小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

インド紀行

2010.11.27 14:04

ちょっと日が経ってしまいましたが、インド紀行に戻ります。
今回の旅の大半を車の中で過ごしまして、
僕らのチームは5台ぐらいの車で、つるんで走っていたのですが、
5台のうち、どこのチームにも当たり前ですが運転手がいて、
みんな現地の人だと思うけれど、僕が乗った車の運転手は
間違いなく僕の人生の中のワーストドライバーでした。
だけど他の車に乗り合わせた人から話を聞くと、
大体どのドライバーも、なんら変わりないということで、
ある意味レベルが非常に高い。

というのも、車を運転している時間の3分の1ぐらい
クラクションを鳴らし続けているのです。
とにかく目の前に、牛でもヤギでも人でも車でも、
進行になんらかの形で阻害しかねないものに対して
クラクションが浴びせられます。
対抗してくる車にはもちろんです。
追い越しにルールもなく、一昔の日本ならば
怒鳴り合いや掴み合いになりそうなくらいの、
傍若無人な運転作法が延々と続きます。
僕が一番ありえない光景というか行為と思ったのは、
向かってくるバイクや車、自転車など、
大きく道をあけようとしないものに対して
一瞬ハンドルを切ったこと。
「うりゃっ!」とばかりに、、解ります?
完全な威嚇行為と思い、僕は後部座席から
何度もそのドライバーの頭を叩きたいという欲求にかられました。

しかし、そんな人の悪い行為もずーっと続くと、
風景の一部と化してくるのです。
牛やヤギや犬も、そのけたたましい行為の連続の中で
わりとリラックスして、優雅に振舞っているようにも見えてきます。
初日〜二日目などは「うわ!もうぶつかる!」と、
今度こそ事故ったと思ってしまうほど、キモを冷やす連続でしたが
(まぁ、実際に事故ることもあるらしく、時に凄惨な現場を
目にすることもあるらしいです)、実はある瞬間に、
「この光景は何かに似ているな」と思ったわけです。

続きはまた明日。



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今月またやります

2010.11.19 23:03

カーストおよびインドのことについては、
本当にまた近いうちに触れます。

その前にいうのを忘れていましたが、
この前の11月3日振り替えではありましたが
「第1回 耕す×BBQ in 耕す木更津農場」(タイトル長い!?)
大成功につき、年内に2回目の「耕す〜」をやることになりました。

だんだん寒くなってきている時節柄ではありますが、
冬野菜に向けての労働は本当に気持ちがいいらしく、
と言いつつ、実際のところは解りませんが、多分気持ちいいですよ。
その後のBBQは、さぞ美味しいに違いない__というようなイベントで、
今のところ参加費無料でお届けさせてもらっています。

とにかく自然の中に触れてもらって
僕らがいま取り組んでいる大規模のようではあるけれど、
きめの細かい有機農業の成長と言いますか、発展と言いますか、
硬く言うと振興のような、つまり今後も一緒に耕して行ってほしいな、と
切に思うわけです。

いろんな可能性はあるにせよ、
今世紀は行き過ぎた工業化、人工化を減らし、
バランスのとれた自然との付き合い方を増やしていくということが
求められているのは間違いないと思います。
そんなわけでよろしくお願いします。


スタッフから前回の「耕す〜」写真をもらったので、一部載せておきます

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ムンバイの続き

2010.11.17 23:48

この前はカーストの話の前で終わりましたが、
ムンバイの町を行き来していて、思うことがありました。

正直言って、インドの田舎の方でもスラム街でも、
ここまで明らかな貧しさ且つ混沌を見たのは
少なくとも僕が今まで見てきた国々
(ベトナム、タイ、中国少数民族、
ブータン、ラダック、カンボジアなどなど)、
いろいろ行ったなかで最もディープなものでした。

ディープっていう意味、解ってもらえるかな?
つまり、臭いも密度も壊れ方も秩序のなさも、
まぁつまり全体的にぐちゃーという感じなんです。

だけれども、それはどこの国に行っても同じ思いだったのですが、
これだけのぐちゃーっと感でも、人々は活き活きとしているのです。
少なくともそう見えるのです。

平日でも学校に行っていない子供はわんさかいるし、
(なんでもスラムのなかでも数十%の人が出生届を出していないとのこと)
ただただ通りでぼーっとしている人も、
日中には軽く35度ぐらいになってしまう町なんですが、
その通りでただ座っているおじさんおばさん、もしくは寝ている人、
噛まれたらマジで危険だと思われる、目がどろんとしている犬たち。
そして、彼らにとって神聖とされる牛たち。
田舎の方では、ヤギ、羊、ついでに象まで車と共存していますが、
とにかくそんな全てが入り混ざっているのです。

おまけに事故だか病気だかで、自分の体が不自由なことや、
食べる物が欲しいという仕草を、
車のドアをこつこつ叩きながら、それをアピールしてきたりもします。

ここまで書くと、何が活き活きとしているのか、と思ってしまいそうですが、
でもおそらく、あまり悲観的になってなんかいない、
というのが解るんだよね。ちっとも欝的でない。
実際自殺率は、全然低いらしいし。
まぁ出生届を出していない率が高いので、大枠がそもそも不確かなのですが。

でね、ここからなんですけれども、
長くなったので、また今度。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。