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佐藤可士和

no

04

小林武史 × 佐藤可士和

2004年、Bank Bandの記念すべきファーストアルバム『沿志奏逢』のジャケットをデザインしたのが、今やあらゆるジャンルで「デザイン」を仕事にする、佐藤可士和さんだった。



『沿志奏逢』のキュウリイラストはどこから生まれたのか。
この5年間で変わったこと、変わらないこと、二人の対話が始まったーー。

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第2回 環境問題は存在しない?

小林
『不都合な真実』が出てきて、アメリカのお墨付きが世界から出たら、みんな「右へならえ」とやりだした。それまでは「チームマイナス6%と言われてもねえ」といった、懐疑的だったり、今ひとつ付いていけない感じも大衆の中にはあったのに。それでテレビでも、去年くらいまではエコブームが凄かったですよね。でも実感として、みんなに伝わりきった感じではないよね。
佐藤
『不都合な真実』が出たのは何年前でしたっけ?
小林
2006年にアメリカで、07年に日本でも公開された。僕もゴアさんにロンドンで会ったよ。2007年7月7日に全世界でやるイベントがあるから、僕らにも参加しないかということだったんだけれど、実際は関わらなかった。
佐藤
『不都合な真実』のブームのせいで、逆にeco-resoはぼんやりした感じになっちゃったんですか?
小林
その前から、なんとなく日本にエコブームがやってきていたんだよ。それで、エコが当たり前に商売にも使われるようになって、テレビも素通りのようにエコをやるようになった。その盲目的な空気が、僕とか櫻井とかからすると、「エコ」という言葉を使うのが恥ずかしい感じになったんだよね。
佐藤
わかります。
小林
そのせいでap bank fesでも、エコについてあまり語らずに、音楽だけやっているみたいになった時期があったように思うな。そのときに、僕たちは、人との繋がりや多様性、地面に近い何かーーといった感覚に下りていったんだと思う。
同時に、可士和君もそうかもしれないけれど、農業への思いが芽吹き出した時期でもあった。だけど産業的にエコをどう促進していくのかは見えづらくて、思いっきり旗を振りにくいな、という時期。
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環境問題は嘘なのか?


小林
さらに『不都合な真実』のあと、ピタリとエコが沈静化して、反動のように「環境問題はない」という意見が出てきたんだよね。
代表的な存在としては、武田邦彦さんという名古屋の工学教授がいて、「環境問題は存在しない」という独自の説を展開した本がベストセラーになったり、バッシングが始まったな、という感じだった。武田さんには、僕自身が会って話もしたけれど、論点がまったく噛み合わなくて、どうにもならなかった。
佐藤
武田さんは、『日本人はなぜ環境問題にだまされるのか』を書いた方?
地球温暖化と言われているけれど、そうじゃない、という説の?
小林
そうそう。
佐藤
僕、書評の対談をやっていて、武田さんの本を一度、取り上げたことがありました。
小林
武田さんが言っていることのすべてがおかしい、ということではないんですよ。だって、彼の主張は「マスコミが言っていることを鵜呑みにしてはいけません」というだけのことだから。
武田さんは「地球温暖化が、CO2だけの理由とは言いきれない」というけれど、人類史上、空気中のCO2の含有量がこんなに上がったことはなくて、温度の変化とCO2の量のグラフとが一致しているのは確かなんだよね。
佐藤
武田さんの主張のディテールは忘れてしまったんだけれども、「地球はどちらかというと冷えている」といったことですよね?
一般的に言われている事と真逆の説で、ものすごく驚きました。

そもそも武田さんは、何を研究している方なんですか?
小林
資源材料工学という分野で、ゴミの研究をしていたんだよね。ゴミのリサイクルについて、「むしろ環境に負荷をかけているんじゃないか」という問題提議をしていて。それは当然、初期段階などを考えれば起こりうることなんだよね。
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佐藤
武田さんと会ってみたかったんですか?
小林
うん、僕からすると、なぜ武田さんがしているような主張が可能なのか、わからなかったから、『switch』の対談に来てもらった。そのときに感じたのは、科学者としての倫理観に守られていて、「私は調べたことから思ったことを言っているから、何も悪いことはない」という鎧の中にいる人なんだよ。それは不可侵な領域というか、安全地帯というべきところだよね。
武田さんは、「日本人が鵜呑みにしやすいことや、騙されやすいことに、むしろ警鐘をならしてやった」くらいの意義を持ってやっているから。

僕からみると、エコも盲目的にやっていくのではなく、大量消費や破棄を前提にして、「そこにあるから便利だ」というだけの方法をとっていく社会は、CO2の問題に限らず、本質的な意味で続かないのではないか、と思うんだけど。

贅沢三昧をするのではなくて、等身大の中にバランスがあるんじゃないか。
たとえば「もったいない」とか「無駄を省こう」とか、そういうことに気付いた人が、アクションを起こしている例もたくさんあるからね。それに対して、「武田さんのように『日本人は騙されやすい』という角度だけで、自分の実証を進めてしまうのは危険だ」ということを言ったんだけれど、話は平行線だった。
佐藤
小林さんを説得できるような意見はなかったんですか?
小林
うん、なかったね。
たとえば、「マイ箸なんていうのは、愚の骨頂で、割り箸を使ったほうがいいんですから」と言うわけ。「だって、間伐材を使えば経済的にも循環するから」とか、初心者みたいな正論を言うわけだけれど、間伐材をとるために日本の森に人が入るためにはコストがかかる。
中国からやってくるものに対しての、価格競争といったことは全部すっとばして言うんですよ。日本人が割り箸をいっぱい使うようになれば、中国は木を切ってでもやるからね。国産の間伐材で作る割り箸は、現状ではかえってお金がかかる場合も多々あるんだけれど、そのおかげで循環が良くなるとも言えるーーでも、武田さんはそうした検証なしに突っ走っちゃうから。
(撮影/今津聡子 構成/エコレゾ ウェブ編集部)
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佐藤可士和プロフィール

アートディレクター/クリエイティブディレクター
1965年東京生まれ。博報堂を経て「サムライ」設立。SMAPのアートワーク、NTT docomo「N702iD/N-07A」のプロダクトデザイン、ユニクロ、楽天グループのクリエイティブディレクション、国立新美術館のVIとサイン計画等、進化する視点と強力なビジュアル開発力によるトータルなクリエイションは多方面より高い評価を得ている。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか受賞多数。
明治学院大学、多摩美術大学客員教授。著書に『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社)

http://kashiwasato.com

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