぐしゃっとなった珍しい国だと思います。その中で、足元の農業のようなものが、どこかに行ってしまっている感じがしたからです。

安藤
私もそう思います。江戸から明治にかけて日本に来た多くの外国人たちは、こんなに美しい国はないと言って います。まず、山も美しいし、海も美しい。瀬戸内海は世界一だと言っているくらいに美しかった。それで、子供が元気で、大人が忍耐強くよく働く。ものに対 する愛情が深くて、世界一の民族だと、たくさんの人たちが褒めています。その世界一の民族が、今、民族のレベルが落ちていっていますよね。
親が子供を殺すとか、子供が親を殺すとか、近所の人を殺すとかいうことが日常に行われている。そして自然を破壊して来たことを考えると、世界でも嫌われて いる民族になりかけているわけですよ。世界で一番評価されていた民族、遺伝子としてあるわけですから、もう一回、取り戻すためにやっぱり農耕民族としての 農業は、大切でしょうね。

小林
そうですね。音楽、特にロックをやっていると、ネガティブなエネルギーを、僕らが面白がって、今まではロック的なところで解釈をしていたんです。
でも、最近はオタク的なネガティブなものは、あまりにも鬱的なスパイラルが強すぎて、巻き込まれて出てこれなくなっている感じがします。それには、田んぼに行ってみて、泥の中に手を突っ込んでみるのが一番だと思う。

安藤
まあ、そのためにはまずお母さん方を説得して元気のいい子供たちを作らないとね。

小林
いよいよ原因が本当に細かくなりすぎて、いろいろなところに入り込みすぎて分からなくなっている。怖いところに来ていると思います。いわゆる実感と全く真逆のところに、本当の問題点が紛れて、わからなくなっている。
たぶん、人が死にたいと思う気持ちも、衝動的に親を殺してしまう気持ちも、全体的にぶわーっと紛れ込んでしまっている。もちろん、悪いことばっかりじゃなくて、頑張ろうとしている若者もすごく増えてきてると思います。
ただ、今、経済も大変だから、はみ出すのもみんな怖がっているところもある、安藤さんのようにカウンターになろうとする奴も減ってきている。だからそういう若者も含めて、何か刺激を与えていかなくちゃいけないと思う。

安藤
そうですね。

小林
僕らは、自分たちの利益のためにap bankを作ったのではなくて、お金を循環させるために作ったんです。今のキーワードはなにかと考えると、「サステイナブル」、持続可能ということになると思いますね。
その言葉を軸にして、農業とか、エンターテインメントとかいろいろなものがあって、みんなで育てていく、面白がって遊ぶようなことができないものだろうか と考えています。例えば、山梨あたりで、東京とつないだり、大阪とつないだりする場所を作れないだろうか、などと思っています。

安藤
あるでしょうね。まだ感性が豊かな若い人たちに、体験芸術ができるような場所がいいですね。体験から自分たちの心を開けるような場所ですね。
今、子供たちが大声を出さないじゃないですか。ケンカをしない、大声を出さない、勉強はするけども、既製品の勉強しかしないようになっていくと、脳が本当 に固まってしまうと思います。これは、世界中で同じだと思うんです、近代社会は。だけど、音楽好きだとか、彫刻好きだとか、色々あるじゃないですか。農業 と音楽で、いうならば新しい道を切り開いてもらいたいですね。ぜひap bankの森を作ってくださいよ。

小林
そうですよね。

安藤
初めは、ap bankに任せるのは駄目だと,役所などは言うでしょうね。でも、ap bankもある、別の団体のプロジェクトもある、そうでもない限りこの国は変わらないですからね。だから小さなこと、一人ずつから変わっていかないと。
大きく政治家が変えるというのもあると思いますが、やっぱり一人ずつの心から変わっていくということの方が大事やと思うんですけどね。

小林
どうもありがとうございました。一緒にプロジェクトができる日を楽しみにしています。

(撮影/浅田政志)
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安藤忠雄プロフィール

建築家。東京大学名誉教授。
1969年安藤忠雄設計事務所設立。
住宅、公共施設、商業施設など国内外の多くの建築を手がける。代表建築は大阪の「住吉の長屋」香川県直島町の「ベネッセハウス」東京の「表参道ヒルズ」など

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