小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

少し長くなりますが

2012.04.20 00:25

ちょっとうっかりアップするのを忘れていた、というか、
書いていたけれどいつアップしようかと思っていたブログです。
2〜3週間前に書いたものなのでちょっと古いところもありますが、
ミスチルの初日に向けて完全に忘れていました。
今日書いているのは、いまこの日本のエネルギーシフトのことです。
現状の問題は、みなさん殆どの人が知っていると思いますが、
大飯原発再稼働問題をどういう風にとらえるかだと思います。
僕は基本的に長いスパンでの脱原発は心から願いますが
その仮定で現存の原発がいくらか使われるということは、
まったくあり得ないことではないと思っていました。
いままでエネルギーをこれだけ原発から享受してきた僕たちにとって
原発関連の人達の営みも含めて、
それなりの移行段階が必要かもしれないと思うからです。
しかし、今回の再稼働に関しては意味が違います、
つまり「フクシマ」以降の定期検査のために停止した
原発の再稼働というのは、基本的に
「ハードルを高くした上での稼働」なのだと思います。
ハードルを高く設定するべきだと、
ほとんどの国民が思っているのだと思います。
にもかかわらず、政府関連の関西電力のやりとりが、
あまりにも無謀に、いい加減に、進めているように思うわけです。
関西地方の夏の電力消費への危惧も、関西電力自身の発表でしかありません。
これでは、既得権益の独走がもたらしたと思われる「フクシマ」と
同じ構造なのではないかと多くの人が思っていると思います。
5月5日に北海道の泊原発が定期検査のために停止することで
日本は一旦全原発が停止になります。
政府や関電は、その自体をなんとか回避して、
つまり大飯原発を再稼働することで
原発の発電をキープし続けようとしていると思う。
原発がなくても大丈夫かもという意識を
国民から遠ざけるための策としか言いようがない気がします。


現状の前提だけれども、それなりに長くなってしまいました。
繰り返しますが、これからちょっと前に書いたブログですが、
基本的に古くないと思うので、掲載します。

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この間、ある方に「小林さんは、方針が変わったんですか?」
というようなことを言われました。
この方が僕におっしゃったのは、原発に対する僕の姿勢のことです。
「変わった」という言葉に自問してみると、
確かに今年はまだ小出さんにもお会いしていないし、
反原発的な人とLOVE CHECK energyの対談も
頻繁にしている訳ではありません。
僕が昨年の311以降、感じていた危機感は、
この国の原発包囲網が単なる想定外の事故であるという認識を経て、
喉元を過ぎればすっかり平気な顔で
戻っていってしまうのではないか、ということでした。
元に戻ろうとする事に対して、
本当にあの当時、あの段階では僕が知っている半分ぐらいのこと
なぜこの国に54機の原発が存在してしまっている理由を
殆どの人が知らなかったし、
なぜ自然エネルギーが普及しにくい状態になっていたのかも
(これは今もまだ様々な理由で続いてはいると思います)
ほとんど誰も関心がなかったように思います。

そして、なにより放射能の怖さというのも
核廃棄物の処理が全く定まっていないことも
核燃料サイクルの危うさ、その背景にある怖さについても
電力会社の地域独占も、電源三法というおかしな法律も、
総括原価方式(電気料金に接待交際費なんかも含む経費を
勝手に乗っけることができるという、とんでもないルール)も、
みんなまだ殆ど知らなかったし、その怖さ感じていなかったと思うんですよ。
でも、フクシマの惨上はまりにも酷く、
結果として到底喉元を簡単に過ぎるものではなかったし、
国民の多くはそのことを否が応でも知っていくことになりました。

その後、最初僕はこの国の民主主義が機能していないことに
やはり問題がああるのだと思っていました。
宮台真司さんが言う「この国は、
全部おまかせしておいて文句をたれる」という毒っけのある言い方も
実にフィットしつつ、もっとみんなが参加して
民主主義をつくっていなかければならないと思っていました。
河野太郎さんにもお会いして、もっとみんなが参加して、
もっと開かれた政治にならないのですか、と言ったけれども、
もう既にひらかれてはいるのです、と言われ、
皆さんがどんどん参加すればいいのです、と言われ、
何に?と正直思い、もちろん地方や地域の自治が大切で、
議員の方に意見をもうしたりすることから始まるのです
というのもわかるのだけれど、、、
結局僕も含めて、周りがより地域政治に
関心を持つようになっていったかと言えば、
正直まったくそうなってはいません。
ひきつけていく魅力がないとも言えます。
その後、この国に本当に欧米型の民主主義がフィットしているのかどうか
ということに想いを馳せるようになっていきました。

こんな事故を起こして駄目な日本というより、
もう少しその背景も含む、この国の現在の有り方の理由を
感じるようになったのだと思います。


続きはまた次回に。





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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。