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岩井俊二

no

07

小林武史 × 岩井俊二

『スワロウテイル』での伝説的なコラボレーションから、小林武史の初監督作品『BANDAGE』へ。
互いを「盟友」と認める二人が、これまでの軌跡をふりかえりつつ、新しいスタートラインについて、語る。

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第1回 『BANDAGE バンデイジ』――
そのことは、あらかじめ約束されていた

 
岩井 
BANDAGE バンデイジ』はもともと、うちのホームページに送られて来た一般のアマチュアライターの作品だったんです。 90年代バンドブームあたりを舞台にした、バンドの追っかけっぽい女の子の話で、「これは映画になるんじゃないか」と思って。 僕も脚本を手伝ったりしながら進めていたんですけど、映画化にあたってはちょっと難航して。紆余曲折あるなかで、5年くらい前かな、「相談してみよう」と思って、小林さんに電話したのがスタートだったんです。
小林 
実は、最初はピンとこなかったんだよね(笑)。 もちろん岩井くんは映画の世界の人だから、「岩井俊二プロデュース」として、広い視野で見てるのは、重々わかっていたんだけど、僕のストライクゾーンのどこに入れていいのか、悩んだんですよ。
その時に、考える時間が結構あって、ミーティングを持ったんだけど、スタッフも含めて決め手に欠くところもあって。「難しいんじゃないのかな」と思った時期もあったんだよね。

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人の感情に触れる音楽

小林 
そうこうしているうちに僕のほうもap bankの流れで、環境のことや未来のことを思っている時に、「人間の感情を大切にしないままで、未来やCO2のことを語っても、誰もついて来ないだろう」という感覚が生まれてきた。
音楽でいうと、阿久悠さんが亡くなって追悼番組を見ていて、昭和という時代の情緒を揺さぶるような歌を聴いて、強くそう思ったんです。

もともと僕は映画がすごく好きで。PVについても深く関わってきたけれど、PVの監督たちを見ていても、音楽から映画へは簡単に移行できるものじゃない。理由はもういろいろと思うけれど。

そんななか、ミスチルの「HOMEツアー」で、感情の部分で言うと初めて「プレイヤーとして」ステージに上がったんです。プレイヤーとしてツアーに出ることは、今も続いていて、プロデューサー兼キーボーディストとしてステージに乗っているわけです。 その「HOMEツアー」で、桜井が「ミスチルもデビュー15周年で」といった話をしている時に、「ああ」と思ったんですよ。つまり、桜井と僕が出会って、かれこれ20年近くだけど、桜井にしても僕にしてもメロディーや言葉を、時代の空気なりその時の感情を浮かびあがらせて、言いかえれば置き換えたり並べ替えたりして歌にしてきた。

そこにはもちろん機運も意図もあるけれど、ある意味ではコラージュしているだけだとも言えるというか。そういうカルチャー的な潮流を思った時に、90年代は、いろんなジャンルがパワーを持って出てきて、実験的な要素がいろいろあったことに思い至ったんですよ。

結局は消えていったバンドもあったけれど、すごく意欲的な時代でもあった。そう思うと日本人は西洋料理をアレンジしてハヤシライスやとんかつを作ったり、組み合わせるのがうまいじゃないですか。
90年代という時代の中で言うと、僕らの音楽の中でも「ミックス」とか、1個のキーワードになり得るものがあったんだよね。

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最初に、エンドロールの曲があった

小林 
ap bank fesも毎年やっていると、寅さん化しているとも言えるんだけど、7月になるとつま恋に集まるのを楽しみにしてる人たちがいてくれるというのは、感動的じゃないですか。 年輪みたいなもので、何年続くかわからないけど、「また会えたね」というだけでもウルウルしている人もいる。

僕も岩井君も洋楽を聴いて育って、こうやって作品を紡いでいるのもコラージュの精神があるからだと思う。 『リリイ・シュシュのすべて』だって、田んぼの中で、ドビュッシーがガーンと流れているし、一神教や多神教、いろいろな文化がとミックスしているような感覚は僕の中にずっとあるので。

日本で音楽をやっていること自体がすごいミックスではあるわけで、そういう視点で90年代を捉えられると思ったときに「たとえばこんな足場が掛けられる」と納得できた。
「じゃあわかった」と思って、エンドロールで流せるものを1曲、作ってみようと思ったの。あっさりできたのが今回の「BANDAGE」という主題歌で、今まで、話してきたことを歌詞にどんどん書いていって、スタッフとかいろんな人に聴いてもらったんですよ。
そんな具合で、岩井君の思っていたのとは違ったかもしれないけど、音楽を含めて、僕がグッと引っ張っていくことにはなったんですね。
岩井 
「BANDAGE」は、かなり聞いたことのないような歌詞ですよね。なんていうのかな、言葉が美化されてない――歌の歌詞はもうちょっと美化されているものかと思っていたので。
小林 
そうだね。
岩井 
そんな曲を赤西君が歌うということを含めて、インパクトがあると思う。
小林 
今、90年代的なああいう曲を、若い人たちが聴くということも面白いよね(笑)。
(撮影/大城亘 構成/編集部)
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岩井俊二プロフィール

1963年生まれ。宮城県出身。映画監督、脚本家、プロデューサー。横浜国立大学卒業後、1988年よりプロモーションビデオとCATVの番組制作をスタートし、その独特な映像世界が注目を浴びる。 1993年、テレビドラマ『ifもしも~打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞受賞。『Love Letter』(1995年)で数々の映画賞に輝く。そのほか『スワロウテイル『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』など話題作多数。最新作としては、NYを舞台にしたラブ・アンサンブル映画『NEW YORK, I LOVE YOU』(主演:オーランドブルーム/クリスティーナリッチ)がある。(2010年2月公開)

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