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江守正多/ 枝廣淳子

no

06

小林武史 × 江守正多/ 枝廣淳子

「地球温暖化はほんとうにおこっているのか?」「正しい温暖化対策とは?」ある深夜のテレビ番組で、激論が交わされた。

異論を唱える側の主張とは?
なぜそのような議論が生まれるのだろう?放送では語りつくせなかった内容について、出演していた枝廣淳子さん、江守正多さんと、小林武史がじっくり語り合いました

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第1回 深夜のテレビで交わされた激論

小林 
先日の「朝まで生テレビ(*1)」では本当にお疲れ様でした。観ましたよ、全部。いろいろな意見が飛び交っていましたね。あの限られた時間と状況の中では、枝廣さんも江守さんもすべてを語りつくせなかったのではないかと思いまして。今日は、あそこで語りきれなかったことも含めて、思う存分お話いただきたいな、と。
「朝まで生テレビ」の中でもね、温暖化自体は嘘だという発言をしている人が、まだいるわけでしょう?
(*1):2009年8月29日、TV番組『朝まで生テレビ』の中で、「ド~する?!地球温暖化!」と題して激論が交わされた。この中で、「地球温暖化は本当に起きているのか」「環境問題への取り組み方は間違えているのではないか」という、枝廣さん、江守さんが提唱している取り組みへの反論とも言えるべき意見もぶつけられていた)
江守 
 温暖化はね、本当ですよ。
全員 
(笑)
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江守 
これはね、本当に疑っている人にはどうやったら信じてもらえるのか難しいんですよね。
世界中でこれだけの科学者が唱えているんだから、だから本当なんだと主張して、少数ではあっても反対意見があるのにねじ込んでしまうと、逆に反発を買ってしまうわけです。それはしないように気を付けています。
僕の立場としては、一つひとつ、例えば「温暖化は人間が出すCOと関係ない、太陽の変化のせいだ」という反論があれば、「いや、太陽のデータを調べたらこれこれこうだったから、そうじゃないと思いますよ」と、反論される根拠を確認して検討して消していくことだと思うんです。
実際、そういう風にしていると、温暖化は嘘だと言い張っていた人も最後には「まあ、嘘だとは言いませんが」くらいまでにはなるんですよ。
小林 
いずれにしてもほとんどの人が自分が子供の頃よりも暖かくなってきてるって、それはもう完全に思ってることだと思うんですけど。こないだの「朝まで生テレビ」の中では、「鎌倉時代はもっと暖かかった」と言っている人もいたでしょう? あの説は本当なの?
江守 
地域的な温度の変動という意味では確かに今くらい暖かいことが昔にあっても別に不思議ではないと思います。あと、東京の場合は都市化のせいで暖かく感じることなどもあるから、体感温度が一概に地球温暖化のせいだとは言えないんです。
でも、僕たちはもっと膨大なデータを持って、全体的なことを眺めて、検証した上で、地球温暖化は進んでいると判断しているんです。
小林 
なるほどね。ごく一部のデータを持って、「気温が上がったり下がったりするのは当たり前」と言われると、なんだか説得力があるように見えるかもしれないけれど。あの短い番組内でその間違いを否定するのは難しいことですよね。
江守 
はい。でも、嘘じゃないんです(笑)
小林 
僕は長い間、江守さんや枝廣さんとは付き合いがあって、いろいろな話を聞いて、そこで信頼しているから。信じていますよ(笑)地球温暖化の真意だけでなく、温暖化対策の具体策についても様々な意見が飛び交っているでしょう?「レジ袋を使わない、という対策はやるだけムダだ」などと、具体的な対策についても、専門家たちの間で見解の相違が生まれてきていますよね。
江守 
そういうことについても反対の方々には独自のエネルギーの計算があるし、僕にはリサイクルの専門家から聞いている「レジ袋は使わない方がいいんだ」という根拠になる計算がある。それを詳しく話すと長く専門的な話になってしまうのでそういう細かい討論はメディアに取り上げられにくいのですが、そういうところで科学者同士で話合いをして一つ一つ解決していくしかないんですよね。
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小林 
レジ袋は石油で作っているんだよね?
枝廣 
ある試算によると日本中のレジ袋を使わなくなったとしてもCOが減るのは0.2%という大した数字じゃないという意見もある。それなのに、取り組みが大げさ過ぎるなどという反発もあるわけです。
小林 
でも、0.2%も減らせるの?
江守 
その辺りの試算も科学者それぞれが独自の計算をしていることもあり明確ではないと思うんですけど......。
電気を消すとか、暖房の設定温度を変えましょうとか、そういうことはやらないよりやった方がいいですよね、僕はそう思うんですけど。でもそんな微々たるものは本質的じゃないという人もいる訳です。逆に、もっとCOをたくさん出してしまって、いつかイノベーションが起きて、そこで初めて解決すべき問題を解決すればいいのだ、というようなことを。
それと同調するわけではもちろんないのですが、僕自身もレジ袋を断ったら温暖化が止まるとみんなに思われたら困るという意識は持っているんです。そんなスケールの話じゃないですから。この温暖化を止めるためにはもっと大きく世の中が、社会が、がらっと変わらなければならない。ただ、その変わっていくためのスタート地点として、みんなが自分たちで出来ることはこれだけやったと思えるのはいいと思うんです。レジ袋を断るのも、電気をこまめに消すのも、冷暖房の設定温度を調整することも。
小林 
なるほどね。でもその流れって少しずつできてきているんじゃないかな。みんなレジ袋を断ったりもらったりするのも、自分の状況に合わせて使い分けができてきている。自分なりの環境問題への取り組み方というものが、少しずつ分かってきているのではないかと。
江守 
でも、人によるかもしれないですよね。温暖化を止めるには便利な生活を我慢するしかないというふうに思い込んで、一生懸命、我慢してる人もいるかもしれないですよ。そういう人が、「その我慢は無意味だよ」と言われてしまうと、一気にガックリしてしまう。だからこそ、今のこの小さな取り組みが大きな流れに繋がっていくんですよということを言ってあげないといけないと思うんですよ。そのメッセージが足りていない気がするんです。今の地球温暖化対策はグランドデザインがないことが問題だと思うんです。

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江守正多/ 枝廣淳子プロフィール

◆ 枝廣 淳子(えだひろ じゅんこ)プロフィール
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。2年間の米国生活をきっかけに29 歳から英語の勉強を始め、同時通訳者となる。米国のアル・ゴア元副大統領の著書「不都合な真実」の翻訳を手掛けるなど、現在は環境ジャーナリスト・翻訳者として幅広く活躍中。2003年、(有)イーズを設立。「自分を変えられる人は、社会も変えられる」をモットーに、自分自身を変え、さらに組織、地域や社会を変えていく「変化の担い手」を育てるため、各種講演、セミナーを開催中。福田・麻生内閣では「地球温暖化問題に関する懇談会」メンバーを務める。主な著書に『朝2時起きで、なんでもできる!』『地球とわたしをゆるめる暮らし』、訳書に『不都合な真実』ほか多数。
http://www.es-inc.jp
http://www.change-agent.jp
http://www.japanfs.org/ja

◆ 江守 正多(えもり せいた)プロフィール
1970 年神奈川県生まれ。1997年に東京大学大学院総合文化研究科博士課程にて博士号(学術)を取得後、国立環境研究所に入所。「地球シミュレータ」の現場で研究を行うために2001年に地球フロンティア研究システムへ出向し、2004年に復職した後、2006年より現職に就く。東京大学気候システム研究センター客員准教授を兼務。著書に「地球温暖化の予測は『正しい』か?−不確かな未来に科学が挑む」、共著書に「気候大異変地球シミュレータの警告」等がある。IPCCにも貢献した日本の温暖化予測研究チームで活躍する、若きリーダー。
http://www.cger.nies.go.jp/person/emori/

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