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細川秀和(Lee Japan)

no

08

小林武史 × 細川秀和(Lee Japan)

1000円でお釣りがくる“激安ジーンズ”が世の中を騒がせている中、オーガニックコットンを使ったデニムの開発に取り組んでいたLee Japanの細川さん。環境意識だけではなく、経営者としての判断がそこにはあったといいます。
ファッションの分野で画期的な取り組みを続ける細川さんと、既にいくつかのプロジェクトでコラボレーションをしている小林武史が、いま考えること、そして、これからのチャレンジについてを語り合います。

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第2回 未来に向けて匍匐(ほふく)前進を

 
細川 
激安ジーンズって、消費のされ方がビニール傘みたいですよね。すでに持ってるけど安いから買ってしまうというような。
小林 
でも、そろそろ値段を下げてお客さんを釣るというやり方は限界がきているような気がするんですが。
細川 
そうですね。一方では中国より人件費の安いカンボジアやバングラデシュに工場を移すことで安さを維持しようという動きもあります。
小林 
まだまだ豊かになりたいと思っている人たちがいて、その人たちがいわゆる"先進国"といわれる生活レベルを目指している以上は、資本主義はこれからも膨張せざるを得ない。そこでは、そういった価格にまつわるあれこれというのはこれからも続いていくんでしょう。一方で、だからこそわれわれが取り組んでいる『プレオーガニックコットンプログラム』のようなものが意味を増していくんだろうね。

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細川 
この『プレ』というところが重要なんです。単なるオーガニックよりも1枚カードが多いわけです。ビジネス的に見てもそこが面白味として魅かれます。
小林 
まさにその部分に、インドの農家の人たちを『オーガニックへいざなう』という意味が入ってますからね。既にLee×POCという製品が世に出ていますが、順調なんですか?
細川 
すごくいいペースで推移してますよ。話はそれるんですが、ちょっといい話があって。
小林 
なんですか?
細川 
普段SHIBUYA109に入ってるショップのスタッフブログなんかを見ていると、ショップの女の子たちがプレ・オーガニックコットンのことを語ってたりするんですよ。小冊子に書いてある文章を見ながら一生懸命説明してくれていて。たまに誤字脱字があったりもするんですが(笑)。そういうのをみるとなんだかとても気持ちがいいんですよね。店頭でもお客さんと接客しながら「これオーガニックコットンなんです。なんだかわからないけど地球にとてもいいんです」みたいな感じで。『プレ』の部分がすっとんでたりもするんですけど(笑)。
小林 
もう、それはそれでいいんだよね(笑)
細川 
そうなんですよ。そういう会話が生まれたこと自体がひとつの成功じゃないかなと思っています。

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小林 
そして、ついに近日もう1枚すごいカード、革命的なカードが出てきますね。Lee/kurkkuという。これは本当に物議を醸すというか、どこかに抵抗感があるというのを承知で世に出していくという。ちょっと紹介してもらってもよいですか?
細川 
はい。デニムというのはその製造行程で本当にたくさんの水と化学薬品を使います。水は1本あたり100~150ℓ必要ですし、薬品の中には赤字のもの(劇薬扱いを示す)もあります。もちろん排水に関しては巨大な浄水設備を使って、インディゴの泡が立っているものを川に流せるまでにしてはいるんです。それはそれですごいことではあるんですけど。
小林 
でも、ちょっと見方を変えれば「水も薬品もそんなに使わなければよいのでは?」と。
細川 
そうなんです。どうすれば使わないで済むのかを考えたときに、行き着いたのが"プリント"だったんですね。INKMAXというところが微粒子インクを使った染色技術を開発した。これなら新しいジーンズに置き換えることができるんじゃないかという発想でした。まず実際のジーンズの縫製をバラして、そのパーツ画像をコンピュータでスキャンして、POC100%の生地にプリントしていく。それを裁断して縫い合わせれば、元と瓜二つのジーンズができあがるわけです。その結果、水の使用は1/10以下に抑えることができます。
小林 
実物を見ましたけどスゴイ完成度だよね。物としてはもちろんフェイクではあるんだけどそれが逆にかわいい。男の僕としては"実物の無骨な本物感"ってのにこだわるところもあるから個人的にはフィットしないかもしれないけど、女の子なんかには本当にお勧めだなあ。さらっとこれを着ていたら株が上がるんじゃない? かわいいうえに製品の意義なんか説明されたら男としては頭が上がらないよね(笑)。あ、あとは草食系男子なんかにはぴったりかも(笑)。
細川 
ファッションに関して遅れているなと思うのは、エンジニアの領域なんですよね。海水を真水に還すとか、砂漠に花を咲かせるというようなところでは新しい動きはいろいろあるんですが、ファッションの分野でも画期的な技術が次世代の心を動かすというところにもっとチャンスを感じてほしい。このINKMAXの技術なんかはまさにそういう手本になっていますね。
小林 
僕らap bankもお金を使って何かやろうというときに、例えばどこかの団体に寄付して終わりっていうのがいちばん楽ではあるんですよ。でも、完璧なロジックなんて多分ないにしても、未来に向けて少しずつでも匍匐前進していくことが必要なんです。僕らも例えば農業で風車が活用できないだろうかというようなことを考えていたりするんです。すごく難しいチャレンジではあるんだけど、そうじゃないと"わくわく"がないからね。音楽でいうところのグルーヴしていく感覚とでもいうんでしょうか。

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細川 
次の段階ではこのINKMAXの技術を使ってクリエイター/アーティストのみなさんに表現してもらいたいと思っていて。
小林 
そういうアラート(警鐘)ではないところにこそクリエイターの発想が生まれるでしょうからね。これからも期待しています。
(撮影 大城亘/構成 編集部)
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細川秀和(Lee Japan)プロフィール

Lee Japan ディレクター/取締役。大学卒業後、「エドウィン」に入社。以後20年近くにわたりLeeの商品開発に携わる。デニムの知識は業界随一。
Lee Japan :http://www.lee-japan.jp/

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