小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

食と放射能

2011.12.17 02:07

年末になり、みんなもそうかもしれませんが、
僕も慌ただしい日々が続いています。

食と放射能のことに関して、
いまap bankやkurkkuのスタッフが調べています。
どういう基準、そして、どういう態度でそれにあたるべきか、
他の飲食店やスーパーマーケット、
オンラインショップなどの取り組みを研究させてもらいながら、
みんなでいろいろ考えています。

だけど、本当に難しい。

検査器械で言えば、表面を測って、
しかし、50ベクレル未満は
計測できないかもしれないと言われるような、
食材をなぞって計測するような簡易型、
それと、野菜などを細かく刻んで
みっちり器械に突っ込んで計測する中間型、
それと、超本格型。
持ち運びなどは、かなり難しい。

いずれにしても、ちゃんとした検査をしようと思えば、
千切りレベルで切り刻まなければなりません。
つまり、全部を調べようと思えば、
商品の形は、とどめてはおけないのです。
正確な検査をするために、
何分の一のスポット検査にするのかというのも、
正直定かにしているところは、
僕らが調べた限りではありません。

もちろん国の暫定基準値が、
チェルノブイリレベルから言えば、
甘過ぎるというのは周知の事実です。
国の東北などの農家の方々を
擁護しなくてはいけない立場も重々わかるけれども、
子どもたちを中心に、いずれ来るかもしれない
被ばくによる被害の可能性を、
そこに至る要因になるかもしれない、
放射能の蓄積のネガティブな可能性を、
何よりも開示しなくてはならないでしょう。

この間も言ったけど、選ぶのは我々です。
とにかく原因を作った電力会社や国が、
その悲惨な現状を軽く見積もることだけは
やめてほしいものです。
そんなことを言ってもどうにもならないけどね。
なぜなら、そういった国や電力会社の支配は
未だ変わってないからなんですよね。
変わってない以上、もとの平常な状態に
嘘でも戻ろうとする。だから、あんまり期待しないで、
変革していくための手段を考えるというのが
必要なんだと思います。
いろいろ批判もあるかもしれないけれど、
大阪市長の橋下さんなんかは、
その方向性はともかく、やろうとしていることは
そういうことなんでしょう。
本気で変えようとしてるということです。

話は戻るけれど、
やっぱり現実は顕微鏡で見ていけば、
全てわかるというわけではないようです。

僕の結論としては、
決してしっかり調べるという気持ちを
忘れていいわけではないけれど、
完全な計測の仕方というのを、
実際の食の流通経路の中に求めようとするのは、
おおよそ困難だと思います、ということです。

じゃあどうするのか、というと、
科学的な器械の調査に全てを委ねないで、
つまり絶対正しいとは思わないで、
だけど、皆さんの声もそれから今後どういう風に
数値などが推移していくのかを、
あくまでデータのひとつとして調べていく、
そして、今後の変化に対応していくというのが良いと思います。



つながり

2011.12.15 03:14

この間丸木美術館で、
原爆や水俣病などの悲惨な絵の前で
パフォーマンスをしてきましたが、
確かに街はそれなりにクリスマスモードで、
うっかり高級ホテルなんか入ると、
もうクリスマスツリーが、
そこら中にきらきらピカピカしているんですよね。
そのギャップもすごいけれども、
でも世界は、もともとそんなギャップをずっと受け止めか、
受け入れ続けてきています、よくも悪くも。

だからというわけではないけれど、とりあえず僕は、
いくつかの忘年会みたいなものを含む年末も、
思い切りいくものはいって、そして東北も行きたいと思います。
行ってどれだけのことができるかは解らないけれど、
でもいろんな人との繋がりを、いま改めて作ろうとしています。
繋がりを作っていきたいなと思って、いろいろ動いています。
来年あたり、次々と発表していけたらいいなと思っているのですが、
果たしてどうなるか。

だけど、そういう中に、つまりいろんな繋がりで
この社会ができているという実感のもとに、
いまの政治の問題や経済のあり方、
エネルギーの問題や食の問題も、
捉えていくしかないなと思っています。
つまり、みんなが選んで行くしかないということです。

とにかく、ふたつの間でせめぎ合うから、
それに負けない楽しみや喜びや魅力を見つけたり、感じていこうよ。



ピースが崩れた

2011.12.10 23:50

皆既月食を見ながらやってます。
僕は初めてちゃんと見たような気がするけれど、
ボールか、小さな気球みたいになるんですね。
すごい丸く立体的に感じられて、近くにあるような気がしました。

太陽と地球と月が一列に並んだ日に、僕は夕方から丸木美術館で、
一人でキーボードを使ってのパフォーマンスをやってました。
with エリイ率いるChim↑Pomです。
with というか、for というか、Chim↑Pomの誘いで、です。

僕の中では、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマと繋がる思いをどこかで感じ、
展示してある絵は、水俣病、アウシュヴィッツ、南京大虐殺と、
すごいものでした。

それらの連なりに対して、僕らは、パズルのピースの取れた
「ピースが崩れた」何かの入れ物の中に僕が入り、
光を発光して、その人口でできた悲劇の絵を照らしながら
パフォーマンスをしました。

まぁ記録も撮っているので、どこかで発表できるかもしれません。
いずれにしても、その音は即興だったので、
それをも元にして形にするかもしれません。

遠い月と太陽の起こす現象が、
人間の中の暗い闇を解いてってくれたような、
そんな一日だったということで、今日を記憶しておこう。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。