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櫻井和寿新曲「365日」秘話
Kobayashi×Sakurai

小林武史 × 櫻井和寿

Mr.Childrenが現在敢行中のドームツアー、
「Mr.Children DOME TOUR 2009 ~ SUPERMARKET FANTASY~」。

このステージで披露されている新曲「365日」に秘められている思い、そして、そこから芽生えた気持ちを、小林武史と櫻井和寿が語りました。

愛情を音楽で伝えていきたい

 
小林 
今、まさにMr.Childrenはドームツアーの最中だけれど、まず言いたいのは「365日」という新曲が、とても世の中に浸透してくれているな、ということ。僕が手がける中でも、Mr.Children的にも、ライブ中に流す映像が、観客に具体的に投げかけるようなかたちでアンコールに繋がっていくというのは、初めてのテイストだと思う。だけど、心みたいなものがすごく届いているのを、観に来てくれた人から頂いたアンケートのコメントを見ていても感じるんだよね。
そういう意味でも、櫻井がそもそも「365日」を作るきっかけとなった思いを、この機会に話すのはどうかな?と思って。
櫻井 
はい。そもそも、2006年に山本シュウさんが中心になって開催されている、レッドリボン(*注1)ライブに出演させてもらったときに、「献血カーみたいに、エイズの検査をする車を走らせることはできないかと考えていて」というような話をシュウさんから聞いたんです。
シュウさんは「若い子たちに、エイズ感染の予防を訴えかけたい」という思いが強くて。すごくシュウさんの熱意が伝わってきたんだけれど、だとすれば、「エイズって怖いものだ、みんな気をつけよう」というのではなく、もっと楽しいイメージで伝えることができないかな、と思ったんです。例えば、恋愛をするときに、ただ勢いでどうにかなっちゃうのではなくて......。
(注1 レッドリボン:エイズに苦しむ人々への理解と支援の意思を示すために、"赤いリボン"をシンボルにして始まった、世界的な運動)
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小林 
相手のことを思いながら待つ、というようなこと?
櫻井 
待つ、という行為も、愛情を深めていくためのひとつの前戯のような感じで、楽しみにできないかな?と思ったんです。 それで、「性交渉を持つ前に、病気のことをお互いに考えたり、自分が病気であることの可能性も含めて、相手を思いやったりできたらいいのにね」なんてシュウさんと話していたときに、直感で「検査、というと堅苦しくなるから、そういうものにすごくポップな名前をつけたら、みんな楽しんでやるようになるんじゃないか」と思いついて。それをシュウさんに投げたら「じゃあ、ラブチェックってどう?」という言葉が返ってきたんです。それで「いいネーミングだな、そんな活動ができたらいいな」と思ったんですね。
けれど、中身よりもイメージやムードが先行して伝わっていくことが大事だから、これを具体的なアクションに繋げていくのはすごく難しいことだと思っていました。
ならば、ラブチェックがムードとして伝わるにはどうすればいいか、と考えたときに、僕はミュージシャンなので、やっぱり音楽で伝えていきたい、と思ったんですね。例えば、ラブチェックに賛同するアーティストがステージに立って、モデルや著名人のような影響力を持つ人たちも、お客さんというかたちで賛同しているようなイベントを開催するとか。そういうイベントをカップルが盛り上がるクリスマスなどにおこなえば、多くの人にアピールできるし、かわいくて楽しいイメージが広まって、真似したいと思ってもらえるかも、なんて思っていました。それで、自分の中ではいいタイミングがくるのを待っていたんです。
小林 
なるほどね。
櫻井 
そうしたらたまたま、クリスマスにMr.Childrenのドームツアーの追加公演を行うのはどうかという話があって。それで、命の尊さや、相手を思いやる気持ちの大切さといった、ラブチェックの根底にある思いを込めた曲を、観に来てくれる人たちに伝えたいと思って作ったのが「365日」なんです。
小林 
(拍手)。「365日」に隠されたストーリーを僕らも知って、このドームツアーで演奏するところまでたどり着いたんだけれど。
櫻井は、この曲を「ラブチェックのテーマ」として限定することなく伝えていきたい、とも言っていたよね。
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櫻井 
そうなんです。それこそ、NTTのCMでは親子の「365日」の愛が表現されているし、ライブでは、恋人たちや夫婦にとっての「365日」という愛の曲でもある。「ラブチェックのテーマ」としてだけでなく、もっと自由に受け取ってほしいと思ったんです。
小林 
今回のツアーのアンコールでは、世界の総人口や出生率など、地球上のさまざまなデータの映像が流れてから「365日」が始まるということも含めて、すごくいろいろな思いが回り始めている感じがするよね。
実際にエイズの問題を、関係のない人にとっては悲惨なものというタブー意識を持って捉えてしまうのではなく、ロマンティックなものに置き換えて向きあっていこう、という思いは、僕もすごくいいと思ったよ。


ラブチェックという言葉が持つ意味


小林 
ちなみに、ラブチェックという言葉の意味は、単純に「エイズの検査をしましょう」というだけじゃないんだよね?
櫻井 
うん。チェック、というのは検査のことだけではなくて。
小林 
「避妊しましょう、コンドームつけましょうよ」というキャンペーンでもなくて、ようするに愛の確認。愛の問題って人間にとって最大級の謎であり、素晴らしいものだと思うんだよね。
世の中の流れもさ、例えば、タバコのポイ捨てや飲酒運転のように「まぁいいじゃん」では済まされないことが、以前に比べてだんだん改まってきているでしょ。意識が変わったというか。 同じようにエイズのことも、見て見ぬふりだったり、男が情熱のままに女性に対して突き進んだりするのではない方法を、向きあって考えていくべきなんだと思う。
飲酒運転も、代行システムに頼むとか、ノンアルコールビールを飲むとか、いろいろな方法があるじゃない。「お酒を飲むのはやめましょう」、「タバコ吸う人は、みんな体に悪いからやめろよ!」って言うことでもないし。
いろいろな工夫を生むことで、自分たちもガラス張りな気持ちで、正直なところに近づいていける。そういう風に、思いを育てていくことはいいなぁと思ったんだよね。 櫻井の持つ、ラブチェックの考え方に対して、僕も「どうするのよ」と言いながら、なかなか結論を出さずにいたのも、何をすればいい、という具体的なものではないからなんだよね。だからこそ、すごくいいなぁと思っていて。
僕が櫻井とap bankを作ったときは、環境という割と具体的なテーマへの取り組みだったからね。環境の問題も、イメージの持ち方によって、行動のおこし方はいろいろ変わっていくけれど。
櫻井 
例えば、ap bankがあって、「じゃあ次はラブチェックです」っていう別々の活動ではなくて。僕は、逆にラブチェックの方が大きいもので、その中に環境問題みたいなものもあると考えていて。
環境という面では、今までは自然の循環を壊してでも人間の自由競争を優先してきていたのが、少しずつ「そうじゃないんじゃない?」となってきたと思うんですね。それと同じように恋愛も、自由恋愛というものに進んできて奔放になっているけれど、ここでもう一度、価値を見直す時期にきていると思うんです。
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小林 
そうだね。そういう意味では、ラブチェックという言葉は、命の大切さを伝えるだけでなく、ちょっと挑発的でもあるところもいいと思うよ。
ap bankは、エイズや環境のことだけでもないから。ap bankを設立してから今に至るまでに、環境に関しても状況がずいぶん変わってきているしね。ap bankは、ap bank fesやBank Bandの活動で得たお金を使うことによって、世の中にもう少し良い流れを作っていくという使命を持って頑張っている。
今後、ap bankに入ってくるお金の一部を、僕としてはラブチェックの動きにのっとって、今まで通り誠意を持った使い方をしていければいいと思っているんですよ。またそれは、いずれエコレゾ ウェブでお伝えしていきたいな、と。
こんなところで十分ですか?
櫻井 
はい(笑)。
小林 
今日は、ありがとうございました。

(撮影/今津 聡子、大城 亘   構成/編集部)

櫻井和寿プロフィール

1992年 Mr.Childrenとしてミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。2008年12月、15作目となるアルバム「SUPERMARKET FANTASY」をリリース。 2009年には全国アリーナツアーに続いて、5大ドームツアーを開催、計80万人を動員した。Mr.Childrenの活動と並行して、2003年小林武史らと共にap bankを設立。2004年ap bankの活動の一環としてBank Bandを結成。今年6月30日にはBank Bandとして3作目のアルバム「沿志奏逢3」がリリースされる。

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