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江守正多/ 枝廣淳子

no

06

小林武史 × 江守正多/ 枝廣淳子

「地球温暖化はほんとうにおこっているのか?」「正しい温暖化対策とは?」ある深夜のテレビ番組で、激論が交わされた。

異論を唱える側の主張とは?
なぜそのような議論が生まれるのだろう?放送では語りつくせなかった内容について、出演していた枝廣淳子さん、江守正多さんと、小林武史がじっくり語り合いました

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第5回 "いい循環"のモデルケースを作る

 
小林 
ap bankは今度、自分たちで農場をやるというプロジェクトを立ち上げたんです。
江守 
それはどうするんですか? マーケットで売るとか?
小林 
マーケットでも売ると思うし、そのあたりの流れも今、考えていることころです。千葉の農場で作ったものを自分たちでどこかのお店で提供する、というような循環も生みだすことができたらいいなと思っているんですけれど。
江守 
農業のことは僕はあまり詳しくないのですが、今、枝廣さんの訳したリサージェンスの本(「つながりを取りもどす時代へ―持続可能な社会をめざす環境思想」)を読んでいるところで、「穀物の価格というのはほとんどアメリカの大農場で、国が補助金をいくら出しているかによって国際価格が決まってしまう」と書いてあったことに驚きまして。きっと農業にもそういう規制がいろいろとって、その中で、一念発起して参入した人たちが新しいことを実現してくのも大変なんだろうなと。
小林 
本当にそうなんです。ただ単に農業に従事する人が増えればいいという問題ではなくて、その後にうまく循環するシステムがないと。だからこそ、生産者の気持ちと、売る側の気持ち、そして買う側の気持ちも、経験して探りながらやっていかなくちゃいけないと思うしね。千葉の農場も、そういう意味でのチャレンジのひとつだと思っています。
でも、それでひとつの流れが出来たら、どんどんそのやり方を応用して、いろんな人が続いてくれるんじゃないかなとは思っているんですけどね。
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江守 
最近、新しい形の野菜の直売所なんかも増えていますよね。
小林 
そう、それもね、少しブームみたいなものになると、多少のトリックも生まれてくるんですよね。生産者が自分で値をつけることができるから、割高なこともあったりね。それにほら、少し話題になっているからといって、遠くからわざわざ買いに来る人なんかもいたりして。そうなるとね、ちょっとした旅行気分になってしまって、どんなものを食べても美味しく感じてしまったりね。ほらやっぱり、来てよかったと思いたいでしょ(笑)これが、直売所が街中に増えてくると、消費者は一気にシビアになりますからね。そこからが、難しくなると思うんです。
江守 
直売所でも同じ直売所で誰々さんのキュウリ、誰々さんのキュウリと並んでいて、それで競わせるところもありますよね。生産者の士気を高めるようなシステムというか......。
小林 
これはブランド野菜だから高いけど美味しいよ、これは有機野菜だから高いけど美味しいよ、と言われると、つい納得してしまいそうになるけれど、たとえばそれらのキュウリを目をつぶって食べ比べて、言い当てられる人ってそんなにいないと思うんです。だからやっぱり最後には、その製品にふさわしい適性価格の中で、どれだけいいものを提供するかということになってくると思うんですよね。これからは。
江守 
農業でも、すごい農業の天才みたいな人が作る野菜とそうじゃない人が作る野菜とでは違う、というような差ってあるものなんですか?
小林 
努力の仕方で全然変わってくるものだとは思う。ただ、肥料の問題なんかが出てくるとこれがまた複雑でね。味をよくするために化学肥料を使い始めてしまったり......。消費者が何を求めるか、それにどう応えるかという問題が出てきますよね。
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枝廣 
消費者のためを思っているんだろうけど、余計なおせっかい、みたいな工夫も世の中に多い気がします。例えば、最近果物を買うとみんな甘いですよね。あれは出荷する前に全部、糖度をチェックして、レベルに達していないものは廃棄してしまったりしているからだそうです。昔はときどき酸っぱいものがあったり甘いものがあったりするのが当たり前だった。果物を買う時には、この果物はこういう色が甘いんだとか、こういう形が美味しいんだ、なんて予想しながら買ったり、食べてみて、甘いからあたりだ!とか、酸っぱいからハズレだ~なんていうのも楽しみのひとつだったんですけどね。
江守 
枝廣さんは酸っぱいのが好きですよね(笑)
枝廣 
そうなんですよ(笑)なのに、なかなか酸っぱいのが買えないんですよ、最近は。
なんだかすごく刹那的な、利便性や快楽を求め過ぎてしまっているような気がします。消費者だけではなく、生産者や売る側や、みんなの目線を変えていかなければならないのかなと。
小林 
いたずらに糖度を上げたり、そうじゃないものは捨ててしまうのではなくて、果物本来の味を守っているんですよ、甘いものも酸っぱいものもあると思うけど、みなさんどちらも味わってみてくださいね、って正直に言われたら、逆に買う気にならない? 
枝廣 
いいですよね。それがコミュニケーションですよね。
小林 
そうそう、昔の八百屋さんなんか、今日のこの野菜は水っぽいよ、でもこういうのはこんな料理にしたら美味しいよ、なんて、料理の仕方までアドバイスくれたりしてたじゃない。そういう正直さや、コミュニケーションによって、売る側と買う側の信頼関係を作るんじゃないかなと思うんですよね。
最近僕は、いろいろなところで「結局、大切なのは正直であることだと思う」と言っているんです。伝える方にも受け取る方にも、根底に「正直さ」がないと、物事はどんどん誤解して間違えた方向に進んでしまう気がする。 環境問題についての様々な議論も、みんなが正直に話しあっていけば、きっと方向性が見える。と、信じたい。 今日は本当にありがとうございました。
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江守正多/ 枝廣淳子プロフィール

◆ 枝廣 淳子(えだひろ じゅんこ)プロフィール
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。2年間の米国生活をきっかけに29 歳から英語の勉強を始め、同時通訳者となる。米国のアル・ゴア元副大統領の著書「不都合な真実」の翻訳を手掛けるなど、現在は環境ジャーナリスト・翻訳者として幅広く活躍中。2003年、(有)イーズを設立。「自分を変えられる人は、社会も変えられる」をモットーに、自分自身を変え、さらに組織、地域や社会を変えていく「変化の担い手」を育てるため、各種講演、セミナーを開催中。福田・麻生内閣では「地球温暖化問題に関する懇談会」メンバーを務める。主な著書に『朝2時起きで、なんでもできる!』『地球とわたしをゆるめる暮らし』、訳書に『不都合な真実』ほか多数。
http://www.es-inc.jp
http://www.change-agent.jp
http://www.japanfs.org/ja

◆ 江守 正多(えもり せいた)プロフィール
1970 年神奈川県生まれ。1997年に東京大学大学院総合文化研究科博士課程にて博士号(学術)を取得後、国立環境研究所に入所。「地球シミュレータ」の現場で研究を行うために2001年に地球フロンティア研究システムへ出向し、2004年に復職した後、2006年より現職に就く。東京大学気候システム研究センター客員准教授を兼務。著書に「地球温暖化の予測は『正しい』か?−不確かな未来に科学が挑む」、共著書に「気候大異変地球シミュレータの警告」等がある。IPCCにも貢献した日本の温暖化予測研究チームで活躍する、若きリーダー。
http://www.cger.nies.go.jp/person/emori/

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