小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

脱依存(脱受け身)

2011.06.28 11:18

先週金曜日に行った自然エネルギーフォーラムでも
同様のことを話させていただきましたが、
一応この場でも続きを記しておこうと思います。

以前書いた「クリエイティビティのある社会」の続きになりますが、
江戸時代あたりから、300年続く時代には、
難しいことは御上が決める事だという、「依存体質」があったんだと思います。

日本はずっと天皇制は守られてきているわけだし、
過去にフランス革命のような民主革命が起こった訳でもないので、
そういう意味では、それこそ昭和後期まで続いていたであろう御上文化が
ずっと依存体質を継続させているんだと思います。

しかし、一方でメディアやネットの発達も含めて、
無関心の反動から、民主化というのは
いよいよ変わるのではないかという気がしています。
その証拠に、今の政党政治に対する不満や限界感というのが、
すごく強くなっていると感じています。
昔はある程度リスペクトされていたと思うのです。

今では良くも悪くもですが、ガラス張りになってきています。
これは避けられない過渡期なんだと思います。
3.11以降、僕らは今こそ目覚めて
民主主義を使いこなせるようになるべきだと思います。

つまり、御上や安定供給をしてくれると言っている
盲目的な依存をもう止めなければならないのではないでしょうか。

そういった意味では、
今が「脱依存」からシフトしていく時なのではないだろうか、と考えます。


自然エネルギーフォーラムのアーカイブもアップされているので、
興味のある方はご覧ください。




自然エネルギーフォーラム

2011.06.25 00:00

先程、国際フォーラムの会場で、「自然エネルギーフォーラム」と題して
孫正義さんとのライブトークが終わりました。

この間の官邸とは打って変わって、ものすごくやりやすかったです。
参加してくれた人も、最高でしたと言ってくれていたんで、
本当に良かったなという感じです。
今日は、自分がミュージシャンだということを全く隠すことなく、
そのややこしさも含めて、見せながら進めることができたんで、
最後まで自分のペースでやれました。

この間は正直失敗したんだよね。
そもそも肩書きが「ap bank 代表理事」でやってくれと言われて、
坂本龍一さんのビデオメッセージが入ることで、
ミュージシャンのバッティングを避けたのかなというだろうけど。

本当に自分が何者で話しているのかと
掴めないまま終わってしまいましたが、
こんな感じならできるなと、確認できた一日でした。

それにしても、孫さんとは、
電話以外は全く事前打ち合わせもしていないという
ぶっつけ本番だったんだけど、
本当に気が良いんですよ。
阻むものがないと、改めて思いました。
なかなか霞ヶ関方向へいくと、
妙なバリアというか、何かがあって・・・今後対策を考えます。

近々アーカイブもやると思いますので、
見ていない人はぜひ見てみてください。

Salyuも、一青窈さんも素晴らしかったし、
パーカッションの朝倉真司さんも、チェロの四家卯大君も、
いつもながらに本当に素晴らしかったです。



クリエイティビティーのある社会

2011.06.23 00:10

数日前の「つまり、、、なんなんだ」を書いて少し触れたけど、
今日はその続きです。

そもそもap bankを何故やっているのかと聞かれると、
「持続性のある社会の方がいいから、そこにお金の使い方をシフトしていこう」
という考えにプラスして、クリエイティビティーのある社会をつくるため、
とも言いたいわけです。

というか、みんながクリエイティビティーを発揮できる社会でないと、
持続していかないのではないだろうか、と思うわけです。
問題をどう解決していくのか、というようなことでもあるんですけど。

これは前から言っていることですけれど、
ここ最近、あまりにも「富と権力」という、
解りやすい価値観に傾き過ぎ ていたため、
幸せなり、生きている価値がシンプルになり、
人の望みもシンプルになってきている。
お金を中心とした富と権力の板挟 みに向かって行った方が
経済にとっては都合が良いということがあって、
どんどんつまらない方向に向かってきている気がするわけです。

例えば、音楽の中でも、桑田佳祐さんは
めちゃくちゃ多様性の人なんですよね。
それは、戦後や昭和の時代が持っていた、闇や光や、
先 日対談した宮台真司さんと話したテーマにもなっている
「世界の手触り」というものが存分にあって、全然単純じゃない、
でも、一般的にもそ ういうものの方が残るし、
やっぱりみんな好きになりますよ。
それは、やはり「世界の手触り」があるからです。

現在の原発 が象徴的だけれど、経済が中心となって
エネルギーや豊かさの安定供給などと言っていると、
結局そこに依存してしまって、「世界」に反応し たり
呼応したりができなくなってしまうと思うのです。
それはある種の退化現象ではないかと思います。

なんだかんだ、安定したように見える「世界」を続けたい人は、
人々を依存させようとするから、
だからいま僕らは、エネルギーシフトの時代に多少勇気を持って
「脱・依存」の感覚に持っていった方が良いと思 います。

「落ちこぼれたり、ついていけない人は、どうするんだ」
と、言われるかもしれないけれど、
僕らは助け合うことが できると思うんです。
良い部分を持っているから、誰でも。
この世界で共に生きていくことを、共有することができると思うんです。

実は循環型社会を目指す以前に、
最初から社会は循環していると思います。
だから困っている人や苦しんでいる人を、
本当は簡単に見殺しにしたりはできないと思うんです。
繋がっているから。
それも我々人間が生きていく感覚のなかで、
選び取っていけるのではないかと思っています。


つづく。



小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。