小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

再稼働

2012.06.09 19:32

前々からスケジュールで決まっていたのですが
みんなのエネルギー環境会議、
通称「MEEC(ミーク)」と呼ばれる会合に参加するために
福井県小浜市に向かっています。
本当は今日も佐賀市でもあったのですが、
どうしてもレコーディングの都合がつかなくて行けませんでした。
(佐賀は、昨年やはり原発再稼働を巡って行って、
かなり充実した時間を過ごせました)
福井の小浜市は初めてです。

明日昼過ぎからの参加になるのですが、
それにしても、こんなタイムリーな時期に伺うことになろうとは、、、。
本当に地図では湾を挟んで、件(くだん)の大飯原発があります。
明日車で通るときに、遠くから眺めることができるらしいけれど。

それにしても残念な昨日の野田総理の会見でした。
正直無力感にとらわれました。本当に一気にだるくなりましたよ。

僕は、再稼働に関して、
これまで、そう簡単に容認するものでなかった国民の意識というものを
個人的に捨てたものではないな、というか、
希望が持てるなと思っていたのです。
311以降喉元過ぎたらまたちゃっかり原子力村の人達を中心に
ぬけぬけと原発稼働を復活させていくのではないか、
と思っていたところもあり、このエコレゾウェブでも緊急対談として、
いろんな方々と意見を交換させてもらってきたわけです。
だけど実際は国民の原発に対する問題意識は低下するどころか、
できることならば、原発に依存しない社会をつくりたい、
そして、一時再稼働することがあっても
そのハードルを高く設定しなければ、福島の事故が報われることはない、
そのような想いが、国民の過半数を占めていたと思っています。

この夏の電力需要のために一時的な再稼働ということは
ある程度予想もしていたし、仕方のない感覚も持ってはいました。
この夏の電力不足は、どれくらいの痛みを伴うことに繋がるのかが、
正確に言い切れるというのは無理だろうと思っていたからです。
だからこそ、この夏、原発を稼働するしないはともかくとして
これからの未来のために学び、
検証していくことが必要だと思っていたのです。

いずれにしても、昨日は、311以降のこの国の未来や社会のあり方を、
多くの人が、想像力を持って話し合ってきたことや検討してきたことを、
まるでそんなことはなかったかのような態度の会見でした。
野田さんは原発をこの国に必要なエネルギー源だと思うと、
ごく普通に肯定していたわけですが、
つまり、この夏の一時的な再稼働ではなく
継続的に使っていくということを、国民にお願いしていたんですよ。

我々の日常生活のことを思って、、、的な
この時期に、おそらくは弱い者の味方というような体で話していた
とは思うけど、我々の日常を持ってと言われても
それこそ日常に福島の原発事故という、
深い大きな歪みを生じさせているので
僕らにとって大切な日常とは何であるかを
自分たちで選んでいかなくてはならないと思い、
行動しはじめた時でもあるのに、
どうして全く時代とズレた感性の感じられない
前時代的リーダーの答弁だったのか。

とにかく、びっくりするほどのがっかり感です。

消費税のことで各党、喧々諤々やっている日々が続き
税の使い方に、それぞれ手法の違いというのはあるのでしょうが、
国民も、国のお金が足りなくなってきているのは解っているわけで、
増税も仕方がないと概ね思いつつも、
「景気が低迷している現在が、時期として適正なのか?」、などが
言い争われていると想像するのだけれど、
結局は、そんな遠くない消費税値上げという未来に
どんな道の辿り方をするのか、
進め方をするのかというだけの違いのような気もしますよね。

もちろんいろいろ違いもあるのでしょうが、
コマの進め方の違いで、各党が足並みを揃えるための
フリなのか段取りなのか解らないけれど、それをやっているうちに、
結局自民も民主も概ねのところでは結託して
「原発再稼働、赤信号、みんなで渡れば怖くない」
に繋がったのではないですかね。
もちろんほとんどの政治家政党が、
経済界の後ろ盾ありきということの表れでもあるのでしょう。

野田さんは前時代的な定型の役者のように見えてなりませんでした。
結局誰に踊らされているのかわからないけど、、、。

宮台真司風に言えば「おまかせして文句をたれる」という
そもそもこの国は依存体質から変わっていかなければ、
という話し合いや意見が、国民から随分出ていたわけです。
なのに、エネルギーの安定供給ということ、
当たり前のように、エネルギーが存在するということへの
盲目的な依存もそうだし、
抑止力という名のもとに沖縄基地への盲目的依存も、
このような野田総理をはじめとする政治の姿勢では
結局なにも変えていけないと思ってしまいます。

能面のような態度で、まさに定型の芝居で
やりすごそうということなんですかね。
一気に変われるとは誰も思っていないけれど、
変えていく事、変わろうとする気持ち、
よりよい未来を想って僕らにできることを
クリエイトしていくというようなものは、
なにひとつ感じられなかった総理会見でした。

夕方には大阪から緊急声明というかたちで
再稼働は9月いっぱいまでの稼働に限定するべきだ、という話が出ました。
橋下市長をはじめ、元経産省の古賀さん、
明日お会いする飯田さんなどを含め、
すごいクイックな反応が、いいなと思っています。
橋下さんたちのこの声明に、僕もほぼ共感しています。
少なくとも、第三者機関等を含め、
夏の電力事情がどうであったかを明らかにして
今後の事を話し合い、決めていく必要があると思います。

あれだけ警戒していた「喉元過ぎたら〜」という既得権益派からの反撃が
まさかこんなかたちでこのお方を通して出てくるとは、、、です。
とにかくどこまで声を連ねていけるか解りませんが
こうなったからには、声を上げていかないと駄目かもしれません。







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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。