小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

東京にて

2011.03.22 22:18

結局東京に着いたのは今日の午前中で、
庄内空港離陸前に入ってきたメールやネットの情報で
やや雨の東京にネガを感じながら戻ってきました。

僕たちは(というのはkurkkuやap bank、
ウーロン舎の主要スタッフのことですが)、
今後のミーティングをして、フードリレーションを含む
いろいろな行動の在り方を、かなり深く広く話し合いました。
時間を空けずに、みんなすぐに動こうとしてくれています。
それはいいんだけど、、、

またもや無力感が襲ってきました。
見ようとする視点によって、物事が違って映るから
本当は俯瞰で見たり、本質を捉えたりした方が良いと、
少なくとも僕は思うし、
僕が認めているような人達の意見もそのように言うけれど、
ネット社会の透明性も含めて、ばらばらになる。

できるだけ単純なYES or NO、A or Bで
未来を選択して行く方法も
こういった場合にはありかもしれないけれども、
そもそもそれを判断する情報が、
どこまで与えられるのかも曖昧だし
多数決が持つ価値ですら、よくわからない。
すいません。

久々の東京で、ちょっと悪酔いです。


P.S.
落ち込んでいるところに、うちのケン・マスイの発言に
少し笑ってしまいました。

以下、ケンの発言です。
「昨日東名高速で名古屋から東京へ向かう途中、
静岡の沼津あたりで高速道路の電光掲示板に"シートベルト〜注意"
なことを見て、思わず"シーベルト〜注意"と読み間違えてしまうほどでした、、」



連携

2011.03.21 09:55

昨日は最初に気仙沼へ行きました。
比較的大きな避難所に行って、炊き出しです。
温かい食べ物はまだまだないみたいで、
5百人を超える人に喜んでいただくことが出来ました。
市役所にも行って、今後のネットワークに関して
行政の人とも話をしてきました。
だけど、色々難しいのは、連携、指示系統です。
東北の人たち(僕もそうですが)は、やや遠慮がちなところがあり
(すいません、僕はズカズカしてますが)
各セクションが繫がりにくいのかもしれない。
しかし、夜に行った石巻の、僕らが行ったエリアは、
かなり広範囲にライフラインが止まっていて、
携帯も繫がらない状態です。
それで行き違いがあり、僕らも行程を変更せざるを得なかった。
でも現場は確実にまだまだ色んな物が
行き届いていないところが多いです。
だから、何とかしなければならない。
少しずつ良くなっていくのと、家や家族を失った人たちが
段々しびれを切らしていくのが重なったりもしています。
それは、これからも、そうだと思われます。

柏崎の時もお世話になったピースボートの人たちにも会えて、
話したのは、少しでも連携を作っていこうということでした。
結局、行政の人たちの中に入り込んで、
何とかスピードを上げて、徐々に正確に、ということを
イメージするしかありません。

僕らもいま、長期にわたってのチームを作ろうとしています。
ap bankなどでは"フードリレイション"というのを立ち上げようと
思っていたのですが、その前に惨事が起こってしまいました。
しかし、災害時の、ある意味番外編の"フードリレイション"で
良いではないか、と思ってやっています。
詳しくはいずれ言いますが、簡単にいうと、
「命の循環がもっと見える社会」へのシフトです。
生き物は食べ物、つまり命をいただかなくては生きていけない。
だから、農も料理も食べることも、繫がりが見えて、
安全に楽しく、関わっている人や食材にも、想いを思って、
とか色々あったほうがいいと思うのです。
これはエネルギーのこともいっしょだけどね。

もしかしたら今夜にも東京です。
色々組み立てたり、直したりします。



南三陸町

2011.03.19 19:47

朝、3時に炊き出しのために、宮城に向かいました。
今回の被災地の中でもかなり被害の程度が
ひどい場所のひとつ、南三陸町です。
そこまでの道中には、
それほどの被害が見れた訳ではなかったのですが、
何か少し変な空気が漂ってました。
実際、建物が歪んだり少し傾いたりしていたんでしょう。
夜も明けてきて、ガソリンスタンドに並ぶ車の
長蛇の列を何度も見ながら
そんな緊張した町をいくつか通りすぎていきました。

朝8時には現地についてしまって、
約束をしていた町の公民館に行ったのですが、
少し早すぎたようでした。
公民館で事情を確認した後で、海のほうに車で向いました。
緩い坂を下ってカーブを曲がり終わったら、
もちろん予想はしていたんだけど、
実際に目で見て感じるその光景は、
とんでもないものでした。
人間社会の断片がぐちゃぐちゃに散らばっていて、
それは元々、町があったこともまったくわからないほどでした。

1万8千人ほどの人口の中で
8千人ほどが死者と行方がわからない人だと、
公民館の館長が話してくださいました。
圧倒的な無力感が漂っていました。

視察、炊き出しを終えて岩手の前沢にいます。
今後の長い支援のプログラムをみんなで考えつつ終了。
明日は更に気仙沼に行く予定。




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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。