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佐藤可士和

no

04

小林武史 × 佐藤可士和

2004年、Bank Bandの記念すべきファーストアルバム『沿志奏逢』のジャケットをデザインしたのが、今やあらゆるジャンルで「デザイン」を仕事にする、佐藤可士和さんだった。



『沿志奏逢』のキュウリイラストはどこから生まれたのか。
この5年間で変わったこと、変わらないこと、二人の対話が始まったーー。

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第3回 オバマ大統領の登場

小林
流れを振り返ってみると、非常にエコが流行った時期があって、去年あたりになると「反エコロジー」の風が吹き荒れていたんだけれど、オバマさんが政権をとった途端に、またブワーッと変わったよね。エコカー減税も大きかったし。もともとエコには、政府が補助金を出したりする例も含めて、エコ的な発想が入るおかげで経済が促進されたり、実際に買う側も見返りがあったんだけど、そこがあらためてクローズアップされたね。
そもそもエコカー自体が経済的にもすぐれている、ということは言われてはいるわけだから。「経済的に圧迫しない」という理由で追い風が吹きはじめたのはいい流れでしたよね。

オバマ大統領も雇用の問題や経済社会のありかたを再構築していくために、グリーンディール政策を言い出したから。それ自体もいろいろ言われてはいると思うけれども。でも、オバマが大統領になってくれたのは、僕らが言う原点回帰に、直接的な関係はないけれど、eco-resoにはつながったかも。黒人初のアメリカ大統領ということもあったし、レゾナンスが本質的な意味できたな、と感じたよね。

環境問題は、学者だけの問題だったり、もしくは「クライシスなんだ!」と危機感を煽るものだったり、非常に優等生的に「地球にやさしく」というだけではない、ということ。
実感として「世界の問題がつながっている」という、そのことに何らの形で、一人ひとりの気づきかたでみんなが責任を感じていかないと、社会は立ち行かないだろう、ということは提示してくれたと思う。最初に僕らが思った「エコレゾナンス」という言葉が生まれる背景として、時代が追いついたという感じもするよね。
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佐藤
そうですね。今日、初めに「記憶がヴィヴィッドだ」と言ったのは、5年前に考えたことが今でも全然古くないからなんですよ。だからヴィヴィッドなんだと思う。
それこそ、5年前には「早い」も「遅い」も考えていなかったけれど、今にして思えば、小林さんたちはかなり早い時期から考えていたんですよね。今日、話をずっと聞いていても、5年前から根本的な考え方も変わってないし。
あらためて「僕たちが話した後に、エコブームがあったんだな」と思ったんだけれど、全然ずれてなかったですよね。
小林
ブームには辟易としたけどね。エコという言葉に吸引力もあったし。
佐藤
「マス化する」って、そういうことですよ。必ずいいこともたくさんあって、そういう意味ではレゾナンスも起きているんだけど、弊害も当然あるから。
小林
そこから、殻を破っていかなくてはいけないということなんだけれどね。
佐藤
まさに波と一緒で、いくつも障害を乗り越えていって、その波が大きくなっていく。だから必ず、落ちることもあると思うんですよ。それでも波が止まらないことが重要だと思う。


〈明日ラボ〉という試み



小林
ap bankは最初から「省エネしましょう」とか「地球にやさしい人間になりましょう」ということは、一切言ってないんだよね。
そもそもap bank は富と権力の肥大化したことの弊害で、みんながあまりにも「お金のものさし」に寄り過ぎているんじゃないか、という疑問から始まっているから。「お金は道具にすぎないんじゃないか」という、カウンターカルチャーやロック的な物の考え方から入っていったからね。この点はずっと変わらないし、あえて「お金」に立脚してきたのは、結果的に良いことだったなと、今でも僕は思うんだよね。
佐藤
その点が、画期的でしたよね。
小林
さらに今年は<明日ラボ>という新セクションを作って、投資も始めているけれど。<明日ラボ>のことは、もう話したっけ?
佐藤
まだです。
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小林
ap bankは融資をずっとやってきたけれど、融資をして頑張るのは、相手の人だから限界がある。それは作ったときから、考えていて、融資するだけでなく、踏み込んだ活動をすることが必要だとずっと思っていて。

僕はプロデューサーだから、バンドやアーティストに対して、良いところやダメなところ、惜しいところを指摘して良い方向を探していくのも仕事の一つなんだよね。ときには、「君たち、一緒にやればいいんじゃない?」と提案したり。
そうやって結びつけたり、方向を探すことを一緒にやってみることは、必要だなと思っていたわけ。

僕たちがそういう存在になるためには、これまでのap bank の活動から一歩前に出て、「つないでいく」というのもやらなくちゃいけないことだから。そのためにkurkkuも始めたんだけれど、その結果、いろんなことが分かってきて、もう一歩前に出て、一緒に新しい魅力を作っていくセクションが必要だ、というところに至ったんです。
その新しいセクションが〈明日ラボ〉。
明日ラボへの僕たちの思いや枠組み、リスクについては、ap bank fesの前にウェブに掲載したんだよ。投資すればリスクも当然高くなってくるし。だけどリスクを怖がっていると安全地帯にしかいられないから、そこも全部書いてみた。結果としては、ap bankが次のステップに行こうとしていることを評価してもらったと感じたし、反論みたいなものは全然なかったんだ。
佐藤
農業はじめ、いろいろなところで新しいムーブメントが起こっているから、面白いかもしれないですね。
小林
農業なんて、まさに戦後日本社会のいろんな問題をはらんでいるけれど、だからこそ、どこかで局地的な成功例を作る必要があると思うんだよね。 たとえば農業をやるだけでなく、一般の人も体験できるような場所とか。
佐藤
海外のファーム&ステイのように、農場に滞在するという形ですか?
小林
まだプランの段階だけれど、あくまで農業が基本になっていて、そこに滞在するのはあり、という形かな。そこを訪れた人が農業をやることも、もちろんオプションになっている。
大事なのは、農業をやる人たちがそこに定住していること。僕はそこに人を送り込みたい、とも思っているわけ。
(撮影/今津聡子 構成/エコレゾ ウェブ編集部)
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佐藤可士和プロフィール

アートディレクター/クリエイティブディレクター
1965年東京生まれ。博報堂を経て「サムライ」設立。SMAPのアートワーク、NTT docomo「N702iD/N-07A」のプロダクトデザイン、ユニクロ、楽天グループのクリエイティブディレクション、国立新美術館のVIとサイン計画等、進化する視点と強力なビジュアル開発力によるトータルなクリエイションは多方面より高い評価を得ている。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか受賞多数。
明治学院大学、多摩美術大学客員教授。著書に『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社)

http://kashiwasato.com

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