小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

クリエイティビティーのある社会

2011.06.23 00:10

数日前の「つまり、、、なんなんだ」を書いて少し触れたけど、
今日はその続きです。

そもそもap bankを何故やっているのかと聞かれると、
「持続性のある社会の方がいいから、そこにお金の使い方をシフトしていこう」
という考えにプラスして、クリエイティビティーのある社会をつくるため、
とも言いたいわけです。

というか、みんながクリエイティビティーを発揮できる社会でないと、
持続していかないのではないだろうか、と思うわけです。
問題をどう解決していくのか、というようなことでもあるんですけど。

これは前から言っていることですけれど、
ここ最近、あまりにも「富と権力」という、
解りやすい価値観に傾き過ぎ ていたため、
幸せなり、生きている価値がシンプルになり、
人の望みもシンプルになってきている。
お金を中心とした富と権力の板挟 みに向かって行った方が
経済にとっては都合が良いということがあって、
どんどんつまらない方向に向かってきている気がするわけです。

例えば、音楽の中でも、桑田佳祐さんは
めちゃくちゃ多様性の人なんですよね。
それは、戦後や昭和の時代が持っていた、闇や光や、
先 日対談した宮台真司さんと話したテーマにもなっている
「世界の手触り」というものが存分にあって、全然単純じゃない、
でも、一般的にもそ ういうものの方が残るし、
やっぱりみんな好きになりますよ。
それは、やはり「世界の手触り」があるからです。

現在の原発 が象徴的だけれど、経済が中心となって
エネルギーや豊かさの安定供給などと言っていると、
結局そこに依存してしまって、「世界」に反応し たり
呼応したりができなくなってしまうと思うのです。
それはある種の退化現象ではないかと思います。

なんだかんだ、安定したように見える「世界」を続けたい人は、
人々を依存させようとするから、
だからいま僕らは、エネルギーシフトの時代に多少勇気を持って
「脱・依存」の感覚に持っていった方が良いと思 います。

「落ちこぼれたり、ついていけない人は、どうするんだ」
と、言われるかもしれないけれど、
僕らは助け合うことが できると思うんです。
良い部分を持っているから、誰でも。
この世界で共に生きていくことを、共有することができると思うんです。

実は循環型社会を目指す以前に、
最初から社会は循環していると思います。
だから困っている人や苦しんでいる人を、
本当は簡単に見殺しにしたりはできないと思うんです。
繋がっているから。
それも我々人間が生きていく感覚のなかで、
選び取っていけるのではないかと思っています。


つづく。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。