小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

kurkku cave

2012.03.19 00:34

一昨日は赤ワインとお肉の深い関係、
昨日は日本酒と魚介の料理の相性を
僕の独自の考え方をご披露してしまいましたが、
そもそもなんでそんな話をしようと思ったかというと、
この間海外へ行っている間にオープンした
「food kurkku」と「kurkku cave」へ客の一人として行くようになって、
思うところがあったからなのです。

まだ「kurkku cave」に関しては、全然宣伝もしていないし、
僕自身、隠れ家的なところという意識も強く、
友人などにもまだ教えていなかったんだけれども、本当にいい店なんですよ。
「kurkku kitchen」をつくった諸橋新之助シェフが作るハンバーガーは、
昨年のap bank fesで食べた人もいるかと思います。
昨秋参加したトーキョーデザイナーズウィークでも、
真っ先に売り切れていたアイテムで、もちろん美味しく、
更に店構えは、よくできたビストロやバルという雰囲気もあるのです。
ハンバーガーが売りというよりも、その「雰囲気」の方が強いです。

コンビニ(ナチュラルローソン)と、
生産者の愛情と繋がろうとするスーパーマーケットの階段を下りて
地下へ行くと、ワインカーブを横目に小さなレストランがあるというのは、
生活に密着もしていて、いい意味でたまり場になれる感じなんですよね。
なにより新之助シェフが作る料理は、素材を選んだ美味しい野菜と
美味しい肉の料理が食べられるというシンプルなものなんです。

僕たちとしては、大好評を博している「code kurkku」で、
天才的な料理人の一人の笹島シェフとコラボできて、
すごく評価してもらえて幸せですけれども、
その後に続くものとして、もう一度シンプルで素材と向き合うことに
比重を割いている、新之助シェフのレストランがつくれて、
しかも生活感ある温かみあるレストランがつくれて、
僕自身よかったなと思っているし、ブームにもなっているんですよ。

そして3月23日(金)に「kurkku cave」で
笹島シェフが新之助シェフと一緒に腕を振るうという企画があります。
新之助や笹島君が意見を出し合って、こういう企画を作っていくこと自体に
Food Relation Networkというのが本物になってきたという気もするのです。

まだまだ越えなくてはいけないことはたくさんあるけれど、
多分これからもいろいろ広がりや繋がりを作っていくことになると思います。
いろんな意味で皆さんに関心持ってもらえるように、僕がというよりは、
関わっている人達が頑張っていくような段階に入ったかもです。


今月23日の夜、興味のある方は、ぜひ「kurkku cave」へ行ってみてください。






日本酒と魚

2012.03.17 03:52

赤ワインと動物の肉のマリアージュは、
ある意味で論理的で緻密な関係を想像させます。
それは一神教など絶対的な力、太陽などの力を崇拝しつつ、
力で切り開いてきた狩猟民族の歴史を思わせることでもあります。

一方で、僕は寿司屋に行く時など、
どうしても日本酒を頼んででしまうわけです。
時々カウンターなどでワインを飲んでいる人もいますし、
それは好き好きでしょうが、
個人的には魚に合うという白ワインですら、
僕はある程度食材と白ワインの距離を、
つまり口に入れる時間などをおいて楽しむという風になりがちです。

僕はダイビングをやるから、海の中のアルカリ性というか、
素晴らしいけど塩っ辛い世界というのは、
肌に感じているところがあるのですが、
この間ふと思ったのですが、
魚でもない限りほとんどの生き物は、というか、
人間も食物連鎖の頂点に立っているわけですが、
海を離れて陸で暮らしているわけですよね。
大体水不足と言われながら、海にはあんなに水が溢れているのに、
なぜ塩分が強すぎて、飲むことができないのか。

もしかすると、海を捨てていった生物に、
退路を絶つというか、そう簡単に帰ってこれないように、
然うは問屋が卸さないというように、
出来上がった仕組みだろうか、、、、と。
人間からしてみると、味覚として魚というのは、
そもそも生臭いものです。

西洋の人達は、日本人ほど魚を食べることも
不得手としているようにも思います。
バターや生クリームなどで、
随分とごまかしているかのようにも思えます。

その生臭さ、それは日本人の死生観からもきているのだけれど、
死と、発酵と、それをいただく命とが、
ある意味野蛮で大胆なかたちで繋がっていることを
日本人は感じ取りながら生活してきたのではないか。
そこに甘さと農耕民族的な優しさや柔らかさを持った日本酒が、
距離はあるんだけれど、生臭い程の命が発酵や腐敗などとともに
循環しようとする旨味を包み込んでいるのではないか、と思ったのです。




赤ワインと肉

2012.03.16 02:19

最近はリハーサルが続いていることもあり、
滅多にたくさんのお酒を飲むということは
敢えて控えていますが、僕はお酒が大好きで、
ある程度強い人間でもあるわけですが、
中でもワイン、さらに言うと赤ワインが好きなのです。

この間、フランスのローヌ地方に行って、
素晴らしいワイン生産者である、
大岡さんとお会いしてきましたが、
彼も言っていたけれど、全ては土地、
やはり土で決まるそうなのです。

例えて言うならば、乾いていて、痩せていて、
古い土が良いそうで、
その中からブドウがより凝縮して、養分を吸収するようなのです。

いずれにしても、ワインが大地から吸収するものと、
動物の肉とハーモニーを起こすというのは、
陸上の生態系の、本当に素晴らしい「味としての恵み」、
やはり出会いなのだと思ってしまうわけです。

この話は次回に続きます。



小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。