小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

春場所

2011.03.02 23:51

「ap bank radio」で話したことを、
ここでも少し話そうと思います。

ニュースが出てから少し時間が経ってしまいましたが、
大相撲本場所が65年振りに春場所中止となりましたね。
1946年以来だから、終戦の1年後には相撲をやっていた
という事実にも驚きだったりするのですが。

例えばプロ野球が揉めたりすることはあるけれども、
国技である相撲が中止になるというのは、
あってはならないことだと思うのです。
しかもその理由というのが、八百長。
こうなってくると、話は更になかなかややこしい。

確かに、その昔
「〜対決は筋書きができている」
という噂があったりして、
「どこかではなんとなく(八百長は)あるのだろう」
と、思っていたりしましたが、
僕は相撲が本当に好きなので、
小さい頃から見てきた者から言わせてもらうと、
盛り上がってくると、こういった話が出てきますよね。

相撲って「人情相撲」とか言われたりして、
そこまで筋書きが決まっているものではないと思うのですが、
だけど、あらゆる力士が千秋楽間近に直面するのが、
勝ち越すか負け越すか。相撲の面白いからくりで、
とにかく8勝7敗だったら勝ち越して上にいき、
番付次第では他の力士が下りたりすると、
それこそ5段階ぐらい上にいくし、
逆に負け越したら、たった1敗で負け越しただけでも、
ひどい時には5段階ぐらい下がってしまうこともあって
勝つか負けるかで10ぐらい違う時だって生まれてくるのです。

千秋楽を8勝6敗と7勝7敗で迎えた力士の取組だと、
ここはやっぱり貸し借りではないけれども、
前に一度勝ち越している力士だったら、
「ここで負けておいてあげれば、次の時にお願いできるかも」
なんていうことが存在するのかも、と思ってしまうものです。

両方とも仲良く8勝7敗で場所を終えるのと、
片方9勝6敗とでは全然違うわけで、
ここになんらかの貸し借りの中でお金が存在しているとすると、
ただの「ひとつ、貸しね」ということでは収まらなくなるのです。
それがいちいち千秋楽ではなくとも、
今場所はどうしてもうちの部屋を上げなくてはいけない、みたいな
親方同士、部屋同士の駆け引きが生じたりして、
「国技」というものに対して、
何で背骨を立てているのか、伸ばしているのか。
ファンとして見ていても、どこにすがるべきなのかが、
なくなってきているという感じがします。

本来、礼節だったり美意識や、
「日本人として・・」だったりがあったもので、
良い悪いは別にして、
これだけ外国人力士がハングリー精神を持って
相撲の世界へと入って来ている昨今、
格闘技としての相撲が浮き彫りになってきていて、
酸いも甘いも飲み込んだ、、清濁併せ呑む礼節みたいな、、
例えば、戦いだけれどもちょっと手加減するとか、
スポンサー含めたお金の流れが多少あったとしても、
大きなところは崩れなかった、
というようなことがあったと思うのです。

メールという日常の中で八百長が浮き彫りになってくると、
黒い世界というか、賭け事に利用されたりだとか、
もっと貸し借りみたいなものが浮き彫りになりやすい
でもそれは、悪い虫みたいな、病気みたいなものだから、
治せばちゃんと背骨はあったという時代が
昔はあったような気がするけれども、
今は筋が立つにはどこになるのか、、見えづらいですね。

スーパースターが出てきたら、
相撲人気も変わるのかもしれないけれども、
満員御礼なんてとんでもない、というような
閑古鳥が泣くところまで行く気がしますね。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。