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岩井俊二

no

07

小林武史 × 岩井俊二

『スワロウテイル』での伝説的なコラボレーションから、小林武史の初監督作品『BANDAGE』へ。
互いを「盟友」と認める二人が、これまでの軌跡をふりかえりつつ、新しいスタートラインについて、語る。

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第2回『BANDAGE バンデイジ』
――そのことは、あらかじめ約束されていた その2

たくらむための勇気を

小林 
映画を観て、最終的に感動できたらいいと思うけれど、最初から感動狙いというのもつまらないじゃないですか。勇気を持って、新しい化学反応を求めて、コラボレーションを企てるというか、たくらむべきだなあと思うわけなんですよ。 安全な目標みたいなものがなかなか見えない時代だから、ややもすると思考停止になりがちでしょう。でもバンドの良さっていうのは、つまりはコラージュのようなものだったりするしね。
岩井 
音楽を作る人間として、同時にプロデューサーとして、小林さんが『BANDAGE バンデイジ』という映画の大事なところを追い込んでいったんですよね。そして決まっていた監督が、はずれることになったときに、深夜の電話で相談をして......。
小林 
その時に、「主演は赤西で、楽曲はこうですよ」と、プロデューサーとしてどんどん映画を詰めていったから、自分が監督をやることになったのも幸運だったんだと思う。
岩井 
「監督、やってみませんか」と、そのときの電話で言いましたね。
小林 
岩井俊二というのは、僕にとってはかなり関わりの深い友人なので、自分の音楽という軸と共に、岩井君と僕のラインを一個、作れるのだったらいいな、と思っていたからね。

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そして、初監督へ

岩井 
『BANDAGE バンデイジ』という作品を、どうしなきゃいけないのかということは、僕はプロデューサーとライターの立場で、小林さんは音楽監督という立場でディスカッションに参加していたから、共有しているものが大きかった。 僕たちと同じレベルまで来ることができないと、監督としてのディスカッションにならない。だから途中で、決まっていた監督がいなくなってしまったときに、誰かを呼んできても、たぶん、この世界観の全容を理解するのは難しいだろうと思ったんです。 そういう意味で、小林さんならばわかりあえているという状況があったので、僕の中では、「この映画の監督を小林さんがやるのは、そんなに大変ではないんじゃないか」という気がしていました。振り返ると自然な流れだったとしか思えない。

実際に出来上がった姿を見てみると、もう始めから小林さんの監督が予定されてたかのような感じだし。実はいろんな紆余曲折があったんだけど、ほんとに綺麗に、もうここへ来るためにすべてが約束されていたかのような気がしますね。小林さんと組むと割とそういうことが多いんですけど。
赤西君の起用も含めて、『BANDAGE バンデイジ』のポスターを見ると、彼以外なかっただろうっていう気がして仕方がないですよね。


最初から、ヴィジョンはあった

小林 
話してきたように、自分も長くバンド(音楽)にかかわってきたこともあって、監督もありうるかもしれない、とは思っていたよ。ただ、現場に入った時のハードルについては「どうなんだろう」と、想像がつきにくかったから不安はあったけど。
ただ、「この映画は、こんなふうになるといいんだよな」という、僕のヴィジョンは、音楽で追い込んでってる時にかなりあったんだよね。

結果として、どの程度の支持を集められるかはわからないけれど、自分にとってこの映画がどういうふうになったらいいかって事だけは、ずっとはっきりしていたんだ。
やりにくいなって事がなければ、たぶん作れるんだろうな、とは思っていましたよね。だってほら、音楽を作るのも、僕の場合はチームプレーだから。人に伝えていくことの積み重ねで作ってきてるから。
もちろん、PVを撮ったりとか、ある程度は経験もあるし、全体の構成とかね、ストーリーみたいなアウトラインとかも全部、プロデューサーとして基本的にやってきているので。
あとは絵コンテを準備するといいとか、助言してくれる人もいたけれど、手持ちカメラがメインの撮影だったから、あえてやらなかった。映画の予算的な規模もあって、岩井君のある種のシステムというか製作チーム既にいたっていうのも含めてね、そのやり方で進んでいったかな。

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初めての撮影現場で

小林 
ミスチルのプロデュースは10年来のチームでやっているので、阿吽の呼吸なので、細かいことまで言わなくて済むんです。この映画は僕として初めてのチームだけど、割と阿吽の呼吸になるのが早かったですね。
今回は、マルチカメラで撮っていったので、ワンシーンずつ重ねて撮っていくことはなかった。PVのライブシーンを撮る時とかも、いくつかオイシイところをとにかく撮っておいて、あとは編集で繋いでいくやりかたなので、そちらに近かったかな。 最初の撮影がライブシーンだったから、すぐに、いわゆる水を得た魚のようになっていったんですよ。
岩井 
そういう意味では、僕は元をただすと、ミュージックビデオをベースに、ドラマにいったので、最初はすごい批判をされたんですよ。
要するに、長回しで芝居をずーっと撮る、といったことが常識的じゃなかった。ワンシーンのお芝居をずーっとカメラが撮っていて、じゃ次、またアングルを変えて続きを撮るというのが、その頃のオーソドックスな方法だったんですよ。

でもミュージックビデオで歌を撮るのは、カメラが一台だととにかく撮り続けるじゃないですか。それが役者さんからすると、嫌だったみたいで、最初はすごい反発もあったんです。
小林 
ああ、そうか。
岩井 
逆に、普段はどうやっているんだろうと思ったら、たとえば(目の前のカップを取って)、コーヒーを一口飲んで、次のセリフを言うから、「用意スタート」、「はい、カット」みたいな感じなんですよ。
「OKですか?」
「OKです! 次行きます!」
「次はこっちから行きます」
「こっからですか? え?」

演技がつながらないから、役者は自分が何をやっているかもわからない。 僕も自分で演出していてさえ「こんなにバラバラで撮っていったら、わかんなくなるよ」という感じ。

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日本の非常識、ハリウッドの常識

岩井 
「芝居があるなら、ずっと続けて撮っていったほうが、みんなわかるじゃないか」と思って、ずっとそう主張して、やってきたんです。
それがだんだんとスタンダードになって、僕がやり始めた時はほんと存在していなかったけれど、あとになって、僕のやりかたが、ハリウッドなどではほとんど同じようにしているのがわかったり、別に何も珍しいものではなかったんですよね。

でも最初は、いろいろな人に確認してみたくらい、驚きました。
「本当にこんなふうに、細切れで撮るんですか」
「普通はそうなんだよ」
えーっ、わからん、と思った。なんでこんな撮り方をしなきゃならないんだ。せっかく役者同士が芝居しているのをライブで見られるのに、どうしてこんなに切り刻まなきゃならないんだっていう。見ていても面白くないのに(笑)。


物語の流れを作る

岩井 
とはいえときどき、僕も絵コンテ方式になっちゃうんですけどね。
僕はどちらかというと、撮影を通しでやるイメージですが、小林さんに「そうしてください」と言ったわけでもないんです。 やりかたは、いかようにでもあるので――という感じで、話をしたと思うんですけど。でも、『BANDAGE バンデイジ』ができあがってみたら、なんかタフな1カメ長回しでとか、僕でもひるむような、撮りかたでしたね。
相当な自信と、勇気がないとなかなかできないような。逆に、プロの監督に普通に頼んじゃうと絶対やらないですね、怖がっちゃって。小林さんみたいな撮りかたは、もう、絶対できないと思います。
小林 
音楽をやっていると、「時間軸の中でどこがツボなのか」ということが、ものすごくわかるんですよ。
たとえば登場人物が二人いて、どういうふうに視点が流れていって、今、お客さんは何を聴いて何を見ているのかという関係性。物語の比重がどんなふうに移りながら、何につながっていくのか――というセオリーがわかるのかな。

物語を水が流れるように、自分の中で描いてみているんだと思う。それは自分にとって難しいことではないんだよね。その流れさえわかっていれば、芝居の足りない部分や、カメラ回しでどう比重をかけていけばいいのかもわかる。
音楽を演奏するのも、長時間の流れを実際に頭の中でイメージしながら、そこをなぞっていくような作業だから。僕の場合はプロデューサーでもあるから、さらにプレーヤーの中で、「一発ここで仕掛けよう」とか、全体の流れを作ってきたからかもしれないね。

(撮影/大城亘 構成/編集部)
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岩井俊二プロフィール

1963年生まれ。宮城県出身。映画監督、脚本家、プロデューサー。横浜国立大学卒業後、1988年よりプロモーションビデオとCATVの番組制作をスタートし、その独特な映像世界が注目を浴びる。 1993年、テレビドラマ『ifもしも~打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞受賞。『Love Letter』(1995年)で数々の映画賞に輝く。そのほか『スワロウテイル『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』など話題作多数。最新作としては、NYを舞台にしたラブ・アンサンブル映画『NEW YORK, I LOVE YOU』(主演:オーランドブルーム/クリスティーナリッチ)がある。(2010年2月公開)

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