小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

ギブ&テイク

2012.01.29 23:53

1月も後半に差し掛かり、
先週まではミスチルのシングルのためのレコーディングや、
ツアーの準備、20周年という
やはり記念すべき峠を高揚感を持って
越えて行きたいなと思いつつ、
ことを進め、そしてさらなる先に向かってのことも
当然始まっているわけで、
なんとなく食べても食べても下から出てくる、
名古屋名物「ひつまぶし」を思い起こさせる日々であります。

そんななか週末は、関西方面に行き、
フードリレーションネットワークの新たな取り組みをしつつ、
今日は昨年末に引き続き、函館に来ております。

メディアからは日本を変えていこう、変えなければ駄目だ
というような声ばかりが聞こえてきます。
確かにエネルギー政策は確実にシフトするべきだと思うけれど、
この国の人達の、というよりも、僕らの依存体質を変えていくのは
そう簡単なことではないと思うし、
そうなったなりの理由もあるなと最近確かに思うのです。
一方、僕らがどう変わっていったらいいのか、
この国をどういう風にしたいのか、
その辺りのことが、きちんと話し合われることは、
メディアから出てくる情報では、あまり感じない気がします。
僕はあらためて日本人の良さ、日本の良さ、というものが
キーになっていくのではないかと思っています。
そういう良い部分を伸ばしていくという思いを持って
日々心でとらえて行動していきたいと考えています。
僕にとっては、いまはそれがミスチルの音楽でもあり、
関西や北海道でのプロジェクト(?)なんですよね。
だからいろんなジャンルにまたがっているけれど、充実しています。

僕も首都圏での地震の話や、
富士山の再活動説とか、この国の財政破綻とか、
もちろん放射能のこともきりがない程先行き不安が溢れてるし、
そんな話も当然まわりの仲間と話したりするんだけれど、
そんな話ばかりしても、埒(らち)が明かないんですよね。

覚悟というのもあるし、希望というのもある。
僕はなんとなくギブ&テイクというのが
人間社会の基本のように思っていたところがあるんだけれど、
そういう感じを越えて、伝えるというか、伝えたいというか、
贈りたいというか、そんな感じが
これからの世界には大切な気がするんです。

3.11を経験した日本が、交換を前提にした資本主義
ーーと言ったって、どっかで不平等な
交換だらけの歴史だったけどーー
ではなく、日本人として、
心が澄み渡るような生き方、なんていうんですかね、
そういうのを目指して行きたいと思う訳です。



脱原発

2012.01.23 23:50

このままいくと、今年の4月には
全ての原発が停止するということになりそうですが、
「脱原発」というキーワードが
2つに分かれてきているような気がします。
脱原発というのは、できるだけ早く、
だけど現実のエネルギー消費の必然に則した形で
原発を減らしていくという考え方でしょう。
しかし、最近、このままでいくと「一旦停止する原発」から、
再稼働させるためのハードルを上げる、
もしくはきちんとすることによって、
「もう原発は運転させない」、という風にしようとする
気運が出始めていると思います。
正直に言って、ここで勝負を決めるというのは
想像していなかったのですが、
もしもこれから一年の間に、再稼働には待ったが掛かったまま、
電力料金等の値上げなども含め、
国民のコンセンサスが取れれば、
もう原発がなくてもやっていけるのではないか
ということが、おおよそ実証することになるのだと思います。

確かに一度再稼働してしまうと、
「やっぱりないと困るしね〜」とか言いそうですもんね、誰かが。
いずれにしても、既得権益を持っている人達が
ここで止められても困ると思っているのは間違いないし、
その人達の事情もあるのはあるのでしょう。
もちろん電気料金が上がるかもしれないことで、
どれだけの人がどの程度困ることになるのか
きちんとは解らない訳です。
でも、本当に地殻変動の怖さを含めた
先のことの予測できない感じと、
地震大国であるこの国の現実を考えた時に、
そしてもちろん放射能のまだ全然データが
取れていない怖さを含めて、
福島の現状の辛さから本当に学んで、
ちゃんとした行動をしなくちゃいけないんじゃないか、と思います。
本当に最近の地震なんかから考えると、
多少無理してでも、いまが止めどき、
という風になった方がいいのではないか。
繰り返しになりますが、
前からそこにフォーカスを当てていた訳ではないけれど、
もしかしたら、この1〜2年で一気に
脱原発を決めてしまった方がいいのかもしれません。
それが出来るならその方が良いに決まっている。
そのために、原発使用や再稼働に関する
国民投票というのもあるかもしれません。
とにかく民意をもう少し活発にしていった方がいいと思います。
そのために何をするのかが問題です。
関心のない人達にどう届くのか、やる気になってもらえるのか。

いずれにしても、最初の勝負どころに
近づいているのではないでしょうか。
小出さんなんかは、「そんなことはもちろんです」と、
あっさり言いそうですが。




集団行動

2012.01.17 23:52

レコーディングというのは大概の場合、集団プレイです。
特にバンドでやる場合は、集団行動なのです。

ミスチルが20年目に入り、
相も変わらずレコーディングをやっているけれど、
年明けに集団行動というのは、
毎回気持ちが、なんだか「ダルい」感じがするのです。

学校の新学期が始まることと
似ているのかもと思ったんだけれど、
それとも違うけどね。

いずれにしても、始まると楽しい。
集団行動って面倒くさいところもあるけれど、
それを重ねていく良さというのは、確かにあります。
それは、僕のような人間でもはっきりと解ることです。


小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。