小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

脱原発

2012.01.23 23:50

このままいくと、今年の4月には
全ての原発が停止するということになりそうですが、
「脱原発」というキーワードが
2つに分かれてきているような気がします。
脱原発というのは、できるだけ早く、
だけど現実のエネルギー消費の必然に則した形で
原発を減らしていくという考え方でしょう。
しかし、最近、このままでいくと「一旦停止する原発」から、
再稼働させるためのハードルを上げる、
もしくはきちんとすることによって、
「もう原発は運転させない」、という風にしようとする
気運が出始めていると思います。
正直に言って、ここで勝負を決めるというのは
想像していなかったのですが、
もしもこれから一年の間に、再稼働には待ったが掛かったまま、
電力料金等の値上げなども含め、
国民のコンセンサスが取れれば、
もう原発がなくてもやっていけるのではないか
ということが、おおよそ実証することになるのだと思います。

確かに一度再稼働してしまうと、
「やっぱりないと困るしね〜」とか言いそうですもんね、誰かが。
いずれにしても、既得権益を持っている人達が
ここで止められても困ると思っているのは間違いないし、
その人達の事情もあるのはあるのでしょう。
もちろん電気料金が上がるかもしれないことで、
どれだけの人がどの程度困ることになるのか
きちんとは解らない訳です。
でも、本当に地殻変動の怖さを含めた
先のことの予測できない感じと、
地震大国であるこの国の現実を考えた時に、
そしてもちろん放射能のまだ全然データが
取れていない怖さを含めて、
福島の現状の辛さから本当に学んで、
ちゃんとした行動をしなくちゃいけないんじゃないか、と思います。
本当に最近の地震なんかから考えると、
多少無理してでも、いまが止めどき、
という風になった方がいいのではないか。
繰り返しになりますが、
前からそこにフォーカスを当てていた訳ではないけれど、
もしかしたら、この1〜2年で一気に
脱原発を決めてしまった方がいいのかもしれません。
それが出来るならその方が良いに決まっている。
そのために、原発使用や再稼働に関する
国民投票というのもあるかもしれません。
とにかく民意をもう少し活発にしていった方がいいと思います。
そのために何をするのかが問題です。
関心のない人達にどう届くのか、やる気になってもらえるのか。

いずれにしても、最初の勝負どころに
近づいているのではないでしょうか。
小出さんなんかは、「そんなことはもちろんです」と、
あっさり言いそうですが。




集団行動

2012.01.17 23:52

レコーディングというのは大概の場合、集団プレイです。
特にバンドでやる場合は、集団行動なのです。

ミスチルが20年目に入り、
相も変わらずレコーディングをやっているけれど、
年明けに集団行動というのは、
毎回気持ちが、なんだか「ダルい」感じがするのです。

学校の新学期が始まることと
似ているのかもと思ったんだけれど、
それとも違うけどね。

いずれにしても、始まると楽しい。
集団行動って面倒くさいところもあるけれど、
それを重ねていく良さというのは、確かにあります。
それは、僕のような人間でもはっきりと解ることです。


吉田松陰

2012.01.14 23:49

今日は山口県の萩に来ています。
前からアルケッチァーノの奥田シェフの紹介で
来ることになっていたのですが、
その奥田君とも今年初めて会い、
今日は休日だったけれど、市場を見学をしたり、
道の駅として全国でもトップ10クラスの賑わいを
みせているシーマートを見学したり、
行政の人といろいろ話したりしました。

僕は初めて萩に来たんだけれど、
なんだかいろいろ奇遇に感じました。
というのは、この町は幕末のひとつの舞台なんですよね。
長州藩としても有名ですが、
なんと言っても吉田松陰という人がすごいんです。
改めて知ったけれど、わずか30年足らずの人生で、
しかも時の幕府政権によって処刑されるという最期だったのです。
その後、彼の影響を受けたと思われる
「長州ファイブ」と言われる5人が、
日本の近代化に大きく貢献することになります。
その中の一人が初代内閣総理大臣、伊藤博文なんです。

吉田松陰はなぜ処刑になってしまったのかと言うと、
幕府批判なんです。
幕府は日米通商条約を、時の天皇の了解を得ずに作り、
尊王攘夷、つまり簡単に言えば、
天皇を大切にする考え方に属していた
吉田松陰たちは、反旗を翻した訳です。
でも全体的には、みんなもう開国する以外にない
というムードだったんです。
普通に考えれば、幕府も吉田さんたちも
同じ方向を見ていると言えば見ているわけだから、
なんで反旗を翻すんだと思うし、
少し複雑な感じがするんだけれど、
今日こちらで聞いた話では、吉田松陰は、
簡単に開国することの危険性を感じていたようで、
つまり開国するにしても、日本人の、
この国の守らなければならないものを、
大切にしていくということを考えていたようです。
3.11以降のこの国の進め方にも、
同じようなことが言えるなと思いました。

萩における食のことは、可能性は大ですが、
いろいろコンセンサスが必要です。
詳しくはまた進んだら報告しますね。
でも、萩は他にない面白さを持った町です。



NEXT

小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。