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櫻井和寿ap bank fes'09直前対談
Kobayashi×Sakurai

小林武史 × 櫻井和寿

直前にせまったap bank fes'09。リハーサルの合間に、小林武史と櫻井和寿が緊急対談を行いました。

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ap bank fes'09 直前! 特別対談 小林武史×櫻井和寿 後篇

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「奏逢(そうあい)」が生まれるまで

緊急特別対談の後篇、今回はいよいよ、
Bank Bandの新曲「奏逢~Bank Bandのテーマ~」について、
生まれるまでのエピソードを語っていただきます。

編集部
いよいよ新曲「奏逢」についてうかがいます。
今年は新曲を、と思って、準備をしていたんですか?

小林
いい質問ですね。まずはそこからだよね。

櫻井
小林さんはね、虎視眈々と狙ってましたよね(笑)。

小林
はい。新曲を出すのは大変なことだから、誰かが虎視眈々と狙いを定めないとできないものなので。

「新曲が出るといいな」と思っていた理由は、二つあるんです。
まずは、ap bank fesそのものが5年目を迎えて、原点回帰となる年だから、ここで新曲が生まれるのは素敵なんじゃないか、ということ。

それからap bank fesのサイトでも発表したけれど、今年、新しく作った「明日(あす)ラボ」という組織のための活動資金になるといいな、と思ったからです。
ap bankの場合、僕がプロデューサー的な立場も含めて、「ap bankのお金をどういうふうに一番いい形で考えていくか」ということを、僕だけが考えているのではないけれど、中心となって担っていて、ここのところ新しい考えも浮かんでいて、それが「明日ラボ」という形にまとまってきた。

ap bankは今まで融資をメインに活動してきて、そこで応募してくれた人たちの「背中を押す」ということはあるんだけれど、融資ということの限界もあるんですね。
「あとは頑張ってください」と、こちらは願うしかないというか。
それだけではなくて、もう少し関わっていくというか、僕ら自身も、具体的な活動ができるチーム作りをしていったほうがいいんじゃないか、と思うようになってきたんだよね。

成功例をたくさん作っていったほうが、いろんな人のためになっていくだろうなと思って。
そのためには、ある程度のスペシャリストも必要だし、今まで融資のためにお金をキープしていたのとは別に、資金も必要になってくる。
もちろんap bankの収益からも一部、「明日ラボ」にも使わせてもらうというコメントは出させてもらったんだけど。新曲で得たお金が、新しい動きの資金になるのは良いな、と思ったんです。
「虎視眈々」のわけは、このふたつの理由でした。

新曲という宿題

小林
『to U』という曲は自然発生的だったんだけれども、あのときも僕は「できるといいな」と思ったけど、本当にできるかはわからなかったんだよね。
そもそもBank Bandは、新曲を出していくためのバンド活動じゃないから。
原点回帰といった気持ちが心の中に生まれてきて、「もう一度スタートした頃のことを実感したいな」と思ったときに、新しい曲があったら強いだろうとは漠然と思っていたんです。
それと、その楽曲になるモチーフみたいなのも頭の中にあったから。
その曲は、僕がソロアルバムの『WORKS 1』の中で、インストゥルメンタルで作った曲なんですけれど。
なんだか、ふわふわとした、人懐っこいような、多様な空気感みたいなものを表せているような、乱反射するようなメロディーで。

櫻井
今年の5月くらいかな。
小林さんのバースディ・ライブの練習をしているときに、「こういうのあるといいと思わない? ちょっと聴いてみてよ」と、渡されたのかな。

小林
なにしろ、これまでずっとミスチルのツアーもあったし、そのあとも、いろいろあって。
Bank Bandのリハーサルが始まって、まずゲストの曲、15曲×5日間分を仕上げるというスケジュールをこなしてからじゃないと、新曲なんて言っている場合じゃないから。

だから一通りのリハが終わったあと、櫻井に「この曲なんだけど、どう?」と、あらためて話してみたんだよね。
最初から、「言葉をどうするかが一番問題ですよね」と話していたから。
できるかどうかは、櫻井次第だなとは思っていたんです。

櫻井
僕の状況でいうと『SUPERMARKET FANTASY』というアルバムをMr.Childrenで作って、ツアーで全部吐き出したような時期だったんです。
空っぽの感じだったんで、自分の中から何かが生まれるという自信がまったくないし、新しいアイデアみたいなのもなかったので。
まず無理だろうなあとは思ってました。
そしたら、小林さんが詩を書いてくるっていうんですよ。

小林
いやいや、いちおうね。励みにでもなればと思って。

櫻井
金曜日に「新曲どうだろう」という話があって、「じゃぁ土日に考えてくる」って小林さんが言って。
それで僕にも、「もし考えられたら考えて」って、言われて。
でも「これは無理だな」と思っていたわけです。
本当に、自分の中に何もないと思っていたので。

そうしたら、週があけて月曜日になったら、小林さんが歌詞を書いて来たんですよ。
しかも、自分で歌っているデモCDもあって。

小林
実際に櫻井が歌っているのは、ものすごい高いキーなので、僕は少しだけキーを下げて、ヒーヒー言いながら歌って。
あ、これはカットでいいです(笑)。

櫻井
小林さんのデモを聴くと、サビの部分で、「これは確かにいいな」とヒントになるようなものがありましたから。
というのと、ここまで小林さんがやってくれたので、引くに引けない感じもあり。

小林
すみません(笑)。

櫻井
それで、小林さんがくれたものをヒントにして書こうか、と思って。
と言ってもですよ、その話があった次の日までに、やるかやらないかを決めなきゃいけなくて。
だとすると、その日のうちに詩を書かなければならない、というものすごい宿題が出たんですよ。

リハーサル中だからこそ、生まれた曲



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小林
少なくとも、やれるかどうかを決めなきゃいけなくてね。
全部を書ききれるかどうかは別にして、いけそうかどうかというジャッジをしなくちゃいけなかった。
なぜかというと、Bank Bandの人たちは1曲平均20分強という感じでリハーサルをやっていて。
その反復作業に入っていくところに、新曲をすべりこませなくちゃならないわけですよ。
Bank Bandも新曲を練習しなくちゃいけないから。

編集部
1曲平均20分くらいって、すごいスピードですよね。

小林
そうだ、思い出した。
Bank Bandで新曲があったほうがいいなとは思ってたけど、今回はほとんど諦めかけていたんですよ。
どこかで録音しなくちゃいけないでしょ。
録音というのは、通常スタジオに入ってやるんだけど、Bank Bandのミュージシャンたちのスケジュールをまた追加で押さえるのは大変なことだし。
アレンジも考えるとなると、1週間くらいはかかって当たり前なんだよね。

となると今のスケジュールの中では無理。
でもBank Bandの人たちとやっている中で、最初にも話したけれど、あまりにも無駄がなくて、すごい呼吸でやれているから、このやり方でやれば、録音は無理でもライブはできるかも、という発想に変わったんです。
ライブで新曲がやれるということが、原点回帰につながるけれど、曲が生まれることを実感していくときに、初めて通っていける何かをライブだからこそ盛り込めるかもしれないじゃない。
もともと、そういうことを5年目にしてやりたかったんだよな、だとしたら、別に録音しなくてもいいんだ、とも思ったので。

Bank Bandのメンバーで、1曲平均20分強でどんどんこなしているペースを考えると、構成も作らなくちゃいけないけれど、今のやりかたならばアレンジ自体は2時間もあればできちゃうかも、と。
そういう読みがあって。
でも、そういう読みをそのスケジュールの中に持ち込むためには、「明日まで」というジャッジが必要なタイミングがあったんです。

編集部
プレッシャーがかかった、すごい宿題ですよね。
そんなシチュエーションって、ときどきはあるものなんですか?

小林
ないですね。大昔はあったかもしれないけど。

櫻井
いや、大昔もないですね。

小林
なかったっけ? 「明日までに頑張ってね」みたいなのって。
じゃあ初めてだ。

編集部
「新曲ができるか、君にかかってる」みたいな。

櫻井
今回のリハーサルで、Bank Bandのそれぞれのミュージシャンの人たちの音楽に対する真摯な向き合いかたみたいなものにすごく影響を受けていたんですよ。
その想いでほとんど書き上げたような歌詞なので。
だから、このリハーサル中だったからこそできた歌詞ではあるな、と思いますけれど。

Bank Bandのテーマ

小林
そういえば、サブタイトルはどうするの?

櫻井
いや、あのままがいいなと思って。

小林
『奏逢』というタイトルが出てきたときも、いろいろなことを全部くくれているなと思ったんですけど。
2日目に櫻井が「サブタイトルには『Bank Bandのテーマ』とつけたいんですけど」と言ったら、もう、くす玉が割れたような感じでしたね。
みんな良かったね、って。

編集部
今日の対談でも、ずっと話に出ていますが、それはBank Bandのメンバーの素晴らしさ、テクニックも精神的な姿勢もすべてを含めた信頼関係があってこそ生まれた曲だ、ということから出てきた、サブタイトルなんでしょうか。

櫻井
そうですね。
本当にみんな譜面を見ながら、それぞれが他のミュージシャンの音を聴きながら、自分がどういうふうに響いていくのかを考えているメンバーだという。

それは、きっと音楽だけのことだけじゃなくて、社会の中で生きていくうえでもすごく大切なテーマなんだと思ったし。

小林
真面目に話すと、僕もそれなりの年齢で、メンバーはべテランが多いけれど、全員、みんな初めての経験だったんです。

ああ、その前に言わなくちゃいけないのは、ともかく新曲のリハーサルをやりました。
で、2時間半くらいかかりましたけど、練習してできたんですよ。
やっているうちに、「どうせだったらライブでいきなりやるよりも、録音して、みんなにフェスの数日前に聴いたうえで来てもらって、それでフェスでやれたらもっと楽しいかも」と思うようになって。

それなら、どういう録音をしようか。
レコーディングスタジオにわざわざ行かなくても、練習スタジオでやってる音を、そのままスタジオライブみたいなノリで録ってしまえるかも、と思ってね。
それで録ることにしたんですよ。
Bank Bandの宿題を全部終えてから居残りで、放課後的な感覚でやったんですよね。
それもなんとなく、Bank Bandらしいことなんですよ。
感動的だったの、それは。
ちょっと青春感がありましたよ。

編集部
すがすがしい感じですね。

小林
モニターしている別部屋に、
Bank Bandのメンバー14人がぞろぞろ集まっちゃってさ。
みんなでああだこうだ、って聴いているんだけど。

編集部
リハーサルも4日目とか5日目で、疲労困憊な中なんじゃないですか?

小林
そのはずなんだけど、みんなニコニコしてやってくれて。
本当に仕事という感覚ではないね。

新曲が生まれた現場

櫻井
本当に、情熱を持ってくれているんです。
新曲のサビの一番最後に、メロディーを折り返すところがあって。
その折り返す前に、一小節間の空白があるんです。
僕は、最初、そこの一小節間に、前日までにやっていなかった歌のフェイクを入れたんですね。
そしたら演奏が終わったあとに、サックスの(山本)拓夫さんに「櫻井君、そこ歌を歌うの?」って、言われて。
なんのことを言ってるのかな? と思ったんだけど、すぐに気がついて。
歌うんだったら、拓夫さんは考えていたフレーズをやめるし、歌わないんだったら吹きたいんだっていうことで。
「じゃぁ、やってください」と拓夫さんに言って。

編集部
それぞれのメンバーが、ここで自分が何をできるだろうとか、何をやったらいいかなって考えてらっしゃる感じがありますね。

小林
そうなんだよね。
みんながここに新曲があることの良さを感じてくれているということで、それは凄いことでしたね。

編集部
「明日までに決めなきゃ」という日に、櫻井さんが書いてらっしゃるかどうか、ドキドキしましたか?

小林
ドキドキしました。
「あんまりがっついてもな」と、思うじゃないですか。
だから「駄目なら駄目でも、またいつかやればいいや」
というのは当然あるから、何が何でもということではないんだけれど。
実際に出来上がって、本当に、これからが楽しみだよね。
素晴らしい曲になったと思うから。

編集部
照れくさいかもしれないですけど、
櫻井さんの詩を見たときの第一印象は?

小林
僕が適当に書いた歌詞は、ちょっと子どもっぽい感じだったんです。
「この指とまれ」的な、青春っぽいもので。
それがすごく櫻井テイストの強いものになっていたので、最初、すごいゴロッとした感じがあって、しばし考えてしまったんだけれど。
でも、実際に歌ってみたら、凄かったんですよ。

僕と櫻井が考えていることが、必ずしも一致しているわけじゃないから、同じでないのは悪いことじゃない。
一致なんか、むしろしないんだと思うし。
「toU」でも乱反射というか時と場合によって受け止めかたが違ったりするんだよね。

でも今回の歌は、あとあと思い出すことがたやすいくらいの、モニュメントとしても、くっきりとしたものになった気がするんですよね。

「to U」のときも、ちょっとした事件だったんだけど。今回はライブをやるときの勢いでできあがったからね。
この曲もいずれちゃんとレコーディングして、なんらかの形で発表することもあるのだと思うし。
そう流れも含めて、まだ旅をしていくんだと思います。
今年のap bank fesがどうなるのかは分からないけども、面白い、ドキドキワクワクするものになりそうです。
文字通り、いまから実感しています。

編集部
密度の濃いお話を、ありがとうございました。

小林武史より追伸です。
「今回の収益はすべてap bank内、『明日ラボ』に入れさせていただきますが、
あくまでスタジオライブでのレコーディングだったため、価格は通常よりも安い200円にしました」

(構成/eco-reso web編集部)

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「奏逢~Bank Bandのテーマ~」
作詞:櫻井和寿作曲:小林武史&櫻井和寿
2009年7月15日、配信限定でのリリースとなります!
配信楽曲:「奏逢~Bank Bandのテーマ~(Studio Live Ver.)」
価格:210円(税込み)
OORONG-SHA MOBILE+
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Bank Band『奏逢~Bank Bandのテーマ~』配信で得る収益の使われ方について。

収益は、ap bank内に新しく作ったセクション「明日(あす)ラボ」の今後の活動に充てさせていただきたいと思っています。

「明日ラボ」は、これまで融資を行ってきていたap bankが、出資や投資を行うことで、もう一歩前に踏み出して、一緒に責任を持って運営していくプロジェクトをつくっていくための新しいセクションです。(「明日ラボ」設立についての詳細はこちら

すでに、農業法人の援助や野菜の直売所の運営援助、植林事業、自然エネルギーへの投資などを一部進行し、また検討しています。詳しいことはエコレゾ ウェブなどで、随時報告していきたいと思っています。

小林武史
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櫻井和寿プロフィール

1992年 Mr.Childrenとしてミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。2008年12月、15作目となるアルバム「SUPERMARKET FANTASY」をリリース。 2009年には全国アリーナツアーに続いて、5大ドームツアーを開催、計80万人を動員した。Mr.Childrenの活動と並行して、2003年小林武史らと共にap bankを設立。2004年ap bankの活動の一環としてBank Bandを結成。今年6月30日にはBank Bandとして3作目のアルバム「沿志奏逢3」がリリースされる。

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